ビタミンDは、トリプル・ネガティブ乳がんのがん幹細胞を阻害し、分化を誘導する。

f-gtc (2018年4月15日 10:21)

ビタミンDは、トリプル・ネガティブ乳がんのがん幹細胞を阻害し、分化を誘導する。

 

Vitamin D compounds inhibit cancer stem-like cells and induce differentiation in triple negative breast cancer.(ビタミンD化合物は、トリプル・ネガティブ乳がんにおいて

がん幹細胞様細胞を阻害し、分化を誘導する。)J Steroid Biochem Mol Biol. 2017 Oct;173:122-129.

 

【要旨】

トリプル・ネガティブ乳がんは、ホルモン受容体を持たず、悪性度が高く、再発率が高いという特徴を有しており、現在利用可能な標的療法に対する反応性が最も低い乳がんサブタイプの1つである。

したがって、早い段階からの乳がんの発生予防は、トリプル・ネガティブ乳がんの進行を遅延させる上で重要な役割を果たす可能性がある。

がん幹細胞は、腫瘍の進行、治療抵抗性および転移の原因と考えられるがん細胞である。

我々は以前に、ジェミニ・ビタミンD類似体BXL0124Gemini vitamin D analog BXL0124)を含むビタミンD化合物が、生体内(in vivo)で上皮内腺管がんの進行を抑制し、MCF10DCIS乳がん細胞のマンモスフェア培養においてがん幹細胞様細胞を阻害することを示した。

本研究では、トリプル・ネガティブ乳がんにおける乳がん幹細胞様細胞の増殖と分化に対するビタミンD化合物の作用を検討した。

がん幹細胞様の性質を有する乳がん細胞を増やすマンモスフェア培養(Mammosphere cultures)を用いて、トリプル・ネガティブ乳がん細胞株SUM159のがん幹細胞マーカーに対する 1α,25(OH)2ビタミンD3 およびBXL0124の効果を評価した。

ビタミンD化合物は、対照群と比較して、マンモスフェア培養の一次、二次、および三次継代におけるマンモスフィア(がん細胞塊)形成効率を有意に低下させた。 

1α,25(OH)2ビタミンD3 およびBXL0124で処理されたマンモスフェアにおいて、がん幹細胞様表現型および多能性の主要マーカーが分析された。その結果、OCT4CD44およびLAMA5レベルの減少を認めた。

ビタミンD化合物はまた、乳がん幹細胞の維持に関与するNotchシグナル伝達分子、Notch1Notch2Notch3JAG1JAG2HES1およびNFκBの発現レベルを低下した。

さらに、ビタミンD化合物は、筋上皮細胞の分化マーカーであるサイトケラチン14および平滑筋アクチンの発現を亢進し、腺管細胞のマーカーであるサイトケラチン18の発現を抑制した。

基底様乳がんに関連するバイオマーカーであるサイトケラチン5は、ビタミンD化合物によって発現レベルが有意に抑制された。
これらの結果は、ビタミンD化合物が、がん幹細胞および分化を制御することによってトリプル・ネガティブ乳がんを阻害する潜在的な予防剤として役立つことを示唆している

 

 

ビタミンDの血中濃度が高いほど、乳がんの生存率が良くなることが大規模疫学研究で明らかになっています。トリプル・ネガティブ乳がんでは特に血中ビタミンD濃度が低いというデータが報告されています。

Triple negative breast cancer patients presenting with low serum vitamin D levels: a case series(血清ビタミンD濃度が低値を示すトリプル・ネガティブ乳がん:ケースシリーズ)Cases J. 2009; 2: 8390.


一般にがん患者は血清中のビタミンD濃度(貯蔵型の25-ヒドロキシビタミンDで測定)が低値を示すことが明らかになっています。この論文では15例のトリプル・ネガティブ乳がんを対象に25-ヒドロキシビタミンDの血清中の濃度を測定し、健常人や他のサブタイプの乳がん患者と比較しています。
解析の結果、トリプル・ネガティブ乳がん患者では特にビタミンDの血清中濃度が低いという結果を示しています。トリプル・ネガティブ乳がん患者は積極的にビタミンDのサプリメントを補充することが有用と言えます。
再発予防や進行乳がんでビタミンD3のサプリメントの大量摂取が代替医療ではポピュラーです。以下のような症例報告があります。 

 

Effects of Pre-surgical Vitamin D Supplementation and Ketogenic Diet in a Patient with Recurrent Breast Cancer.(再発乳がん患者における術前のビタミンD補充とケトン食の効果)Anticancer Res. 2015 Oct;35(10):5525-32.


この患者の術前の生検による病理検査では、プロゲステロン受容体(PgR)の発現は少なく(10%, score 2+)、増殖活性を示す核タンパク質Ki67は強陽性(30%)でした。

診断から手術まで3週間あり、その間の治療の計画が無かったので、患者は自分の判断で、ビタミンD3(1日10,000 IU)と厳格なケトン食を実施しました。



乳房切除を行われ、切除組織の病理検査でHER2の発現は全く認めず(陰性、score 0)で、PgRの発現は亢進していました(20%)。ERKi67の陽性度は変化はありませんでした。


この症例は、高用量のビタミンD3とケトン食の併用は、乳がん細胞のHER2発現を抑制し、プロゲステロン受容体の発現を亢進するなど、乳がん細胞の生物学的性状に影響を及ぼす可能性を示唆しています。
この論文は1例の症例報告ですので、高用量のビタミンD3とケトン食の併用が乳がんに有効かどうかのエビデンスは低いのですが、高用量のビタミンD3とケトン食はそれぞれ乳がんに対する効果が報告されているので、この2つの治療の併用を試してみる価値はあるかもしれません。
また、ビタミンD3とメトホルミンの相乗効果は乳がんや前立腺がんや大腸がんなどで報告されています。メトホルミンはAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)を活性化してAkt/mTORシグナル伝達系を阻害し、がん細胞の増殖を抑制します。
ビタミンD3はメトホルミンの抗腫瘍効果を高めます。次のような報告があります。


Synergistic antitumor activity of vitamin D3 combined with metformin in human breast carcinoma MDA-MB-231 cells involves mTOR related signaling pathways.
(ヒト乳がん細胞MDA-MB-231細胞におけるビタミンD3とメトホルミンの併用による相乗的な抗腫瘍効果はmTOR関連のシグナル伝達系が関与する)Pharmazie. 2015 Feb;70(2):117-22.

メトホルミンは2型糖尿病の治療に使用されていますが、最近の多くの研究によって、メトホルミンとビタミンDは多くのがん細胞に対して抗腫瘍効果を示すことが示されています。

この研究では、ヒト乳がん細胞株MDA-MB-231を用いて、ビタミンD3とメトホルミンの併用はアポトーシス誘導において相乗効果があることを報告しています。その抗腫瘍効果の発現にはmTOR関連のシグナル伝達系が関与することを報告しています。つまり、ビタミンD3とメトホルミンはmTOR(哺乳類ラパマイシン標的蛋白質)の活性を阻害することによってアポトーシスを誘導することを示しています。
前立腺がんや大腸がんでも同様の効果が報告されています。メトホルミンはAMP依存性プロテインキナーゼ(AMPK)を活性化し、活性化してAMPKmTORを抑制することによって、がん細胞の増殖を抑制します。 以下のような報告もあります。

 

Combined use of vitamin D3 and metformin exhibits synergistic chemopreventive effects on colorectal neoplasia in rats and mice. (ビタミンD3とメトホルミンの併用はラットとマウスの結腸直腸がんの発生に対して相乗的な化学予防効果を示す)Cancer Prev Res (Phila). 2015 Feb;8(2):139-48.

