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メトロノミック・ケモテラピーで長期間生存した乳がん肝臓転移の症例報告。

f-gtc (2014年9月15日 09:20)

メトロノミック・ケモテラピーで長期間生存した乳がん肝臓転移の症例報告。

 

Long-term complete response in a patient with liver metastases from breast cancer treated with metronomic chemotherapy.(メトロノミック・ケモテラピーで治療した乳がんの肝臓転移の患者における長期間の完全奏功)Tumori. 100(3):79e-82e.2014 doi: 10.1700/1578.17238.

【要旨】

背景:幾つかの抗がん剤は低用量で使用すると血管系に作用する可能性が多くの研究で指摘されている。このレポートでは、メトロノミック・ケモテラピーによって長期間に渡ってがんの増殖を抑制できた症例を報告する。

症例提示:患者は62歳の女性で左側の乳がんに対して乳房切除が2007年7月に行われた。肝臓転移に対してファーストラインの抗がん剤治療としてドキソルビシンとパクリタキセルによる21日間サイクルの投与が行われた。6サイクルの治療後のCT検査では部分奏功を認めた。ドキソルビシンとパクリタキセルによる抗がん剤治療を中止し、シクロホスファミド(50mg/日経口)とメソトレキセート(2.5mg x 2/日、週2日)によるメトロノミック・ケモテラピーに変更した。この維持療法を開始してから6ヶ月後のCT検査で完全奏功を認めた。

患者の原発部位の病理検査で血管内皮増殖因子受容体2VEGFR2)の過剰発現を認めた。

メトロノミック・ケモテラピーはまだ継続中であるが、60ヶ月経過して現在も完全奏功の状態を維持している。

結論:この症例はメトロノミック・ケモテラピーが維持療法として有効であり、特に毒性(副作用)を認めずに長期間の治療が可能であることを示している。腫瘍におけるVEGFR2の発現量が多い場合は、メトロノミック・ケモテラピーによる血管新生阻害作用が奏功する可能性を示唆する。


(注)

完全奏功(complete response)というのは、がん組織が目に見えないレベルに縮小(消滅)することです。顕微鏡レベルで残っている可能性はありますが、がん組織が消滅した状態が続けば延命できます。

メトロノミック・ケモテラピーで著効を示した症例報告や、メトロノミック・ケモテラピーの有効性や通常の抗がん剤治療より有効であることを示す臨床試験の結果も得られています。

最大耐用量を投与する通常の抗がん剤治療は白血病やリンパ腫や精巣腫瘍のような一部のがんには有効ですが、肺がんや膵臓がんや乳がんなど多くの固形がんにはあまり効果がなく、副作用のデメリットの方が高いことが指摘されています。

最大耐用量を投与すると一時的にはがんが縮小しても、正常組織における修復反応と同様に、がん組織も傷を受けると炎症細胞の浸潤や血管新生が誘導されて、結果的にがん細胞の増殖が促進するからです。

標準治療の抗がん剤治療は一時的な縮小を目標にするため、長期の延命はむしろ犠牲にしている可能性があります。通常の抗がん剤治療は何もしないよりかは延命していますが、メトロノミック・ケモテラピーや副作用の少ない治療を組み合わせた治療よりも勝っているとはいえないという意見が増えています。

この論文で使用されているシクロホスファミド(50mg/日経口)とメソトレキセート(2.5mg x 2/日、週2日)を薬価ベースで計算すると1ヶ月分で約2000円です。この低用量のシクロホスファミド(商品名エンドキサン)とメソトレキセートと使ったメトロノミック・ケモテラピーをベースにして、さらに血管新生阻害、エネルギー産生阻害(グルコース取り込みや解糖系の阻害)、脂肪酸合成やメバロン酸経路の阻害、微小管重合阻害、抗炎症作用などの作用を持った薬などを併用すると、がんを縮小させることができます。

○メトロノミック・ケモテラピーについては以下のサイトを解説しています。 

http://www.f-gtc.or.jp/metronomic/metronomic-chemotherapy.html


 (原文)

Tumori. 2014 May-Jun;100(3):e79-82. doi: 10.1700/1578.17238.

Long-term complete response in a patient with liver metastases from breast cancer treated with metronomic chemotherapy.

Cecconetto L, Casadei Gardini A, Tenti E, Maltoni R, Bravaccini S, Oboldi D, Zoli W, Serra P, Donati C, Sarti S, Amadori D, Rocca A.

Abstract

BACKGROUND:

Preclinical studies have shown that several chemotherapeutic agents at low doses may affect the vascular system. Here we report the case of a patient with long-term cancer control by metronomic chemotherapy.

CASE PRESENTATION:

A 62-year-old woman with breast cancer underwent a left mastectomy in July 2007. For a liver metastasis she was given first-line chemotherapy with doxorubicin plus paclitaxel every 21 days. A CT scan after the sixth cycle showed a partial response. It was decided to stop the treatment with doxorubicin and paclitaxel, and start metronomic therapy with cyclophosphamide 50 mg daily orally and methotrexate 2.5 mg twice daily, 2 days a week. After 6 months of this maintenance treatment, CT scan showed a complete response. We examined the expression of vascular endothelial growth factor receptor 2 (VEGFR2) in histological sections of the primary tumor of our patient, finding evidence of overexpression of the receptor. The metronomic treatment is still ongoing, and after 60 months the patient maintains a complete response.

CONCLUSION:

This clinical case highlights how suitable metronomic chemotherapy can be used as maintenance therapy, allowing long-term treatment with no significant toxicity. This case suggests that the level of VEGFR2 is predictive of best response to antiangiogenic therapy.

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