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カンナビジオールはドキソルビシン誘発性心筋障害を防ぐ

f-gtc (2017年10月 1日 09:37)

カンナビジオールはドキソルビシン誘発性心筋障害を防ぐ

Cannabidiol Protects against Doxorubicin-Induced Cardiomyopathy by Modulating Mitochondrial Function and Biogenesis(カンナビジオールはミトコンドリアの機能と新生を制御することによってドキソルビシン誘発性心筋障害を防ぐ)Mol Med. 2015; 21(1): 38-45.

【要旨】
ドキソルビシンは広く使用されている抗腫瘍活性の高い抗がん剤であるが、その用量依存的な心臓毒性によって臨床使用に限界がある。
ドキソルビシンの心臓毒性には活性酸素や一酸化窒素による酸化ストレスの亢進や、心筋細胞や血管内皮細胞のミトコンドリア機能の障害や細胞死が関与している。
カンナビジオールは大麻に含まれる精神活性を持たない成分であり、有害作用は少なく、抗酸化作用や抗炎症作用を有し、さらに最近は抗腫瘍活性も報告されている。ドキソルビシン誘発性の心筋障害のマウスの実験モデルを用いて、カンナビジオールの効果を検討した。
ドキソルビシン誘発性心筋障害は心筋細胞のダメージのレベル(血清中のクレアチニンキナーゼと乳酸脱水素酵素の値)、活性酸素や一酸化窒素による細胞傷害のレベル(細胞内のグルタチオン量、グルタチオンペルオキシダーゼ1活性、脂質過酸化、3-ニトロチロシン形成、誘導性一酸化窒素合成酵素mRNAレベル)、心筋細胞死(アポトーシス、ポリADPリボースポリメラーゼ1依存性)、心筋機能(心拍出機能と左室内径短縮率)で評価した。
ドキソルビシンはミトコンドリア新生を抑制し、ミトコンドリア機能を低下させ(呼吸酵素複合体IIIの活性低下)、心筋細胞における脱共役たんぱく23uncoupling protein 2 and 3)とmedium-chain acyl-CoA dehydrogenase mRNAの発現を低下させた。
カンナビジオールの投与は、これらのドキソルビシン誘発性の心筋機能の障害を改善し、活性酸素や一酸化窒素による細胞ストレスと細胞死を軽減した。
カンナビジオールは障害されたミトコンドリア機能とミトコンドリア新生を改善した。
これらの実験結果は、ドキソルビシンによる心筋障害に対する新たな治療法をしてカンナビジオールの有用性を示唆しており、ミトコンドリアの機能や新生に対するカンナビジオールの作用は、他の多くの組織障害の実験モデルでのカンナビジオールの作用機序を説明できるかもしれない。

 

解説:

カンナビジオールは、活性酸素や一酸化窒素による傷害を軽減する作用、ミトコンドリアの機能や新生を亢進する作用、炎症や細胞死を軽減する作用などのメカニズムで、ドキソルビシン誘発性の心筋傷害や心不全を予防する効果が期待できるという報告です。

この論文では、マウスの実験でカンナビジオールは1日1回、10mg/kgを腹腔内投与しています。人間に換算すれば12mg/kg程度ですが、口腔内からの吸収率を20%くらいに考えると、ヒトでの口腔内(舌下投与)の1日量は510mg/kg程度が基準になると思います。
(動物の標準代謝量は体重の3/4乗(正確には0.751乗)に比例するという法則があり、一般にマウスの体重当たりのエネルギー消費量や薬物の代謝速度は人間の約7倍と言われています。)

他の論文で、カンナビジオールはシスプラチンによる腎臓障害を軽減することが報告されています。さらに、多くのがん細胞に対して抗腫瘍活性を発揮することが報告されています。

カンナビジオールの安全性は極めて高いので、抗がん剤治療の副作用軽減と抗腫瘍効果増強にカンナビジオールの併用は有効だと言えます。

 

カンナビジオールの詳細は以下のサイトをご参照下さい。

http://www.f-gtc.or.jp/cannabidiol/CBDoil.html

 

【原文】

Mol Med. 2015 Jan 6;21:38-45. doi: 10.2119/molmed.2014.00261.

Cannabidiol Protects against Doxorubicin-Induced Cardiomyopathy by Modulating Mitochondrial Function and Biogenesis.

Hao E1,2, Mukhopadhyay P1, Cao Z1, Erdélyi K1, Holovac E1, Liaudet L3, Lee WS1,4, Haskó G5, Mechoulam R6, Pacher P1.


Abstract

Doxorubicin (DOX) is a widely used, potent chemotherapeutic agent; however, its clinical application is limited because of its dose-dependent cardiotoxicity. DOX's cardiotoxicity involves increased oxidative/nitrative stress, impaired mitochondrial function in cardiomyocytes/endothelial cells and cell death. Cannabidiol (CBD) is a nonpsychotropic constituent of marijuana, which is well tolerated in humans, with antioxidant, antiinflammatory and recently discovered antitumor properties. We aimed to explore the effects of CBD in a well-established mouse model of DOX-induced cardiomyopathy. DOX-induced cardiomyopathy was characterized by increased myocardial injury (elevated serum creatine kinase and lactate dehydrogenase levels), myocardial oxidative and nitrative stress (decreased total glutathione content and glutathione peroxidase 1 activity, increased lipid peroxidation, 3-nitrotyrosine formation and expression of inducible nitric oxide synthase mRNA), myocardial cell death (apoptotic and poly[ADP]-ribose polymerase 1 [PARP]-dependent) and cardiac dysfunction (decline in ejection fraction and left ventricular fractional shortening). DOX also impaired myocardial mitochondrial biogenesis (decreased mitochondrial copy number, mRNA expression of peroxisome proliferator-activated receptor γ coactivator 1-alpha, peroxisome proliferator-activated receptor alpha, estrogen-related receptor alpha), reduced mitochondrial function (attenuated complex I and II activities) and decreased myocardial expression of uncoupling protein 2 and 3 and medium-chain acyl-CoA dehydrogenase mRNA. Treatment with CBD markedly improved DOX-induced cardiac dysfunction, oxidative/nitrative stress and cell death. CBD also enhanced the DOX-induced impaired cardiac mitochondrial function and biogenesis. These data suggest that CBD may represent a novel cardioprotective strategy against DOX-induced cardiotoxicity, and the above-described effects on mitochondrial function and biogenesis may contribute to its beneficial properties described in numerous other models of tissue injury.

トリプルネガティブ乳がんにメトホルミンと2-デオキシ-D-グルコースの併用が有効

f-gtc (2017年10月 1日 07:15)

トリプルネガティブ乳がんにメトホルミンと2-デオキシ-D-グルコースの併用が有効

Co-treatment of breast cancer cells with pharmacologic doses of 2-deoxy-D-glucose and metformin: Starving tumors.(薬理学的用量の2-デオキシ-D-グルコースとメトホルミンによる乳がん細胞の併用投与:がん細胞の飢餓)Oncol Rep. 2017 Apr;37(4):2418-2424.