この研究はラットとマウスを用いた大腸発がん実験での検討です。メトホルミンは化学発がんモデルで大腸がんの発生を抑制する作用があります。ビタミンD3はメトホルミンの発がん抑制作用を増強するという結果です。
そのメカニズムとして、mTOR活性の抑制を認めています。さらに、ビタミンD3にはビタミンD受容体/β-カテニンのシグナル伝達系に作用してβ-カテニンの働きを抑制することによってc-MycやサイクリンD1の発現を抑制する作用も指摘しています。
ビタミンD3とメトホルミンの併用は、相乗効果によって発がん抑制や抗腫瘍効果を高めることができるという結論です。
ケトン食もAMPKを活性化し、Akt/mTORシグナル伝達系を抑制します。したがって、ケトン食を実践しているとき、ビタミンD3とメトホルミンを併用すると、抗腫瘍効果を高めることができます進行した乳がんの代替医療として、高用量(1日400010000国際単位)のビタミンD3とメトホルミン(1日10001500mg程度)とケトン食の組合せは、相乗効果が期待できると考えられます。ビタミンD3もメトホルミンも安価ですので、試してみる価値は高いと言えます。この組合せは乳がんだけでなく、大腸がんや膵臓がんや肺がんなど他のがんにも効果が期待できます。 

 

原文:

Vitamin D compounds inhibit cancer stem-like cells and induce differentiation in triple negative breast cancer.J Steroid Biochem Mol Biol. 2017 Oct;173:122-129.

 

Abstract

Triple-negative breast cancer is one of the least responsive breast cancer subtypes to available targeted therapies due to the absence of hormonal receptors, aggressive phenotypes, and the high rate of relapse.
Early breast cancer prevention may therefore play an important role in delaying the progression of triple-negative breast cancer.
Cancer stem cells are a subset of cancer cells that are thought to be responsible for tumor progression, treatment resistance, and metastasis.
We have previously shown that vitamin D compounds, including a Gemini vitamin D analog BXL0124, suppress progression of ductal carcinoma in situ in vivo and inhibit cancer stem-like cells in MCF10DCIS mammosphere cultures.
In the present study, the effects of vitamin D compounds in regulating breast cancer stem-like cells and differentiation in triple-negative breast cancer were assessed. 
Mammosphere cultures, which enriches for breast cancer cells with stem-like properties, were used to assess the effects of 1α,25(OH)2D3 and BXL0124 on cancer stem cell markers in the triple-negative breast cancer cell line, SUM159.
Vitamin D compounds significantly reduced the mammosphere forming efficiency in primary, secondary and tertiary passages of mammospheres compared to control groups.
Key markers of cancer stem-like phenotype and pluripotency were analyzed in mammospheres treated with 1α,25(OH)2D3 and BXL0124.
As a result, OCT4, CD44 and LAMA5 levels were decreased.
The vitamin D compounds also down-regulated the Notch signaling molecules, Notch1, Notch2, Notch3, JAG1, JAG2, HES1 and NFκB, which are involved in breast cancer stem cell maintenance.
In addition, the vitamin D compounds up-regulated myoepithelial differentiating markers, cytokeratin 14 and smooth muscle actin, and down-regulated the luminal marker, cytokeratin 18. Cytokeratin 5, a biomarker associated with basal-like breast cancer, was found to be significantly down-regulated by the vitamin D compounds.
These results suggest that vitamin D compounds may serve as potential preventive agents to inhibit triple negative breast cancer by regulating cancer stem cells and differentiation.

 

ジクロロ酢酸はパクリタキセル耐性の肺がん細胞をパクリタキセル感受性に変換する

f-gtc (2018年2月26日 17:29)

ジクロロ酢酸はパクリタキセル耐性の肺がん細胞をパクリタキセル感受性に変換する 

Suppression of pyruvate dehydrogenase kinase-2 re-sensitizes paclitaxel-resistant human lung cancer cells to paclitaxel.(ピルビン酸脱水素酵素キナーゼ-2の抑制は、パクリタキセル耐性ヒト肺がん細胞をパクリタキセル感受性にする)Oncotarget. 2017 Apr 10;8(32):52642-52650.

【要旨】

治療開始後の初期の臨床的効果は顕著であっても、パクリタキセルで治療された大部分の肺がん患者は、最終的にはパクリタキセルに耐性になる。ピルビン酸脱水素酵素キナーゼ-2PDK2)は、解糖および酸化的リン酸化の重要な調節因子であり、その発現は様々な腫瘍において増加する。本研究では、生化学および同位体追跡法を用いて、肺がん細胞におけるパクリタキセル耐性の機序におけるPDK2の役割を調べた。
パクリタキセルに感受性の肺がん細胞に比べて、パクリタキセル耐性肺がん細胞ではPDK2の発現亢進が認められた。

siRNAを用いたPDK2遺伝子の発現抑制は、パクリタキセル耐性肺がん細胞のパクリタキセルに対する感受性を増加させた。PDK2発現抑制によるパクリタキセル耐性肺がん細胞への作用は、酸化的リン酸化の亢進よりも解糖の減少として認められた。

PDK2の特異的阻害剤のジクロロ酢酸とパクリタキセルを併用すると、パクリタキセル耐性肺がん細胞の生存率に相乗的な阻害効果を示した。
これらの結果は、パクリタキセルによるPDK2の発現誘導が、肺がん細胞のパクリタキセル耐性の獲得の重要な機序として働くことを示している。これらの結果は、パクリタキセルに耐性を獲得した肺がん患者の治療において、PDK2の阻害が有効である可能性を示している。


ジクロロ酢酸はがん細胞の抗がん剤を高めます。抗がん剤治療中にジクロロ酢酸を服用すると、進行がんでもがんを根治できる可能性が高まります。

ジクロロ酢酸については以下のサイトをご参照下さい。

http://www.1ginzaclinic.com/DCA/DCA.html

http://blog.goo.ne.jp/kfukuda_ginzaclinic/e/550e16665a723f2d6df89f9ba8c94a32

 http://www.f-gtc.or.jp/blog/dca.jpg

図:低酸素誘導因子-1HIF-1)はピルビン酸脱水素酵素キナーゼの発現を誘導して(①)、ピルビン酸脱水素酵素(ピルビン酸をアセチルCoAに変換する)の働きを阻害するので(②)、ミトコンドリアでの酸化的リン酸化によるATP産生が抑制されている。ジクロロ酢酸ナトリウムはピルビン酸脱水素酵素キナーゼの活性を阻害することによってピルビン酸脱水素酵素の活性を高め(③)、R体αリポ酸とビタミンB1はピルビン酸脱水素酵素の補因子として働き(④)、ピルビン酸脱水素酵素の活性を高めてピルビン酸からアセチルCoAの変換を促進し、TCA回路での代謝と酸化的リン酸化を亢進する(⑤)。ミトコンドリアでの酸化的リン酸化が亢進すると、活性酸素の産生が増え、乳酸産生が減少し、アポトーシスが起こりやすくなって、抗がん剤感受性が亢進する(⑥)。

 

原文:

Oncotarget. 2017 Apr 10;8(32):52642-52650.

Suppression of pyruvate dehydrogenase kinase-2 re-sensitizes paclitaxel-resistant human lung cancer cells to paclitaxel.

Abstract

Despite impressive initial clinical responses, the majority of lung cancer patients treated with paclitaxel eventually develop resistance to the drug. Pyruvate dehydrogenase kinase-2 (PDK2) is a key regulator of glycolysis and oxidative phosphorylation, and its expression is increased in a variety of tumors. In this study, the role of PDK2 in mediating paclitaxel resistance in lung cancer cells was investigated using biochemical and isotopic tracing methods. Increased expression of PDK2 was observed in paclitaxel-resistant cells ascompared totheir parental cells. Down-regulation of PDK2 usingsiRNA increased the sensitivity to paclitaxel of resistant lung cancer cells. Targeting paclitaxel-resistant cells throughPDK2 knockdown was associated with reduced glycolysis rather than increased oxidative phosphorylation (OXPHOS). Moreover, combining paclitaxel withthe specific PDK2 inhibitor dichloroacetate had a synergistic inhibitory effect on the viability of paclitaxel-resistant lung cancer cells. These results indicate that paclitaxel-induced expression of PDK2 serves as an important mechanism for acquired paclitaxel resistance of lung cancer cells. They also highlight the importance of PDK2 for potential therapeutic interventions in patients who have developed a resistance to paclitaxel.

 

ジクロロ酢酸とメトホルミンはがん細胞の増殖を相乗的に抑制する

f-gtc (2018年2月26日 17:00)

ジクロロ酢酸とメトホルミンはがん細胞の増殖を相乗的に抑制する

Dichloroacetate and metformin synergistically suppress the growth of ovarian cancer cells.(ジクロロ酢酸とメトホルミンは卵巣がん細胞の増殖を相乗的に抑制する)Oncotarget. 2016 Sep 13;7(37):59458-59470.

【要旨】

ジクロロ酢酸とメトホルミンはいずれも、がん細胞の代謝を制御することによって有望な抗腫瘍効果を示している。しかしながら、ジクロロ酢酸は細胞保護的なオートファジーを誘導し、メトホルミンは乳酸蓄積を引き起こす作用によって、その抗がん作用の可能性を制限している。

したがって、それぞれの欠点を克服することによって、それぞれの治療効果を高めることができる。

本研究では、ジクロロ酢酸とメトホルミンが、卵巣がん細胞の増殖抑制とアポトーシス誘導において相乗的に効果を増強することを明らかにした。

興味深いことに、ジクロロ酢酸によって誘導されるMcl-1タンパクと細胞保護的オートファジーをメトホルミンは劇的に減弱し、メトホルミンによって引き起こされる過剰な乳酸蓄積とグルコース消費をジクロロ酢酸が著しく減弱した。

ヌードマウスを使った移植腫瘍の実験では、ジクロロ酢酸とメトホルミンは異種移植卵巣腫瘍の増殖を相乗的に抑制した。これらの結果は、ジクロロ酢酸とメトホルミンの併用は、卵巣がんの治療のための新しい戦略を開発する道を開くかもしれない。

 

メトホルミン(metformin)は、世界中で1億人以上の2型糖尿病患者に使われているビグアナイド系経口血糖降下剤です。糖尿病だけでなくがんの予防や治療の分野でも注目されており、がんの発生を予防する効果やがん細胞の抗がん剤感受性を高める効果が報告されています。

メトホルミンはミトコンドリアの呼吸酵素複合体1(電子伝達複合体1)を阻害してATPの産生を減らし、そのためにAMP:ATP比が上昇するためにAMPKが活性化されます。つまり、メトホルミンはミトコンドリア毒であり、この毒を適量使うと血糖を低下させることができるというメカニズムです。

さて、その作用機序から、ミトコンドリアの呼吸酵素複合体をメトホルミンで阻害した状態でジクロロ酢酸でがん細胞のミトコンドリアの代謝を亢進すれば、がん細胞に比較的特異的に酸化ストレスを高めることができます。

上記のようなジクロロ酢酸とメトホルミンの相乗的な抗腫瘍効果については複数の論文報告があります。

体内で産生された乳酸は肝臓で糖新生に使われます。これをコリ回路と言います。メトホルミンは肝臓における糖新生を阻害するので、体内で乳酸蓄積を引き起こして乳酸アシドーシスの副作用が起こすリスクがあります。

がん組織では乳酸産生が亢進していますが、メトホルミンだけでは乳酸アシドーシスを引き起こすリスクを高めます。

ジクロロ酢酸は乳酸アシドーシスの治療に使われています。ミトコンドリアでの代謝を活性化して乳酸産生を抑えるためです。

したがって、がん治療の目的でメトホルミンを使用するとき、ジクロロ酢酸の併用は、抗腫瘍効果増強と副作用軽減の目的で、合理的な組合せと言えます。

 

原文:

Oncotarget. 2016 Sep 13; 7(37): 59458-59470.

Dichloroacetate and metformin synergistically suppress the growth of ovarian cancer cells

Abstract

Both dichloroacetate (DCA) and metformin (Met) have shown promising antitumor efficacy by regulating cancer cell metabolism. However, the DCA-mediated protective autophagy and Met-induced lactate accumulation limit their tumor-killing potential respectively. So overcoming the corresponding shortages will improve their therapeutic effects. In the present study, we found that DCA and Met synergistically inhibited the growth and enhanced the apoptosis of ovarian cancer cells. Interestingly, we for the first time revealed that Met sensitized DCA via dramatically attenuating DCA-induced Mcl-1 protein and protective autophagy, while DCA sensitized Met through markedly alleviating Met-induced excessive lactate accumulation and glucose consumption. The in vivo experiments in nude mice also showed that DCA and Met synergistically suppressed the growth of xenograft ovarian tumors. These results may pave a way for developing novel strategies for the treatment of ovarian cancer based on the combined use of DCA and Met.

 

カンナビジオールはトリプル・ネガティブ乳がんの増殖・転移を抑制する

f-gtc (2017年10月 1日 14:34)

カンナビジオールはトリプル・ネガティブ乳がんの増殖・転移を抑制する

Modulation of the tumor microenvironment and inhibition of EGF/EGFR pathway: Novel antitumor mechanisms of Cannabidiol in breast cancer(腫瘍の微小環境の制御とEGF/EGFR経路の阻害:乳がんに対するカンナビジオールの新規の抗腫瘍効果のメカニズム)Mol Oncol. 2015 Apr; 9(4): 906-919.