【要旨】
がん細胞のエネルギー産生の特徴は好気性解糖である。従って、解糖系の阻害はがん細胞に選択的な治療法となる。
解糖系を阻害する2-デオキシ-D-グルコース(2DGは、多くのがん細胞においてアポトーシス(細胞死)を誘導することが示されている。さらに、糖尿病治療薬のメトホルミンの抗腫瘍活性が実証されている。
本研究では、2DGとメトホルミンの薬理学的用量の組み合わせが抗腫瘍効果を高めるかどうかを確認することを目的とした。
トリプルネガティブ乳がん(TNBC)細胞のMDA-MB-231およびHCC1806細胞を用いて、2DGとメトホルミンのそれぞれ単独の投与と併用投与の場合の細胞生存率を測定した。
アポトーシスの誘導は、ミトコンドリア膜電位の低下およびPARP(ポリADPリボースポリメラーゼ)の切断の測定によって定量した。
2DG
またはメトホルミンによる乳がん細胞の治療は、細胞生存率の有意な低下およびアポトーシスの増加をもたらした。
2DG
とメトホルミンを同時に投与すると、それぞれ単一で投与した場合と比較して、生存率が有意に低下した。この生存率の低下は、アポトーシスの誘導によるものであった。
さらに、アポトーシス誘導に関しては、単剤で投与した場合と比較して、併用投与はより強い誘導効果を示した。
ヒト乳がん細胞の解糖系亢進は治療のターゲットになりうる。解糖系阻害剤の2DGおよび糖尿病治療薬のメトホルミンの併用投与は副作用が少なく、乳がんに対する適切な治療法になるかもしれない。

解説:
トリプルネガティブ乳がんに対してメトホルミンと2-デオキシ-D-グルコースの併用が抗腫瘍効果を高めることは他にも多数の論文があり、最近増えています。がん細胞では解糖系が亢進しているので、メトホルミンだけでは抗腫瘍効果が十分に得られないことが分ってきたからです。
メトホルミンをがん治療に使うときには、がん細胞の解糖系を阻害する方法を併用することが重要と言えます。
トリプルネガティブ乳がん細胞では、特に解糖系が亢進していることが報告されています。したがって、トリプルネガティブ乳がん細胞ではメトホルミンと2-デオキシ-D-グルコースの併用は有用です。

 

トリプルネガティブ乳がん細胞の補完・代替医療については以下のサイトで解説しています。

http://www.f-gtc.or.jp/TNBC/Triple_Negative_Breast_Cancer.html

 

【原文】

Oncol Rep. 2017 Apr;37(4):2418-2424. doi: 10.3892/or.2017.5491. Epub 2017 Mar 6.

Co-treatment of breast cancer cells with pharmacologic doses of 2-deoxy-D-glucose and metformin: Starving tumors.

Wokoun U1, Hellriegel M1, Emons G1, Gründker C1.

 

Abstract

A characteristic of tumor cells is the increased aerobic glycolysis for energy production. Thus, inhibition of glycolysis represents a selective therapeutic option. It has been shown that glycolysis inhibitor 2-deoxy-D-glucose (2DG) induces apoptotic cell death in different tumor entities. In addition, the antitumor activity of the anti-diabetic drug metformin has been demonstrated. In the present study, we aimed to ascertain whether the combination of pharmacologic doses of 2DG with metformin increases the antitumor efficacy. Cell viability of MDA-MB-231 and HCC1806 triple-negative breast cancer (TNBC) cells treated without or with 2DG or with metformin alone or with the combination of both agents was measured using Alamar Blue assay. Induction of apoptosis was quantified by measurement of the loss of mitochondrial membrane potential and cleavage of PARP. Treatment of breast cancer cells with glycolysis inhibitor 2DG or with the anti-diabetic drug metformin resulted in a significant decrease in cell viability and an increase in apoptosis. Treatment with 2DG in combination with metformin resulted in significantly reduced viability compared with the single agent treatments. The observed reduction in viability was due to induction of apoptosis. In addition, in regards to apoptosis induction a stronger effect in the case of co-treatment compared with single agent treatments was observed. The glycolytic phenotype of human breast cancer cells can be targeted for therapeutic intervention. Co-treatment with doses of the glycolysis inhibitor 2DG and anti-diabetic drug metformin is tolerable in humans and may be a suitable therapy for human breast cancers.

アロマターゼ阻害剤によるホルモン療法中のシンバスタチン使用は乳がんの再発予防効果を高める

f-gtc (2017年7月 2日 05:04)

アロマターゼ阻害剤によるホルモン療法中のシンバスタチン使用は乳がんの再発予防効果を高める


閉経後ホルモン受容体陽性乳がんに対しタモキシフェン、タモキシフェンからレトロゾールへのスイッチ、レトロゾールの治療法を比較する第III相臨床試験(BIG198)が米国で行われています。

このBIG1-98試験において、コレステロール値,高脂血症治療薬内服の有無,試験治療中の高脂血症治療薬の内服開始の有無と再発との関係が検討されています。以下のような論文が報告されています。

Cholesterol, Cholesterol-Lowering Medication Use, and Breast Cancer Outcome in the BIG 1-98 Study.BIG 198研究におけるコレステロール,コレステロールを低下させる薬剤の使用,および,乳がんの転帰)J Clin Oncol. 2017 Apr 10;35(11):1179-1188.

【要旨】

目的:コレステロールを低下させる薬剤(Cholesterol-lowering medicationCLM)が乳がんの再発を防ぐ作用があることが報告されている。
CML
(コレステロールを低下させる薬)がエストロゲン作用のあるコレステロール代謝産物の27-ヒドロキシコレステロール(27-hydroxycholesterol)の血中レベルを低下させることによってエストロゲン受容体を介するシグナルを減弱する可能性がある。
また、血清中のコレステロール値や高コレステロール血症自体に対するホルモン療法の作用が、アロマターゼ阻害剤の抗腫瘍効果を妨げている可能性もある。

患者と方法:Breast International GroupBIG)が、ランダム化第III相二重盲検試験(BIG 198)を実施した。このBIG1-98試験では、19982003年にかけて診断された早期ステージのホルモン受容体陽性の浸潤性乳がんのある閉経後女性8,010名が参加した。

血清中の総コレステロール値とCLM使用の有無を、調査開始時および6ヶ月ごとに5.5年間測定しホルモン療法中のCLM開始と転帰との関係を調査した。評価項目は、無病生存期間、乳がん無再発期間、無遠隔転生存期間であった。

結果:コレステロール値はタモキシフェン療法中に減少した。

内分泌療法中にCLMを開始した患者789名の内訳は,レトロゾールのみ318名,タモキシフェン+レトロゾール189名,レトロゾール+タモキシフェン176名,レトロゾールのみ106名であった。

内分泌療法中のCLM開始は、無病生存期間(HR 0.7995 CI 0.660.95P0.01)、乳がん無再発期間(HR 0.7695 CI 0.600.97P0.02)、無遠隔転移期間(HR 0.7495 CI 0.560.97P0.03)の改善と関係があった

結論:ホルモン受容体陽性の早期のステージの乳がんのホルモン療法中のコレステロールを低下する治療薬の併用は、乳がんの再発を予防する効果が期待できる。この観察研究の結果を確認するために前向きのランダム化試験の実施が必要である。

この研究は、スタチンに限定したものでなく、その他の高脂血症治療薬も含まれています。コレステロールの代謝物である27hydroxycholestrolはエストロゲン受容体のリガンドとして作用し,腫瘍増殖に関与している考えられているので、コレステロールを低下させること自体に乳がん再発抑制効果があります。

HMGCoA還元酵素は乳がんに発現し,予後因子であることが同定されています。したがって、HMGCoA還元酵素阻害剤のスタチン(特に脂溶性のシンバスタチン)は、乳がん細胞の増殖を抑制する効果があります。

この研究は観察研究であるため,今後前向き試験で真に高脂血症治療薬が乳がんの予後を改善するかを検証する必要があります。しかし、ホルモン受容体陽性乳がんの術後補助内分泌療法中の患者において,高脂血症の治療が予後を改善する可能性が高いので、ホルモン療法中にコレステロールが高くなった場合は、高脂血症の治療を積極的に受けた方が良いというエビデンスはあると言えます。特に、シンバスタチンによる治療が推奨されます。

一般に,アロマターゼ阻害薬は高脂血症となることから,高脂血症治療薬によるメリットが高いと想定されます。

一方,タモキシフェンはコレストレール値を下げるため,高脂血症の効果はさほどでないと考えられます。

つまり、アロマターゼ阻害剤によるホルモン療法中で、コレステロール値が高い場合は、シンバスタチンを使うエビデンスは高いと言えます。

 

【原文】 

J Clin Oncol. 2017 Apr 10;35(11):1179-1188. doi: 10.1200/JCO.2016.70.3116. Epub 2017 Feb 13.

Cholesterol, Cholesterol-Lowering Medication Use, and Breast Cancer Outcome in the BIG 1-98 Study.

Borgquist S1, Giobbie-Hurder A1, Ahern TP1, Garber JE1, Colleoni M1, Láng I1, Debled M1, Ejlertsen B1, von Moos R1, Smith I1, Coates AS1, Goldhirsch A1, Rabaglio M1, Price KN1, Gelber RD1, Regan MM1, Thürlimann B1.

 

Abstract

Purpose Cholesterol-lowering medication (CLM) has been reported to have a role in preventing breast cancer recurrence. CLM may attenuate signaling through the estrogen receptor by reducing levels of the estrogenic cholesterol metabolite 27-hydroxycholesterol. The impact of endocrine treatment on cholesterol levels and hypercholesterolemia per se may counteract the intended effect of aromatase inhibitors.

Patients and Methods The Breast International Group (BIG) conducted a randomized, phase III, double-blind trial, BIG 1-98, which enrolled 8,010 postmenopausal women with early-stage, hormone receptor-positive invasive breast cancer from 1998 to 2003. Systemic levels of total cholesterol and use of CLM were measured at study entry and every 6 months up to 5.5 years. Cumulative incidence functions were used to describe the initiation of CLM in the presence of competing risks. Marginal structural Cox proportional hazards modeling investigated the relationships between initiation of CLM during endocrine therapy and outcome. Three time-to-event end points were considered: disease-free-survival, breast cancer-free interval, and distant recurrence-free interval. Results Cholesterol levels were reduced during tamoxifen therapy. Of 789 patients who initiated CLM during endocrine therapy, the majority came from the letrozole monotherapy arm (n = 318), followed by sequential tamoxifen-letrozole (n = 189), letrozole-tamoxifen (n = 176), and tamoxifen monotherapy (n = 106). Initiation of CLM during endocrine therapy was related to improved disease-free-survival (hazard ratio [HR], 0.79; 95% CI, 0.66 to 0.95; P = .01), breast cancer-free interval (HR, 0.76; 95% CI, 0.60 to 0.97; P = .02), and distant recurrence-free interval (HR, 0.74; 95% CI, 0.56 to 0.97; P = .03). Conclusion Cholesterol-lowering medication during adjuvant endocrine therapy may have a role in preventing breast cancer recurrence in hormone receptor-positive early-stage breast cancer. We recommend that these observational results be addressed in prospective randomized trials.

ビタミンD3+メトホルミン+ケトン食が乳がんに効く可能性がある

f-gtc (2015年10月18日 07:09)

ビタミンD3+メトホルミン+ケトン食が乳がんに効く可能性がある

Effects of Pre-surgical Vitamin D Supplementation and Ketogenic Diet in a Patient with Recurrent Breast Cancer.(再発乳がん患者における術前のビタミンD補充とケトン食の効果)Anticancer Res. 2015 Oct;35(10):5525-32.

【要旨】
研究の背景:19歳で出産した1児の母親である女性が、1985年(37歳)に右の乳がんと診断された。患者は腫瘍の摘出(乳房温存手術)とリンパ節廓清、放射線治療を受けた。
1999
年に左乳房に乳がんが見つかり、切除と放射線治療が行われ、さらにホルモン療法(タモキシフェン)を6年間受けた。
2014
年の3月に、1985年に手術と放射線治療を受けた乳腺の残存乳腺組織から浸潤性乳管がんが発見された。
症例報告:術前の生検による病理検査では、プロゲステロン受容体(PgR)の発現は少なく(<1%)、エストロゲン受容体(ER)は強陽性(90%)で、ヒト上皮増殖因子受容体(HER2)は陽性(>10%, score 2+)、増殖活性を示す核タンパク質Ki67は強陽性(30%)であった。
診断から手術まで3週間あり、その間の治療の計画が無かったので、患者は自分の判断で、ビタミンD3(1日10,000 IU)と厳格なケトン食を実施した。
結果:右乳房切除を行われた。切除組織の病理検査でHER2の発現は全く認めず(陰性、score 0)で、PgRの発現は亢進していた(20%)。ERKi67の陽性度は変化なかった。
結論:この症例は、高用量のビタミンD3とケトン食の併用は、乳がん細胞のHER2発現を抑制し、プロゲステロン受容体の発現を亢進するなど、乳がん細胞の生物学的性状に影響を及ぼす可能性を示唆している。

これは1例の症例報告ですので、高用量のビタミンD3とケトン食の併用が乳がんに有効かどうかのエビデンスは低いのですが、高用量のビタミンD3とケトン食はそれぞれ乳がんに対する効果が報告されているので、この2つの治療の併用を試してみる価値はあるかもしれません

また、ビタミンD3とメトホルミンの相乗効果は乳がんや前立腺がんや大腸がんなどで報告されています。メトホルミンはAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)を活性化してAkt/mTORシグナル伝達系を阻害し、がん細胞の増殖を抑制します。ビタミンD3はメトホルミンの抗腫瘍効果を高めます。次のような報告があります。

Synergistic antitumor activity of vitamin D3 combined with metformin in human breast carcinoma MDA-MB-231 cells involves m-TOR related signaling pathways. (ヒト乳がん細胞MDA-MB-231細胞におけるビタミンD3とメトホルミンの併用による相乗的な抗腫瘍効果はmTOR関連のシグナル伝達系が関与する)Pharmazie. 2015 Feb;70(2):117-22.

メトホルミンは2型糖尿病の治療に使用されていますが、最近の多くの研究によって、メトホルミンとビタミンDは多くのがん細胞に対して抗腫瘍効果を示すことが示されています。
この研究では、ヒト乳がん細胞株MDA-MB-231を用いて、ビタミンD3とメトホルミンの併用はアポトーシス誘導において相乗効果があることを報告しています。その抗腫瘍効果の発現にはmTOR関連のシグナル伝達系が関与することを報告しています。つまり、ビタミンD3とメトホルミンはmTOR(哺乳類ラパマイシン標的蛋白質)の活性を阻害することによってアポトーシスを誘導することを示しています。
前立腺がんや大腸がんでも同様の効果が報告されています。

Vitamin D3 potentiates the growth inhibitory effects of metformin in DU145 human prostate cancer cells mediated by AMPK/mTOR signalling pathway. (ヒト前立腺がん細胞DU145におけるAMPK/mTORシグナル伝達系を介するメトホルミンの増殖阻害作用をビタミンD3は増強する)Clin Exp Pharmacol Physiol. 2015 Jun;42(6):711-7.