【要旨】

精神作用のないカンナビノイドの一種であるカンナビジオールの抗腫瘍効果に関しては十分に検討されておらず、特にトリプルネガティブ乳がんに対する作用についてはほとんど検討されていない。

この研究では、トリプルネガティブ乳がん細胞を含めて高度に悪性度の高い乳がん細胞株を用いて、カンナビジオールの抗腫瘍活性を検討した。

我々はこの研究で初めて、乳がん細胞における上皮成長因子(EGF)誘導性の増殖と移動をカンナビジオールが有意に阻害することを明らかにした。

カンナビジオールは、EGFRERKAKTNF-κBシグナル伝達系のEGF誘導性の活性化を阻害し、MMP2MMP9EGF誘導性の分泌を阻害した。

さらに、マウスを使った複数の実験系で、カンナビジオールは腫瘍の増大と転移を阻害した。

分子メカニズムの解析の結果、カンナビジオールは原発巣と肺転移巣における腫瘍関連マクロファージの集積を有意に阻害した。

培養細胞を使ったin vitroの実験では、培養がん細胞にカンナビジオールを投与した使用後の培養液はマクロファージ細胞RAW264.7細胞の移動を抑制した。
カンナビジオール投与培養がん細胞の使用後の培養液は、マクロファージの集積と活性化に重要なサイトカインのGM-CSFCCL3の濃度の低下を認めた。

以上の結果より、カンナビジオールはEGF/EGFRシグナル伝達系の阻害と腫瘍微小環境の制御という新規なメカニズムによって乳がん細胞の増殖と転移を阻害することを初めて明らかにした。

これらの結果は、治療法が限られ、予後が不良なトリプル・ネガティブ乳がんを含めて、悪性度の高い乳がんサブタイプの増殖と転移を阻止する新規の治療法としてカンナビジオールが使用できる可能性を示している

カンナビジオールの抗がん作用については以下のサイトをご参照下さい。

 http://www.f-gtc.or.jp/cannabidiol/CBDoil.html

【原文】

Mol Oncol. 2015 Apr; 9(4): 906-919.

Modulation of the tumor microenvironment and inhibition of EGF/EGFR pathway: Novel antitumor mechanisms of Cannabidiol in breast cancer

 

Abstract

The antitumor role and mechanisms of Cannabidiol (CBD), a nonpsychotropic cannabinoid compound, are not well studied especially in triplenegative breast cancer (TNBC). In the present study, we analyzed CBD's antitumorigenic activity against highly aggressive breast cancer cell lines including TNBC subtype. We show here for the first timethat CBD significantly inhibits epidermal growth factor (EGF)induced proliferation and chemotaxis of breast cancer cells. Further studies revealed that CBD inhibits EGFinduced activation of EGFR, ERK, AKT and NFkB signaling pathways as well as MMP2 and MMP9 secretion. In addition, we demonstrated that CBD inhibits tumor growth and metastasis in different mouse model systems. Analysis of molecular mechanisms revealed that CBD significantly inhibits the recruitment of tumorassociated macrophages in primary tumor stroma and secondary lung metastases. Similarly, our in vitro studies showed a significant reduction in the number of migrated RAW 264.7 cells towards the conditioned medium of CBDtreated cancer cells. The conditioned medium of CBDtreated cancer cells also showed lower levels of GMCSF and CCL3 cytokines which are important for macrophage recruitment and activation. In summary, our study shows for the first timethat CBD inhibits breast cancer growth and metastasis through novel mechanisms by inhibiting EGF/EGFR signaling and modulating the tumor microenvironment. These results also indicate that CBD can be used as a novel therapeutic option to inhibit growth and metastasis of highly aggressive breast cancer subtypes including TNBC, which currently have limited therapeutic options and are associated with poor prognosis and low survival rates.

 

 

カンナビジオールはドキソルビシン誘発性心筋障害を防ぐ

f-gtc (2017年10月 1日 09:37)

カンナビジオールはドキソルビシン誘発性心筋障害を防ぐ

Cannabidiol Protects against Doxorubicin-Induced Cardiomyopathy by Modulating Mitochondrial Function and Biogenesis(カンナビジオールはミトコンドリアの機能と新生を制御することによってドキソルビシン誘発性心筋障害を防ぐ)Mol Med. 2015; 21(1): 38-45.

【要旨】
ドキソルビシンは広く使用されている抗腫瘍活性の高い抗がん剤であるが、その用量依存的な心臓毒性によって臨床使用に限界がある。
ドキソルビシンの心臓毒性には活性酸素や一酸化窒素による酸化ストレスの亢進や、心筋細胞や血管内皮細胞のミトコンドリア機能の障害や細胞死が関与している。
カンナビジオールは大麻に含まれる精神活性を持たない成分であり、有害作用は少なく、抗酸化作用や抗炎症作用を有し、さらに最近は抗腫瘍活性も報告されている。ドキソルビシン誘発性の心筋障害のマウスの実験モデルを用いて、カンナビジオールの効果を検討した。
ドキソルビシン誘発性心筋障害は心筋細胞のダメージのレベル(血清中のクレアチニンキナーゼと乳酸脱水素酵素の値)、活性酸素や一酸化窒素による細胞傷害のレベル(細胞内のグルタチオン量、グルタチオンペルオキシダーゼ1活性、脂質過酸化、3-ニトロチロシン形成、誘導性一酸化窒素合成酵素mRNAレベル)、心筋細胞死(アポトーシス、ポリADPリボースポリメラーゼ1依存性)、心筋機能(心拍出機能と左室内径短縮率)で評価した。
ドキソルビシンはミトコンドリア新生を抑制し、ミトコンドリア機能を低下させ(呼吸酵素複合体IIIの活性低下)、心筋細胞における脱共役たんぱく23uncoupling protein 2 and 3)とmedium-chain acyl-CoA dehydrogenase mRNAの発現を低下させた。
カンナビジオールの投与は、これらのドキソルビシン誘発性の心筋機能の障害を改善し、活性酸素や一酸化窒素による細胞ストレスと細胞死を軽減した。
カンナビジオールは障害されたミトコンドリア機能とミトコンドリア新生を改善した。
これらの実験結果は、ドキソルビシンによる心筋障害に対する新たな治療法をしてカンナビジオールの有用性を示唆しており、ミトコンドリアの機能や新生に対するカンナビジオールの作用は、他の多くの組織障害の実験モデルでのカンナビジオールの作用機序を説明できるかもしれない。

 

解説:

カンナビジオールは、活性酸素や一酸化窒素による傷害を軽減する作用、ミトコンドリアの機能や新生を亢進する作用、炎症や細胞死を軽減する作用などのメカニズムで、ドキソルビシン誘発性の心筋傷害や心不全を予防する効果が期待できるという報告です。

この論文では、マウスの実験でカンナビジオールは1日1回、10mg/kgを腹腔内投与しています。人間に換算すれば12mg/kg程度ですが、口腔内からの吸収率を20%くらいに考えると、ヒトでの口腔内(舌下投与)の1日量は510mg/kg程度が基準になると思います。
(動物の標準代謝量は体重の3/4乗(正確には0.751乗)に比例するという法則があり、一般にマウスの体重当たりのエネルギー消費量や薬物の代謝速度は人間の約7倍と言われています。)

他の論文で、カンナビジオールはシスプラチンによる腎臓障害を軽減することが報告されています。さらに、多くのがん細胞に対して抗腫瘍活性を発揮することが報告されています。

カンナビジオールの安全性は極めて高いので、抗がん剤治療の副作用軽減と抗腫瘍効果増強にカンナビジオールの併用は有効だと言えます。

 

カンナビジオールの詳細は以下のサイトをご参照下さい。

http://www.f-gtc.or.jp/cannabidiol/CBDoil.html

 

【原文】

Mol Med. 2015 Jan 6;21:38-45. doi: 10.2119/molmed.2014.00261.

Cannabidiol Protects against Doxorubicin-Induced Cardiomyopathy by Modulating Mitochondrial Function and Biogenesis.

Hao E1,2, Mukhopadhyay P1, Cao Z1, Erdélyi K1, Holovac E1, Liaudet L3, Lee WS1,4, Haskó G5, Mechoulam R6, Pacher P1.


Abstract

Doxorubicin (DOX) is a widely used, potent chemotherapeutic agent; however, its clinical application is limited because of its dose-dependent cardiotoxicity. DOX's cardiotoxicity involves increased oxidative/nitrative stress, impaired mitochondrial function in cardiomyocytes/endothelial cells and cell death. Cannabidiol (CBD) is a nonpsychotropic constituent of marijuana, which is well tolerated in humans, with antioxidant, antiinflammatory and recently discovered antitumor properties. We aimed to explore the effects of CBD in a well-established mouse model of DOX-induced cardiomyopathy. DOX-induced cardiomyopathy was characterized by increased myocardial injury (elevated serum creatine kinase and lactate dehydrogenase levels), myocardial oxidative and nitrative stress (decreased total glutathione content and glutathione peroxidase 1 activity, increased lipid peroxidation, 3-nitrotyrosine formation and expression of inducible nitric oxide synthase mRNA), myocardial cell death (apoptotic and poly[ADP]-ribose polymerase 1 [PARP]-dependent) and cardiac dysfunction (decline in ejection fraction and left ventricular fractional shortening). DOX also impaired myocardial mitochondrial biogenesis (decreased mitochondrial copy number, mRNA expression of peroxisome proliferator-activated receptor γ coactivator 1-alpha, peroxisome proliferator-activated receptor alpha, estrogen-related receptor alpha), reduced mitochondrial function (attenuated complex I and II activities) and decreased myocardial expression of uncoupling protein 2 and 3 and medium-chain acyl-CoA dehydrogenase mRNA. Treatment with CBD markedly improved DOX-induced cardiac dysfunction, oxidative/nitrative stress and cell death. CBD also enhanced the DOX-induced impaired cardiac mitochondrial function and biogenesis. These data suggest that CBD may represent a novel cardioprotective strategy against DOX-induced cardiotoxicity, and the above-described effects on mitochondrial function and biogenesis may contribute to its beneficial properties described in numerous other models of tissue injury.

トリプルネガティブ乳がんにメトホルミンと2-デオキシ-D-グルコースの併用が有効

f-gtc (2017年10月 1日 07:15)

トリプルネガティブ乳がんにメトホルミンと2-デオキシ-D-グルコースの併用が有効

Co-treatment of breast cancer cells with pharmacologic doses of 2-deoxy-D-glucose and metformin: Starving tumors.(薬理学的用量の2-デオキシ-D-グルコースとメトホルミンによる乳がん細胞の併用投与:がん細胞の飢餓)Oncol Rep. 2017 Apr;37(4):2418-2424.

【要旨】
がん細胞のエネルギー産生の特徴は好気性解糖である。従って、解糖系の阻害はがん細胞に選択的な治療法となる。
解糖系を阻害する2-デオキシ-D-グルコース(2DGは、多くのがん細胞においてアポトーシス(細胞死)を誘導することが示されている。さらに、糖尿病治療薬のメトホルミンの抗腫瘍活性が実証されている。
本研究では、2DGとメトホルミンの薬理学的用量の組み合わせが抗腫瘍効果を高めるかどうかを確認することを目的とした。
トリプルネガティブ乳がん(TNBC)細胞のMDA-MB-231およびHCC1806細胞を用いて、2DGとメトホルミンのそれぞれ単独の投与と併用投与の場合の細胞生存率を測定した。
アポトーシスの誘導は、ミトコンドリア膜電位の低下およびPARP(ポリADPリボースポリメラーゼ)の切断の測定によって定量した。
2DG
またはメトホルミンによる乳がん細胞の治療は、細胞生存率の有意な低下およびアポトーシスの増加をもたらした。
2DG
とメトホルミンを同時に投与すると、それぞれ単一で投与した場合と比較して、生存率が有意に低下した。この生存率の低下は、アポトーシスの誘導によるものであった。
さらに、アポトーシス誘導に関しては、単剤で投与した場合と比較して、併用投与はより強い誘導効果を示した。
ヒト乳がん細胞の解糖系亢進は治療のターゲットになりうる。解糖系阻害剤の2DGおよび糖尿病治療薬のメトホルミンの併用投与は副作用が少なく、乳がんに対する適切な治療法になるかもしれない。

解説:
トリプルネガティブ乳がんに対してメトホルミンと2-デオキシ-D-グルコースの併用が抗腫瘍効果を高めることは他にも多数の論文があり、最近増えています。がん細胞では解糖系が亢進しているので、メトホルミンだけでは抗腫瘍効果が十分に得られないことが分ってきたからです。
メトホルミンをがん治療に使うときには、がん細胞の解糖系を阻害する方法を併用することが重要と言えます。
トリプルネガティブ乳がん細胞では、特に解糖系が亢進していることが報告されています。したがって、トリプルネガティブ乳がん細胞ではメトホルミンと2-デオキシ-D-グルコースの併用は有用です。

 

トリプルネガティブ乳がん細胞の補完・代替医療については以下のサイトで解説しています。

http://www.f-gtc.or.jp/TNBC/Triple_Negative_Breast_Cancer.html

 

【原文】

Oncol Rep. 2017 Apr;37(4):2418-2424. doi: 10.3892/or.2017.5491. Epub 2017 Mar 6.

Co-treatment of breast cancer cells with pharmacologic doses of 2-deoxy-D-glucose and metformin: Starving tumors.

Wokoun U1, Hellriegel M1, Emons G1, Gründker C1.