前述のようにメトホルミンはAMPKを活性化してAkt/mTORシグナル伝達系を抑制し、抗腫瘍効果を発揮します。ビタミンD3はメトホルミンのAkt/mTORシグナル伝達系の抑制効果を増強して、アポトーシス誘導を亢進するという作用機序です。
Akt/mTOR
シグナル伝達系は、インスリンやインスリン様成長因子-1IGF-1)などの増殖因子や成長因子で活性化され、タンパク質や脂質の合成や、細胞分裂や細胞死や血管新生やエネルギー産生などに作用してがん細胞の増殖を促進します。
メトホルミンはAMP依存性プロテインキナーゼ(AMPK)を活性化し、活性化してAMPKmTORを抑制することによって、がん細胞の増殖を抑制します。
 

Combined use of vitamin D3 and metformin exhibits synergistic chemopreventive effects on colorectal neoplasia in rats and mice. (ビタミンD3とメトホルミンの併用はラットとマウスの結腸直腸がんの発生に対して相乗的な化学予防効果を示す)Cancer Prev Res (Phila). 2015 Feb;8(2):139-48.

この研究はラットとマウスを用いた大腸発がん実験での検討です。メトホルミンは化学発がんモデルで大腸がんの発生を抑制する作用があります。ビタミンD3はメトホルミンの発がん抑制作用を増強するという結果です。そのメカニズムとして、mTOR活性の抑制を認めています。さらに、ビタミンD3にはビタミンD受容体/β-カテニンのシグナル伝達系に作用してβ-カテニンの働きを抑制することによってc-MycやサイクリンD1の発現を抑制する作用も指摘しています。

ビタミンD3とメトホルミンの併用は、相乗効果によって発がん抑制や抗腫瘍効果を高めることができるという結論です

ケトン食もAMPKを活性化し、Akt/mTORシグナル伝達系を抑制します。したがって、ケトン食を実践しているとき、ビタミンD3とメトホルミンを併用すると、抗腫瘍効果を高めることができます。

進行した乳がんの代替医療として、高用量(1日400010000国際単位)のビタミンD3とメトホルミン(1日10001500mg程度)とケトン食の組合せは、相乗効果が期待できると考えられます。ビタミンD3もメトホルミンも安価ですので、試してみる価値は高いと言えます。
この組合せは乳がんだけでなく、大腸がんや膵臓がんや肺がんなど他のがんにも効果が期待できます。
 

メトロノミック・ケモテラピーで長期間生存した乳がん肝臓転移の症例報告。

f-gtc (2014年9月15日 09:20)

メトロノミック・ケモテラピーで長期間生存した乳がん肝臓転移の症例報告。

 

Long-term complete response in a patient with liver metastases from breast cancer treated with metronomic chemotherapy.(メトロノミック・ケモテラピーで治療した乳がんの肝臓転移の患者における長期間の完全奏功)Tumori. 100(3):79e-82e.2014 doi: 10.1700/1578.17238.

【要旨】

背景:幾つかの抗がん剤は低用量で使用すると血管系に作用する可能性が多くの研究で指摘されている。このレポートでは、メトロノミック・ケモテラピーによって長期間に渡ってがんの増殖を抑制できた症例を報告する。

症例提示:患者は62歳の女性で左側の乳がんに対して乳房切除が2007年7月に行われた。肝臓転移に対してファーストラインの抗がん剤治療としてドキソルビシンとパクリタキセルによる21日間サイクルの投与が行われた。6サイクルの治療後のCT検査では部分奏功を認めた。ドキソルビシンとパクリタキセルによる抗がん剤治療を中止し、シクロホスファミド(50mg/日経口)とメソトレキセート(2.5mg x 2/日、週2日)によるメトロノミック・ケモテラピーに変更した。この維持療法を開始してから6ヶ月後のCT検査で完全奏功を認めた。

患者の原発部位の病理検査で血管内皮増殖因子受容体2VEGFR2)の過剰発現を認めた。

メトロノミック・ケモテラピーはまだ継続中であるが、60ヶ月経過して現在も完全奏功の状態を維持している。

結論:この症例はメトロノミック・ケモテラピーが維持療法として有効であり、特に毒性(副作用)を認めずに長期間の治療が可能であることを示している。腫瘍におけるVEGFR2の発現量が多い場合は、メトロノミック・ケモテラピーによる血管新生阻害作用が奏功する可能性を示唆する。


(注)

完全奏功(complete response)というのは、がん組織が目に見えないレベルに縮小(消滅)することです。顕微鏡レベルで残っている可能性はありますが、がん組織が消滅した状態が続けば延命できます。

メトロノミック・ケモテラピーで著効を示した症例報告や、メトロノミック・ケモテラピーの有効性や通常の抗がん剤治療より有効であることを示す臨床試験の結果も得られています。

最大耐用量を投与する通常の抗がん剤治療は白血病やリンパ腫や精巣腫瘍のような一部のがんには有効ですが、肺がんや膵臓がんや乳がんなど多くの固形がんにはあまり効果がなく、副作用のデメリットの方が高いことが指摘されています。

最大耐用量を投与すると一時的にはがんが縮小しても、正常組織における修復反応と同様に、がん組織も傷を受けると炎症細胞の浸潤や血管新生が誘導されて、結果的にがん細胞の増殖が促進するからです。

標準治療の抗がん剤治療は一時的な縮小を目標にするため、長期の延命はむしろ犠牲にしている可能性があります。通常の抗がん剤治療は何もしないよりかは延命していますが、メトロノミック・ケモテラピーや副作用の少ない治療を組み合わせた治療よりも勝っているとはいえないという意見が増えています。

この論文で使用されているシクロホスファミド(50mg/日経口)とメソトレキセート(2.5mg x 2/日、週2日)を薬価ベースで計算すると1ヶ月分で約2000円です。この低用量のシクロホスファミド(商品名エンドキサン)とメソトレキセートと使ったメトロノミック・ケモテラピーをベースにして、さらに血管新生阻害、エネルギー産生阻害(グルコース取り込みや解糖系の阻害)、脂肪酸合成やメバロン酸経路の阻害、微小管重合阻害、抗炎症作用などの作用を持った薬などを併用すると、がんを縮小させることができます。

 

 (原文)

Tumori. 2014 May-Jun;100(3):e79-82. doi: 10.1700/1578.17238.

Long-term complete response in a patient with liver metastases from breast cancer treated with metronomic chemotherapy.

Cecconetto L, Casadei Gardini A, Tenti E, Maltoni R, Bravaccini S, Oboldi D, Zoli W, Serra P, Donati C, Sarti S, Amadori D, Rocca A.

Abstract

BACKGROUND:

Preclinical studies have shown that several chemotherapeutic agents at low doses may affect the vascular system. Here we report the case of a patient with long-term cancer control by metronomic chemotherapy.

CASE PRESENTATION:

A 62-year-old woman with breast cancer underwent a left mastectomy in July 2007. For a liver metastasis she was given first-line chemotherapy with doxorubicin plus paclitaxel every 21 days. A CT scan after the sixth cycle showed a partial response. It was decided to stop the treatment with doxorubicin and paclitaxel, and start metronomic therapy with cyclophosphamide 50 mg daily orally and methotrexate 2.5 mg twice daily, 2 days a week. After 6 months of this maintenance treatment, CT scan showed a complete response. We examined the expression of vascular endothelial growth factor receptor 2 (VEGFR2) in histological sections of the primary tumor of our patient, finding evidence of overexpression of the receptor. The metronomic treatment is still ongoing, and after 60 months the patient maintains a complete response.

CONCLUSION:

This clinical case highlights how suitable metronomic chemotherapy can be used as maintenance therapy, allowing long-term treatment with no significant toxicity. This case suggests that the level of VEGFR2 is predictive of best response to antiangiogenic therapy.