 

Abstract

A characteristic of tumor cells is the increased aerobic glycolysis for energy production. Thus, inhibition of glycolysis represents a selective therapeutic option. It has been shown that glycolysis inhibitor 2-deoxy-D-glucose (2DG) induces apoptotic cell death in different tumor entities. In addition, the antitumor activity of the anti-diabetic drug metformin has been demonstrated. In the present study, we aimed to ascertain whether the combination of pharmacologic doses of 2DG with metformin increases the antitumor efficacy. Cell viability of MDA-MB-231 and HCC1806 triple-negative breast cancer (TNBC) cells treated without or with 2DG or with metformin alone or with the combination of both agents was measured using Alamar Blue assay. Induction of apoptosis was quantified by measurement of the loss of mitochondrial membrane potential and cleavage of PARP. Treatment of breast cancer cells with glycolysis inhibitor 2DG or with the anti-diabetic drug metformin resulted in a significant decrease in cell viability and an increase in apoptosis. Treatment with 2DG in combination with metformin resulted in significantly reduced viability compared with the single agent treatments. The observed reduction in viability was due to induction of apoptosis. In addition, in regards to apoptosis induction a stronger effect in the case of co-treatment compared with single agent treatments was observed. The glycolytic phenotype of human breast cancer cells can be targeted for therapeutic intervention. Co-treatment with doses of the glycolysis inhibitor 2DG and anti-diabetic drug metformin is tolerable in humans and may be a suitable therapy for human breast cancers.

アロマターゼ阻害剤によるホルモン療法中のシンバスタチン使用は乳がんの再発予防効果を高める

f-gtc (2017年7月 2日 05:04)

アロマターゼ阻害剤によるホルモン療法中のシンバスタチン使用は乳がんの再発予防効果を高める


閉経後ホルモン受容体陽性乳がんに対しタモキシフェン、タモキシフェンからレトロゾールへのスイッチ、レトロゾールの治療法を比較する第III相臨床試験(BIG198)が米国で行われています。

このBIG1-98試験において、コレステロール値,高脂血症治療薬内服の有無,試験治療中の高脂血症治療薬の内服開始の有無と再発との関係が検討されています。以下のような論文が報告されています。

Cholesterol, Cholesterol-Lowering Medication Use, and Breast Cancer Outcome in the BIG 1-98 Study.BIG 198研究におけるコレステロール,コレステロールを低下させる薬剤の使用,および,乳がんの転帰)J Clin Oncol. 2017 Apr 10;35(11):1179-1188.

【要旨】

目的:コレステロールを低下させる薬剤(Cholesterol-lowering medicationCLM)が乳がんの再発を防ぐ作用があることが報告されている。
CML
(コレステロールを低下させる薬)がエストロゲン作用のあるコレステロール代謝産物の27-ヒドロキシコレステロール(27-hydroxycholesterol)の血中レベルを低下させることによってエストロゲン受容体を介するシグナルを減弱する可能性がある。
また、血清中のコレステロール値や高コレステロール血症自体に対するホルモン療法の作用が、アロマターゼ阻害剤の抗腫瘍効果を妨げている可能性もある。

患者と方法:Breast International GroupBIG)が、ランダム化第III相二重盲検試験(BIG 198)を実施した。このBIG1-98試験では、19982003年にかけて診断された早期ステージのホルモン受容体陽性の浸潤性乳がんのある閉経後女性8,010名が参加した。

血清中の総コレステロール値とCLM使用の有無を、調査開始時および6ヶ月ごとに5.5年間測定しホルモン療法中のCLM開始と転帰との関係を調査した。評価項目は、無病生存期間、乳がん無再発期間、無遠隔転生存期間であった。

結果:コレステロール値はタモキシフェン療法中に減少した。

内分泌療法中にCLMを開始した患者789名の内訳は,レトロゾールのみ318名,タモキシフェン+レトロゾール189名,レトロゾール+タモキシフェン176名,レトロゾールのみ106名であった。

内分泌療法中のCLM開始は、無病生存期間(HR 0.7995 CI 0.660.95P0.01)、乳がん無再発期間(HR 0.7695 CI 0.600.97P0.02)、無遠隔転移期間(HR 0.7495 CI 0.560.97P0.03)の改善と関係があった

結論:ホルモン受容体陽性の早期のステージの乳がんのホルモン療法中のコレステロールを低下する治療薬の併用は、乳がんの再発を予防する効果が期待できる。この観察研究の結果を確認するために前向きのランダム化試験の実施が必要である。

この研究は、スタチンに限定したものでなく、その他の高脂血症治療薬も含まれています。コレステロールの代謝物である27hydroxycholestrolはエストロゲン受容体のリガンドとして作用し,腫瘍増殖に関与している考えられているので、コレステロールを低下させること自体に乳がん再発抑制効果があります。

HMGCoA還元酵素は乳がんに発現し,予後因子であることが同定されています。したがって、HMGCoA還元酵素阻害剤のスタチン(特に脂溶性のシンバスタチン)は、乳がん細胞の増殖を抑制する効果があります。

この研究は観察研究であるため,今後前向き試験で真に高脂血症治療薬が乳がんの予後を改善するかを検証する必要があります。しかし、ホルモン受容体陽性乳がんの術後補助内分泌療法中の患者において,高脂血症の治療が予後を改善する可能性が高いので、ホルモン療法中にコレステロールが高くなった場合は、高脂血症の治療を積極的に受けた方が良いというエビデンスはあると言えます。特に、シンバスタチンによる治療が推奨されます。

一般に,アロマターゼ阻害薬は高脂血症となることから,高脂血症治療薬によるメリットが高いと想定されます。

一方,タモキシフェンはコレストレール値を下げるため,高脂血症の効果はさほどでないと考えられます。

つまり、アロマターゼ阻害剤によるホルモン療法中で、コレステロール値が高い場合は、シンバスタチンを使うエビデンスは高いと言えます。

 

【原文】 

J Clin Oncol. 2017 Apr 10;35(11):1179-1188. doi: 10.1200/JCO.2016.70.3116. Epub 2017 Feb 13.

Cholesterol, Cholesterol-Lowering Medication Use, and Breast Cancer Outcome in the BIG 1-98 Study.

Borgquist S1, Giobbie-Hurder A1, Ahern TP1, Garber JE1, Colleoni M1, Láng I1, Debled M1, Ejlertsen B1, von Moos R1, Smith I1, Coates AS1, Goldhirsch A1, Rabaglio M1, Price KN1, Gelber RD1, Regan MM1, Thürlimann B1.

 

Abstract

Purpose Cholesterol-lowering medication (CLM) has been reported to have a role in preventing breast cancer recurrence. CLM may attenuate signaling through the estrogen receptor by reducing levels of the estrogenic cholesterol metabolite 27-hydroxycholesterol. The impact of endocrine treatment on cholesterol levels and hypercholesterolemia per se may counteract the intended effect of aromatase inhibitors.