ビタミンDは大腸がん患者と乳がん患者の生存率を高める

f-gtc (2014年7月 6日 11:54)

ビタミンDは大腸がん患者と乳がん患者の生存率を高める

Serum 25-hydroxyvitamin D levels and survival in colorectal and breast cancer patients: systematic review and meta-analysis of prospective cohort studies.(結直腸がんと乳がん患者における血清25-ヒドロキシビタミンDの濃度と生存率の関係:前向きコホート研究の系統的レヴューとメタ解析)Eur J Cancer. 50(8):1510-21.2014

【要旨】
研究の目的:結腸直腸がんと乳がんの患者において、血清中の25-ヒドロキシビタミンD (25(OH)D)の濃度と生存率の間の関連があるかどうかを検討した。

方法:結腸直腸がんと乳がんの患者を対象にして、血清25(OH)D濃度と生存率の関連を検討した前向きコホート研究に関する文献の検索を行い、それらの結果を集計して統計的に解析し、ハザード比を求めた。

結果:結腸直腸がん患者を対象にした5つの臨床試験(患者総数2330人)と乳がん患者を対象にした5つの臨床試験(患者総数4413人)が、血清中の25(OH)Dのレベルを2〜5段階に分類して生存率を比較していた。
結腸直腸がん患者では、25(OH)Dレベルが最も低いグループに対して最も高いグループの全死因死亡率のハザード比は0.7195%信頼区間:0.55-0.91)、結腸直腸がんによる死亡率のハザード比は0.65 (95%信頼区間:0.49-0.86)であった。
乳がん患者では、25(OH)Dレベルが最も低いグループに対して最も高いグループの全死因死亡率のハザード比は0.6295%信頼区間:0.49-0.78)、乳がんによる死亡率のハザード比は0.58 (95%信頼区間:0.38-0.84)であった。

結論:結腸直腸がんの患者と乳がんの患者において、血清中の25(OH)Dの高値(>75nmol/L)は死亡率の低下と関連していた。血清

結腸直腸がん患者と乳がん患者において、診断時や治療の開始前に血清中の25(OH)Dレベルが低い(<50nmol/L)場合に、ビタミンDをサプリメントで補うことで生存率を改善できるかどうかを検討するランダム化比較対照試験を実施する必要がある。

(注)
もともと25-OHビタミンD3の血清濃度が高い人が、さらにサプリメントでビタミンD3を多く摂取してがん死亡率をさらに低下できるかどうかはまだデータがありません。しかし、25-OHビタミンD3の血清濃度が低い人(50 nmol/L以下)の場合はサプリメントでの補充は生存率を1.5倍から2倍くらいに高める可能性は高いようです25-OHビタミンD3の50nmol/L25ng/ml

原文:

Eur J Cancer. 2014 May;50(8):1510-21. doi: 10.1016/j.ejca.2014.02.006. Epub 2014 Feb 28.

Serum 25-hydroxyvitamin D levels and survival in colorectal and breast cancer patients: systematic review and meta-analysis of prospective cohort studies.

Abstract

AIM:

To estimate the association between serum 25-hydroxyvitamin D (25(OH)D) levels and survival among colorectal and breast cancer patients.

METHODS:

We performed a comprehensive literature search of prospective cohort studies assessing the association of serum 25(OH)D levels with survival in colorectal and breast cancer patients. Study characteristics and results were extracted and dose-response relationships were graphically displayed in a standardised manner. Meta-analyses using random effects models were performed to estimate pooled hazard ratios.

RESULTS:

The systematic search yielded five studies including 2330 colorectal cancer patients and five studies including 4413 breast cancer patients all of which compared mortality across two to five categories of 25(OH)D levels. Among colorectal cancer patients, pooled hazard ratios (95% confidence intervals) comparing highest with lowest categories were 0.71 (0.55-0.91) and 0.65 (0.49-0.86) for overall and disease-specific mortality, respectively. For breast cancer patients, the corresponding pooled estimates were 0.62 (0.49-0.78) and 0.58 (0.38-0.84), respectively. No significant evidence of heterogeneity between studies was observed.

CONCLUSION:

Higher 25(OH)D levels (>75nmol/L) were associated with significantly reduced mortality in patients with colorectal and breast cancer. Randomised controlled trials are needed to evaluate whether vitamin D supplementation can improve survival in colorectal and breast cancer patients with low vitamin D status (25(OH)D<50nmol/L) at diagnosis and before treatment.

オメガ3不飽和脂肪酸はパクリタキセルの末梢神経障害を軽減する

f-gtc (2012年12月13日 15:37)

オメガ3不飽和脂肪酸はパクリタキセルの末梢神経障害を軽減する

Omega-3 fatty acids are protective against paclitaxel-induced peripheral neuropathy: a randomized double-blind placebo controlled trial.(オメガ-3脂肪酸はパクリタキセルによる末梢神経障害を軽減する:ランダム化二重盲検プラセボ対照試験)BMC Cancer 2012 Aug 15:12:355

【要旨】

背景:知覚性末梢神経の軸索障害(axonal sensory peripheral neuropathy)はパクリタキセルの主な用量制限性の副作用である。オメガ3系不飽和脂肪酸は神経細胞に対する保護作用と、末梢神経障害の発生に関与している炎症性サイトカインの産生を阻害する作用によって、様々な神経系疾患に対して治療効果を有している。

方法:パクリタキセルによって引き起こされる末梢神経障害に対して、オメガ3系不飽和脂肪酸に末梢神経障害の発生頻度や重症度を減らす効果があるかどうかを検討する目的で、ランダム化二重盲検プラセボ対照試験を行った。

本研究の目的に合致した乳がん患者を無作為に2群に分け、パクリタキセルによる治療中および治療終了後1ヶ月間の間、1群にはオメガ3系不飽和脂肪酸(1回640mg,1日3回)を摂取させ、もう1群(コントロール群)にはプラセボを摂取させた。

抗がん剤開始前と終了後1ヶ月経過後に、患者の臨床症状と電気生理学的検査を行い、末梢神経障害の程度を簡易総合神経障害スコア(reduced Total Neuropathy Score)に基づいて評価した。

結果:オメガ3不飽和脂肪酸を摂取した30人のうち21例(70%)は神経障害の発生を認めなかった。一方、コントロール群では神経障害の発生を認めなかったのは27人中11例(40.7%)であった。この発生頻度の差は統計的に有意であった(OR = 0.3, .95% CI = (0.10-0.88), p = 0.029)

末梢神経障害の程度には統計的有意差は認めなかったが、コントロール群(プラセボ群)の方が末梢神経障害の重症度は高い傾向にあった。

結論:オメガ3系不飽和脂肪酸は、パクリタキセルによる末梢神経障害の発生を防ぐための有効な神経保護剤である可能性が示唆された。乳がんの患者は抗がん剤の助けによって無再発生存期間がより長くなっている。パクリタキセルによる神経障害を軽減する方法は、患者の生活の質(QOL)を顕著に改善する効果が期待できる。

 

(訳者注)神経細胞や筋肉細胞は細胞分裂を行わないため、抗がん剤や放射線治療を受けても、ダメージを受けにくいと思われています。しかし、パクリタキセル(商品名タキソール)やドセタキセル(商品名タキソテール)などのタキサン製剤、ビンクリスチン(商品名オンコビン)やビノレルビン(商品名ナベルビン)などのビンカアルカロイド製剤シスプラチン(商品名ランダなど)やカルボプラチン(商品名パラプラチン)やオキサリプラチン(商品名エルプラット)などの白金錯体製剤、プロテアソーム阻害剤のボルテゾミブ(商品名ベルケイド)では、高頻度に末梢神経障害による副作用(しびれや感覚障害や痛み)が発現します。この末梢神経障害の原因として、神経軸索の微小管の傷害や神経細胞の直接傷害などが関連しています。

微小管は細胞骨格を形成する蛋白質であり、チューブリンというタンパク質が集まった長い直径約25nmの管状構造をもっています。微小管は細胞内の蛋白質の輸送や細胞内小器官輸送のレールとして機能しており、細胞分裂の時の染色体の移動に必要です。つまり、細胞分裂する際に、複製されたDNAは染色体と呼ばれる構造に凝集し、細胞の両極へと引き寄せられ、等分されますが、このとく染色体を分裂した2つの細胞に分離する働きをするのが微小管です。

近年、抗がん剤の標的の一つとして微小管が注目されています。がん細胞が分裂する時に、チューブリンから微小管が形成される過程を阻害すれば、細胞分裂を防ぐことができるからです。

しかし、微小管の形成を阻害することは、細胞分裂の阻害だけでなく、神経障害の原因にもなります。神経の軸索(神経線維)は、神経細胞の細胞体から発する1本の長い突起で、他の神経細胞や筋肉に信号を伝達するケーブルのようなものです。軸索の中にある微小管は軸索の発育や物質の輸送に関連しています。神経軸索の中では、微小管は細胞体から神経軸索の先端に向かって伸びていて、微小管の上で、モータータンパク質の助けを借りて、神経軸索内でのタンパク質の輸送が行われます。

したがって、微小管をターゲットにする抗がん剤は、その副作用として神経細胞の軸索の働きを傷害し、神経の信号が正しく伝達出来なくなって、しびれや感覚障害や痛みなどの末梢神経障害の副作用を引き起こします。タキサン系抗がん剤ビンカアルカロイド系抗がん剤は微小管を標的として作用することによりがん細胞の抑えるため、神経細胞の微小管も傷害され、神経障害を引き起こします。多くの場合、指先のしびれ感にはじまり、しだいに上の方に広がっていきます。進行すると筋力低下や歩行困難なども生じます。自律神経が障害されると便秘や排尿障害が起こることもあります。またプラチナ製剤は、神経細胞に直接ダメージを与える結果、二次的に軸索障害をきたしていると考えられています。下肢やつま先のしびれに代表される感覚性の末梢神経障害が主に起こります。末梢神経障害を起こると、日常生活において、服のボタンがとめにくくなる、つまづきやすくなる、手や足の先がしびれる、温度感覚が無くなる、味覚が変わるなど様々な症状が発生してきます。強い痛みを感じる場合もあります。聴力障害や耳鳴りが起こることもあります。抗がん剤による神経障害はいったん発現すると有効な対策が少なく、不可逆的になる場合もあります。したがって、症状が強い場合には、抗がん剤治療の中断や薬剤の変更を余儀なくされます。がん患者が治療を早期に中止する最も多い理由の一つです。



パクリタキセルは乳がん、胃がん、卵巣がん、子宮体がん、非小細胞性肺がんに使われる抗がん剤で、末梢神経障害によって投与が困難になることが多い抗がん剤です。

パクリタキセルによる末梢神経障害を軽減するサプリメントとしてアセチル-L-カルニチンやαリポ酸、メラトニンなどがあります。これらにDHAEPAを加えると効果を高めることができるかもしれません。

DHA/EPAが神経障害を緩和するメカニズムとして、炎症性サイトカインの産生を抑える抗炎症作用や、神経細胞の膜に取込まれることによって神経細胞の機能や修復を促進する作用などが指摘されています。

【原文】

BMC Cancer. 2012 Aug 15;12:355.

Omega-3 fatty acids are protective against paclitaxel-induced peripheral neuropathy: a randomized double-blind placebo controlled trial.

Ghoreishi Z, Esfahani A, Djazayeri A, Djalali M, Golestan B, Ayromlou H, Hashemzade S, Asghari Jafarabadi M, Montazeri V, Keshavarz SA, Darabi M.

Source

Department of Nutrition and Biochemistry, School of Health, Tehran University of Medical Sciences, Tehran, Iran.

Abstract

BACKGROUND:

Axonal sensory peripheral neuropathy is the major dose-limiting side effect of paclitaxel.Omega-3 fatty acids have beneficial effects on neurological disorders from their effects on neurons cells and inhibition of the formation of proinflammatory cytokines involved in peripheral neuropathy.

METHODS:

This study was a randomized double blind placebo controlled trial to investigate the efficacy of omega-3 fatty acids in reducing incidence and severity of paclitaxel-induced peripheral neuropathy (PIPN). Eligible patients with breast cancer randomly assigned to take omega-3 fatty acid pearls, 640 mg t.i.d during chemotherapy with paclitaxel and one month after the end of the treatment or placebo. Clinical and electrophysiological studies were performed before the onset of chemotherapy and one month after cessation of therapy to evaluate PIPN based on "reduced Total Neuropathy Score".

RESULTS:

Twenty one patients (70%) of the group taking omega-3 fatty acid supplement (n = 30) did not develop PN while it was 40.7%( 11 patients) in the placebo group(n = 27). A significant difference was seen in PN incidence (OR = 0.3, .95% CI = (0.10-0.88), p = 0.029). There was a non-significant trend for differences of PIPN severity between the two study groups but the frequencies of PN in all scoring categories were higher in the placebo group (0.95% CI = (-2.06 -0.02), p = 0.054).

CONCLUSIONS:

Omega-3 fatty acids may be an efficient neuroprotective agent for prophylaxis against PIPN. Patients with breast cancer have a longer disease free survival rate with the aid of therapeutical agents. Finding a way to solve the disabling effects of PIPN would significantly improve the patients' quality of life.

メトホルミンは乳がんに対して抗がん作用を示す。

f-gtc (2012年10月31日 17:00)

メトホルミンは乳がんに対して抗がん作用を示す。

 

早期乳がんにおけるメトホルミン:好機術前補助療法の前向き試験(Metformin in early breast cancer: a prospective window of opportunity neoadjuvant study.

Breast Cancer Res Treat. 135(3):821-30. 2012

【要旨】

メトホルミンはインスリン介在性(insulin-mediated)の直接作用あるいはインスリンとは関連しない(insulin-independent)間接作用によって抗がん作用を示す。我々は、手術可能な乳がん患者を対象に、手術前の限られた期間(window of opportunity)にメトホルミンを投与する術前化学療法の効果について検討した。

新たに診断された治療をまだ受けていない、糖尿病でない乳がん患者に、確定診断のための針生検の後から手術の直前までメトホルミンを1日1500mg500mg x 3回/日)投与した。

臨床所見(体重、症状、生活の質)と血液検査(空腹時血清インスリン濃度、血糖値、インスリン抵抗性指数(homeostasis model assessment HOMA)C-反応性蛋白(CRP)、レプチン)はメトホルミン服用の前後で比較し、針生検で得たがん組織と摘出したがん組織のTUNEL染色(terminal deoxynucleotidyl transferase-mediated dUTP nick end labeling :アポトーシスを検出する染色法)とKi67スコア(増殖のマーカー)についても同様に比較した。

39名の乳がん患者がこの研究に参加した。平均年齢は51歳で、メトホルミンを服用した期間は13日〜40日で中央値は18日であった。手術前日の夜間まで服用した。

51%T1(大きさが2cm以下)で、38%でリンパ節転移を認め、85%はエストロゲン受容体あるいはプロゲステロン受容体が陽性で、13%HER2の過剰発現を認めた。