Patients and Methods The Breast International Group (BIG) conducted a randomized, phase III, double-blind trial, BIG 1-98, which enrolled 8,010 postmenopausal women with early-stage, hormone receptor-positive invasive breast cancer from 1998 to 2003. Systemic levels of total cholesterol and use of CLM were measured at study entry and every 6 months up to 5.5 years. Cumulative incidence functions were used to describe the initiation of CLM in the presence of competing risks. Marginal structural Cox proportional hazards modeling investigated the relationships between initiation of CLM during endocrine therapy and outcome. Three time-to-event end points were considered: disease-free-survival, breast cancer-free interval, and distant recurrence-free interval. Results Cholesterol levels were reduced during tamoxifen therapy. Of 789 patients who initiated CLM during endocrine therapy, the majority came from the letrozole monotherapy arm (n = 318), followed by sequential tamoxifen-letrozole (n = 189), letrozole-tamoxifen (n = 176), and tamoxifen monotherapy (n = 106). Initiation of CLM during endocrine therapy was related to improved disease-free-survival (hazard ratio [HR], 0.79; 95% CI, 0.66 to 0.95; P = .01), breast cancer-free interval (HR, 0.76; 95% CI, 0.60 to 0.97; P = .02), and distant recurrence-free interval (HR, 0.74; 95% CI, 0.56 to 0.97; P = .03). Conclusion Cholesterol-lowering medication during adjuvant endocrine therapy may have a role in preventing breast cancer recurrence in hormone receptor-positive early-stage breast cancer. We recommend that these observational results be addressed in prospective randomized trials.

アンジオテンシンII阻害剤は肺がんにおけるタルセバの効果を高める

f-gtc (2016年7月14日 14:08)

アンジオテンシンII阻害剤は肺がんにおけるタルセバの効果を高める

Renin-Angiotensin System Blockers May Prolong Survival of Metastatic Non-Small Cell Lung Cancer Patients Receiving Erlotinib (レニン-アンジオテンシン・システムはエルロチニブ投与を受けている転移のある非小細胞性肺がん患者の生存期間を延長する可能性がある)
Medicine (Baltimore). 2015 Jun; 94(22): e887.

エルロチニブ(Erlotinib)は上皮成長因子受容体(EGFR)のチロシンキナーゼを選択的に阻害する内服の抗がん剤で、商品名をタルセバと言います。非小細胞性肺がんや膵臓がんの治療に使われています。

転移している非小細胞性肺がんに対してエルロチニブで治療を行った117例の患者を解析したところ、アンジオテンシン変換酵素阻害剤(angiotensin-converting enzyme inhibitorsACEIs)かアンジオテンシン2受容体タイプ1の阻害剤(angiotensin-2 receptor 1 blockersARBs)を服用していた患者さんの生存期間が長かったという結果が得られたという報告です。

この117例のうち、転移のある非小細胞性肺がんの診断のついた時点で、アンジオテンシン変換酵素阻害剤(ACEIs)かアンジオテンシン2受容体タイプ1の阻害剤(ARBs)のどちらを服用している患者は37例でした。このレニン・アンジオテンシン系阻害剤のグループ(renin-angiotensin system blockersRASBs)が、RASBsを服用していない非小細胞性肺がん(転移あり)80例を対照にして比較しています。

全症例の平均年齢は61(±1)歳で、全例が抗がん剤治療かエルロチニブ治療を受けていました。

RASB群は対照群に比べて、喫煙率が高く、高血圧と虚血性心疾患の率が高く、エルロチニブ、サイアザイド系利尿薬(thiazides)、βブロッカー、カルシウム・チャネル・ブロッカーを使用している頻度が高いことが認められています。

追跡期間の中央値は18.9ヶ月(1〜102ヶ月)です。

追跡期間の中央値はRASB群が17ヶ月で対照群が11ヶ月と統計的有意差を認めました(P=0.033

処方されたRASB剤で最も多かったのはバルサルタン(valsartan)でした(37例中12例が服用)。

解析の時点で98例(83.7%)が死亡していました。

全生存期間の中央値はRASB群で17ヶ月、対照群は12ヶ月でした(P=0.016)。興味深いことに、エルロチニブで治療を受けている場合に、RASBの使用による生存期間の延長が最大でした。

RASB+エルロチニブの全生存期間が34ヶ月に対して対照群は25ヶ月でした。

エルロチニブ治療でACEIの使用者は4例のみであったため、この生存期間の延長はおもにARBs(アンジオテンシン2受容体タイプ1の阻害剤)によるものでした。

 

原文のAbstract

Renin-Angiotensin System Blockers May Prolong Survival of Metastatic Non-Small Cell Lung Cancer Patients Receiving Erlotinib

Adnan Aydiner, MD, Rumeysa Ciftci, MD, and Fatma Sen, MD

Monitoring Editor: Chun-xia Cao.

Author information Article notes Copyright and License information

 

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Abstract

The aim of this study is to determine whether renin-angiotensin system blockers (RASBs), which include angiotensin-converting enzyme inhibitors (ACEIs) and angiotensin-2 receptor 1 blockers (ARBs), improve the overall survival (OS) of patients with metastatic non-small cell lung cancer (NSCLC).

The medical charts of 117 patients with metastatic NSCLC were retrospectively assessed. Thirty-seven patients (RASB group) using RASBs during systemic treatment were compared with 80 controls (control group) who did not use RASBs following the diagnosis of NSCLC. The histological tumor subtype, performance status, age, sex, smoking status, comorbidities, other medications, chemotherapeutics (CT), and erlotinib that were received in any line of treatment were recorded. We compared the OS of the patients in the RASB and control groups.

The median (±SD) age of the patients was 61 (±1) years and all patients were administered systemic treatment (CT or erlotinib). The patients in RASB group were more likely to be smokers, have hypertension and ischemic heart disease, and use erlotinib, thiazides, beta-blockers, and calcium-channel blockers (P < 0.05 for all) compared with the control group. The median follow-up time was 18.9 months (range 1-102 months) for the entire group. The median follow-up period was longer for RASB group than control group (17 vs 11 months, P = 0.033). The most commonly prescribed RASB agent was valsartan (n = 12/37). At the time of the analysis, 98 (83.7%) of all patients had died. In the univariate analysis, the median OS was longer in the RASB group compared with the control group (17 [±4.1] vs 12 [±1.4] months, P = 0.016). Interestingly, further analyses revealed that RASBs significantly improved OS only if used with erlotinib concurrently (34 [±13.8] vs 25 [±5] months, P = 0.002) and the OS benefit was more attributable to ARBs because only 4 patients received ACEI and erlotinib concurrently. However, the benefit of ARBs on OS disappeared in the multivariate analysis.

The use of ARBs during erlotinib treatment may prolong OS of patients with metastatic NSCLC.

ビタミンD3+メトホルミン+ケトン食が乳がんに効く可能性がある

f-gtc (2015年10月18日 07:09)

ビタミンD3+メトホルミン+ケトン食が乳がんに効く可能性がある

Effects of Pre-surgical Vitamin D Supplementation and Ketogenic Diet in a Patient with Recurrent Breast Cancer.(再発乳がん患者における術前のビタミンD補充とケトン食の効果)Anticancer Res. 2015 Oct;35(10):5525-32.