中等度の自制できる吐き気(50%)、下痢(50%)、食欲不振(41%)、腹部膨満(32%)の副作用をそれぞれ括弧内の率で認めたが、生活の質(QOL)を評価するEORTC30-QLQ function scalesでは有意な低下は認めなかった。

ボディマス指数(BMI)(-0.5 kg/m2, p < 0.0001)と体重(-1.2 kg, p < 0.0001)HOMA (-0.21, p = 0.047) は統計的有意に減少した。血中インスリン値(-4.7 pmol/L, p = 0.07)とレプチン (-1.3 ng/mL, p = 0.15) CRP (-0.2 mg/L, p = 0.35)は減少傾向を認めたが統計的な有意差は認めなかった。 がん組織におけるKi67染色スコア(細胞増殖の割合)は 36.5 から 33.5 %p = 0.016 に有意に減少し、 TUNEL 染色(アポトーシスを起こしている細胞)は0.56 から1.05 p = 0.004)に有意に増加した。手術前の短期間のメトホルミン投与は忍容性が高く、抗がん作用と一致する臨床所見とがん組織の変化を示した。生存期間のような臨床的エンドポイントを用いて適切な臨床試験を実施し、メトホルミンの抗がん作用に関する臨床的妥当性の評価が必要である。

解説:

この論文はカナダのトロント大学のマウント・サイナイ病院とプリンセス・マーガレット病院(Mount Sinai Hospital and Princess Margaret Hospital)の腫瘍血液内科部門(Division of Medical Oncology and Hematology)からの報告です。

タイトルにある「a prospective window of opportunity neoadjuvant study」の「neoadjuvant」というのは術前化学療法のことで、「prospective study」は前向き試験のことです。windowというのは、この場合は「範囲、実行可能時間枠、限られた短い時間」を言う意味で、opportunityは「機会、好機」ということで「window of opportunity」は「限られた時間での治療の機会」という意味です。つまり、「乳がんの診断が確定してから実際に手術が行われるまでの限られた機会を利用して、メトホルミンの術前化学療法としての効果を評価する前向き試験」を行ったということです。

この研究では、メトホルミンを1日1500mg(1回500mgを3回)投与しています。投与期間は中央値が18日(1340日)と比較的短期間の投与ですが、臨床症状や血液検査で、抗がん作用を示唆する結果が得られています。

メトホルミンは2型糖尿病の治療薬ですが、インスリンの分泌を促進するのではなく、細胞のインスリン感受性を高める(インスリン抵抗性を改善する)作用なので、糖尿病でなくても血糖を下げ過ぎることは無いので、1日1500mgでも問題ないようです。

メトホルミンは様々ながんの発生率を低下させることが報告され、さらに抗がん剤治療や放射線治療の効き目を高めることが報告されています。さらに、メトホルミン自体に抗がん作用が報告されています。

大規模な臨床試験などで証明されるまではまだエビデンスは高いとは言えませんが、多くの研究はメトホルミンの抗がん作用を示しています。乳がんなどの治療にもっと使ってよいように思います。

 

【原文】 

Breast Cancer Res Treat. 2012 Oct;135(3):821-30. Epub 2012 Aug 30.

Metformin in early breast cancer: a prospective window of opportunity neoadjuvant study.

Niraula S, Dowling RJ, Ennis M, Chang MC, Done SJ, Hood N, Escallon J, Leong WL, McCready DR, Reedijk M, Stambolic V, Goodwin PJ.

Source

Division of Medical Oncology and Hematology, Department of Medicine, Mount Sinai Hospital and Princess Margaret Hospital, University of Toronto, 1284-600 University Avenue, Toronto, ON, M5G 1X5, Canada.

Abstract

Metformin may exert anti-cancer effects through indirect (insulin-mediated) or direct (insulin-independent) mechanisms. We report results of a neoadjuvant "window of opportunity" study of metformin in women with operable breast cancer. Newly diagnosed, untreated, non-diabetic breast cancer patients received metformin 500 mg tid after diagnostic core biopsy until definitive surgery. Clinical (weight, symptoms, and quality of life) and blood [fasting serum insulin, glucose, homeostasis model assessment (HOMA), C-reactive protein (CRP), and leptin] attributes were compared pre- and post-metformin as were terminal deoxynucleotidyl transferase-mediated dUTP nick end labeling (TUNEL) and Ki67 scores (our primary endpoint) in tumor tissue. Thirty-nine patients completed the study. Mean age was 51 years, and metformin was administered for a median of 18 days (range 13-40) up to the evening prior to surgery. 51 % had T1 cancers, 38 % had positive nodes, 85 % had ER and/or PgR positive tumors, and 13 % had HER2 overexpressing or amplified tumors. Mild, self-limiting nausea, diarrhea, anorexia, and abdominal bloating were present in 50, 50, 41, and 32 % of patients, respectively, but no significant decreases were seen on the EORTC30-QLQ function scales. Body mass index (BMI) (-0.5 kg/m(2), p < 0.0001), weight (-1.2 kg, p < 0.0001), and HOMA (-0.21, p = 0.047) decreased significantly while non-significant decreases were seen in insulin (-4.7 pmol/L, p = 0.07), leptin (-1.3 ng/mL, p = 0.15) and CRP (-0.2 mg/L, p = 0.35). Ki67 staining in invasive tumor tissue decreased (from 36.5 to 33.5 %, p = 0.016) and TUNEL staining increased (from 0.56 to 1.05, p = 0.004). Short-term preoperative metformin was well tolerated and resulted in clinical and cellular changes consistent with beneficial anti-cancer effects; evaluation of the clinical relevance of these findings in adequately powered clinical trials using clinical endpoints such as survival is needed.

メトホルミンはがん幹細胞を死滅させる

f-gtc (2012年10月30日 18:21)

メトホルミンはがん幹細胞を死滅させる

メトホルミンはがん細胞を死滅させ、放射線感受性を高め、がん幹細胞を優先的に死滅させる(Metformin kills and radiosensitizes cancer cells and preferentially kills cancer stem cells.Sci Rep. 2012;2:362. Epub 2012 Apr 12.

【要旨】

2型糖尿病の治療に広く使用されているメトホルミンの単独での抗がん作用あるいは放射線治療との併用による抗がん作用をヒト乳がん細胞MCF-7とマウス線維肉腫細胞FSallの2種類のがん細胞を用いて検討した。

人間の臨床的に達しうる血中濃度において、メトホルミンはがん細胞のクローン形成性細胞死(clonogenic death:がん細胞が増殖してコロニーを形成できなくなること)を引き起こした。重要な点は、メトホルミンは非幹性がん細胞(non-cancer stem cell)に比べて、がん幹細胞(cancer stem cell)に対して殺細胞作用を強く示した。

培養細胞の実験系において、メトホルミンはがん細胞の放射線感受性を高めた。さらに、C3Hマウスの下肢に移植したマウス線維肉腫細胞FSallの放射線照射による増殖抑制を著明に増強した。

メトホルミンと放射線照射は、培養細胞(in vitro)と動物移植腫瘍(in vivo)の実験系で、AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)を活性化し、mTOR(哺乳類ラパマイシン標的タンパク質: mammalian target of rapamycin)の活性を阻害し、S6K14EBP1のようなmTORの下流に位置するがん細胞の増殖や生存に重要なシグナル伝達因子の活性を抑制した。

結論:メトホルミンはAMPKを活性化し、mTORを抑制することによって、がん細胞を死滅させ、がん細胞の放射線感受性を高め、さらに放射線抵抗性のがん幹細胞を根絶する。 

 

【原文】

Sci Rep. 2012;2:362. Epub 2012 Apr 12.

Metformin kills and radiosensitizes cancer cells and preferentially kills cancer stem cells.

Song CW, Lee H, Dings RP, Williams B, Powers J, Santos TD, Choi BH, Park HJ.

Abstract

The anti-cancer effects of metformin, the most widely used drug for type 2 diabetes, alone or in combination with ionizing radiation were studied with MCF-7 human breast cancer cells and FSaII mouse fibrosarcoma cells. Clinically achievable concentrations of metformin caused significant clonogenic death in cancer cells. Importantly, metformin was preferentially cytotoxic to cancer stem cells relative to non-cancer stem cells. Metformin increased the radiosensitivity of cancer cells in vitro, and significantly enhanced the radiation-induced growth delay of FSaII tumors (s.c.) in the legs of C3H mice. Both metformin and ionizing radiation activated AMPK leading to inactivation of mTOR and suppression of its downstream effectors such as S6K1 and 4EBP1, a crucial signaling pathway for proliferation and survival of cancer cells, in vitro as well as in the in vivo tumors. CONCLUSION: Metformin kills and radiosensitizes cancer cells and eradicates radioresistant cancer stem cells by activating AMPK and suppressing mTOR.

クルミは乳がんの発生と増殖を抑制する

f-gtc (2012年9月14日 08:11)

クルミは乳がんの発生と増殖を抑制する

Suppression of implanted MDA-MB 231 human breast cancer growth in nude mice by dietary walnut.(ヌードマウスに移植したヒト乳がん細胞MDA-MB231に対するクルミによる増殖抑制効果)Nutr Cancer 60(5): 666-74, 2008

米国ウェストバージニア州のマーシャル医科大学(Marshall University School of Medicine)の生化学・微生物学教室(Department of Biochemistry and Microbiology)からの報告です。

【要旨】
クルミにはオメガ3不飽和脂肪酸やフィトステロール、ポリフェノール、カロテノイド、メラトニンなどがん細胞の増殖を抑制する成分が多く含まれている。

ヌードマウスにヒト乳がん細胞MDA-MB231細胞の移植した動物実験モデルを用い、クルミを食餌から摂取させることによって、がん細胞の増殖に影響を及ぼすかどうかを検討する目的で実験を行った。

10%コーンオイルを添加した餌(AIN-76)で飼育しているヌードマウスにがん細胞を移植した。腫瘍が直径3〜5mmになった段階で2群に分け、1群の食餌はそのままで(コントロール群)、もう1群は粉末にしたクルミを添加し、人間で1日2オンス(56g)に相当する量を与えた(クルミ投与群)。

腫瘍の増殖速度は、コントロール群では14.6 ± 1.3 mm3/日であったのに対して、クルミ投与群では2.9 ±1.1 mm3/dayで、クルミ投与によって腫瘍の増大は顕著に抑制された。

肝臓の組織中のエイコサペンタエン酸(EPA)とドコサヘキサエン酸(DHA)の含有量は、コントロール群に比べてクルミ投与群で著明に増加していた。

クルミ投与によってがん細胞の増殖は抑制されたが、アポトーシスの割合には変化は認めなかった。人間での臨床試験でクルミの抗腫瘍効果を検討する価値があると思われる。

 

【訳者注】
クルミの乳がん予防効果が示されていますが、そのがん予防作用のメカニズムの一つとして、クルミにはω3不飽和脂肪酸のα-リノレン酸が豊富であることが言及されています。α-リノレン酸は必須脂肪酸で、体内でエイコサペンタエン酸(EPAドコサヘキサエン酸(DHAに変換されます。EPADHAのがん予防効果も多くの研究で支持されています。この実験では、クルミを摂取した群では肝臓組織のDHAEPAが増加していることが示されているので、クルミの抗がん作用がα-リノレン酸の関与が高い可能性を示唆しています。

一般に、食事から摂取する不飽和脂肪酸のω3とω6の比が大きくなるほど、がん予防効果や抗がん作用が強くなることが知られています。多くの動物実験で、ω3不飽和脂肪酸が乳がんの発生率を低下させることが示されています。

ただ、クルミの抗がん作用には、ω3不飽和脂肪酸のα-リノレン酸だけでなく、フィトステロールやポリフェノールやカロテノイドなどの相乗効果と考える方が妥当かもしれません。動物実験でクルミの抗腫瘍効果を検討した報告は多数あります。遺伝子改変の発がんマウスを使った実験でもクルミの発がん抑制効果が示されています。以下の論文は上に紹介した論文と同じ研究グループからの報告です。

 

Dietary walnut suppressed mammary gland tumorigenesis in the C(3)1 TAg mouse.(食餌からのクルミ摂取はC(3)1Tagマウスにおける乳がん発生を抑制する)Nutr Cancer. 2011;63(6):960-70.

【要旨】

クルミはω3不飽和脂肪酸や抗酸化物質やフィトステロールなどがん細胞の増殖を抑制する成分を多く含んでいる。以前の研究で移植した乳がん細胞の増殖をクルミの摂取が遅くすることが示されている。この研究では、クルミの摂取が乳がんの発生率を減らせるかどうかを検討する目的で行った。

オスのホモ接合C31 TagトランスジェニックマウスとメスのSV129マウスを交配させた。半接合のメスの子供(hemizygous)は乳離れしたあと、ランダムに2群に分け、一つの群は通常の餌(AIN-76)で飼育し、もう一群はクルミを含む餌で飼育し、乳がんの発生を検討した。
クルミを与えなかったコントロール群に比較して、クルミを与えたグループでは乳がんの発生頻度(腫瘍が一つ以上発生したマウスの割合)や腫瘍の数(マウス1匹当たりの腫瘍の数)やサイズが著明に減少した。
遺伝子発現の解析では、クルミの摂取によって、乳腺組織の増殖や分化に関連する複数の遺伝子の発現が変化した。
他の食品成分による介入試験との比較から、クルミのがん予防効果の全てをω3不飽和脂肪酸の含有だけでは説明できなかった。
この研究結果は、クルミを日頃から食べることは、乳がんを減らす健康的な食事に貢献する可能性が示唆された。

 

【訳者注】

この論文は前述の論文と同じ研究者からの報告です。前の論文では、ヌードマウスにヒト乳がん細胞を移植した実験系でクルミの抗腫瘍効果を示していますが、この実験では、乳がんを発生するように遺伝子を改変したマウス(トランスジェニックマウス)の実験モデルでクルミの乳がんの発生を予防する効果を検討しています。このトランスジェニックマウスは成長とともに乳がんを自然発症するのですが、乳離れしたあとの餌にクルミを混ぜて与えると、乳がんの発生が著明に抑制されることを示しています。つまり、小さいときから日頃からクルミを食べることは乳がんの予防に有効かもしれないということを意味しています。
動物実験で乳がんを予防しても、それが人間でも有効かどうかは人間での臨床試験の結果がでるまでは確定できませんが、循環器疾患などではクルミの予防効果が人間で証明されていますので、日頃からクルミを食べることは推奨されると思います。

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〒104-0061 東京都中央区銀座5-14-9石和田ビル5階

東銀座駅(営団日比谷線/都営浅草線)4または6番出口より徒歩2分

銀座駅(銀座線/日比谷線/丸の内線)5番出口より徒歩5分