【要旨】
研究の背景:19歳で出産した1児の母親である女性が、1985年(37歳)に右の乳がんと診断された。患者は腫瘍の摘出(乳房温存手術)とリンパ節廓清、放射線治療を受けた。
1999
年に左乳房に乳がんが見つかり、切除と放射線治療が行われ、さらにホルモン療法(タモキシフェン)を6年間受けた。
2014
年の3月に、1985年に手術と放射線治療を受けた乳腺の残存乳腺組織から浸潤性乳管がんが発見された。
症例報告:術前の生検による病理検査では、プロゲステロン受容体(PgR)の発現は少なく(<1%)、エストロゲン受容体(ER)は強陽性(90%)で、ヒト上皮増殖因子受容体(HER2)は陽性(>10%, score 2+)、増殖活性を示す核タンパク質Ki67は強陽性(30%)であった。
診断から手術まで3週間あり、その間の治療の計画が無かったので、患者は自分の判断で、ビタミンD3(1日10,000 IU)と厳格なケトン食を実施した。
結果:右乳房切除を行われた。切除組織の病理検査でHER2の発現は全く認めず(陰性、score 0)で、PgRの発現は亢進していた(20%)。ERKi67の陽性度は変化なかった。
結論:この症例は、高用量のビタミンD3とケトン食の併用は、乳がん細胞のHER2発現を抑制し、プロゲステロン受容体の発現を亢進するなど、乳がん細胞の生物学的性状に影響を及ぼす可能性を示唆している。

これは1例の症例報告ですので、高用量のビタミンD3とケトン食の併用が乳がんに有効かどうかのエビデンスは低いのですが、高用量のビタミンD3とケトン食はそれぞれ乳がんに対する効果が報告されているので、この2つの治療の併用を試してみる価値はあるかもしれません

また、ビタミンD3とメトホルミンの相乗効果は乳がんや前立腺がんや大腸がんなどで報告されています。メトホルミンはAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)を活性化してAkt/mTORシグナル伝達系を阻害し、がん細胞の増殖を抑制します。ビタミンD3はメトホルミンの抗腫瘍効果を高めます。次のような報告があります。

Synergistic antitumor activity of vitamin D3 combined with metformin in human breast carcinoma MDA-MB-231 cells involves m-TOR related signaling pathways. (ヒト乳がん細胞MDA-MB-231細胞におけるビタミンD3とメトホルミンの併用による相乗的な抗腫瘍効果はmTOR関連のシグナル伝達系が関与する)Pharmazie. 2015 Feb;70(2):117-22.

メトホルミンは2型糖尿病の治療に使用されていますが、最近の多くの研究によって、メトホルミンとビタミンDは多くのがん細胞に対して抗腫瘍効果を示すことが示されています。
この研究では、ヒト乳がん細胞株MDA-MB-231を用いて、ビタミンD3とメトホルミンの併用はアポトーシス誘導において相乗効果があることを報告しています。その抗腫瘍効果の発現にはmTOR関連のシグナル伝達系が関与することを報告しています。つまり、ビタミンD3とメトホルミンはmTOR(哺乳類ラパマイシン標的蛋白質)の活性を阻害することによってアポトーシスを誘導することを示しています。
前立腺がんや大腸がんでも同様の効果が報告されています。

Vitamin D3 potentiates the growth inhibitory effects of metformin in DU145 human prostate cancer cells mediated by AMPK/mTOR signalling pathway. (ヒト前立腺がん細胞DU145におけるAMPK/mTORシグナル伝達系を介するメトホルミンの増殖阻害作用をビタミンD3は増強する)Clin Exp Pharmacol Physiol. 2015 Jun;42(6):711-7.

前述のようにメトホルミンはAMPKを活性化してAkt/mTORシグナル伝達系を抑制し、抗腫瘍効果を発揮します。ビタミンD3はメトホルミンのAkt/mTORシグナル伝達系の抑制効果を増強して、アポトーシス誘導を亢進するという作用機序です。
Akt/mTOR
シグナル伝達系は、インスリンやインスリン様成長因子-1IGF-1)などの増殖因子や成長因子で活性化され、タンパク質や脂質の合成や、細胞分裂や細胞死や血管新生やエネルギー産生などに作用してがん細胞の増殖を促進します。
メトホルミンはAMP依存性プロテインキナーゼ(AMPK)を活性化し、活性化してAMPKmTORを抑制することによって、がん細胞の増殖を抑制します。
 

Combined use of vitamin D3 and metformin exhibits synergistic chemopreventive effects on colorectal neoplasia in rats and mice. (ビタミンD3とメトホルミンの併用はラットとマウスの結腸直腸がんの発生に対して相乗的な化学予防効果を示す)Cancer Prev Res (Phila). 2015 Feb;8(2):139-48.

この研究はラットとマウスを用いた大腸発がん実験での検討です。メトホルミンは化学発がんモデルで大腸がんの発生を抑制する作用があります。ビタミンD3はメトホルミンの発がん抑制作用を増強するという結果です。そのメカニズムとして、mTOR活性の抑制を認めています。さらに、ビタミンD3にはビタミンD受容体/β-カテニンのシグナル伝達系に作用してβ-カテニンの働きを抑制することによってc-MycやサイクリンD1の発現を抑制する作用も指摘しています。

ビタミンD3とメトホルミンの併用は、相乗効果によって発がん抑制や抗腫瘍効果を高めることができるという結論です

ケトン食もAMPKを活性化し、Akt/mTORシグナル伝達系を抑制します。したがって、ケトン食を実践しているとき、ビタミンD3とメトホルミンを併用すると、抗腫瘍効果を高めることができます。

進行した乳がんの代替医療として、高用量(1日400010000国際単位)のビタミンD3とメトホルミン(1日10001500mg程度)とケトン食の組合せは、相乗効果が期待できると考えられます。ビタミンD3もメトホルミンも安価ですので、試してみる価値は高いと言えます。
この組合せは乳がんだけでなく、大腸がんや膵臓がんや肺がんなど他のがんにも効果が期待できます。
 

カンナビジオールはパクリタキセルの神経障害を軽減する

f-gtc (2015年4月19日 12:15)

カンナビジオールはパクリタキセルの神経障害を軽減する

Cannabidiol inhibits paclitaxel-induced neuropathic pain through 5-HT(1A)
receptors without diminishing nervous system function or chemotherapy efficacy.
(カンナビジオールは、神経系の機能や抗がん剤の効果を減弱することなく、5HT1A受容体を介してパクリタキセル誘発性の神経障害性疼痛を阻止する)Br J Pharmacol. 171(3):636-45.2014

【要旨】
研究の背景と目的:パクリタキセルは末梢神経にダメージを与えて痛みを引き起こす副作用があり、これによって抗がん剤治療を中断せざるを得ない場合もある。我々は以前の研究において、精神変容作用を持たないカンアビノイド(大麻に含まれるある種の成分の総称)の一つであるカンナビジオールが、パクリタキセルによる機械的および温熱による疼痛感受性の亢進を阻止する作用を有することをマウスを使った実験で明らかにした。抗がん剤による末梢神経障害を阻害するカンナビジオールの作用のメカニズムを明らかにし、カンナビジオールの作用が神経機能や抗がん剤の抗腫瘍効果を減弱させる作用がないかどうかを検討した。
主な結果:マウス(C57Bl/6 mice)を使った実験で、パクリタキセルで誘発される機械的刺激に対する疼痛感受性の亢進はカンナビジオール(2.510mg/体重1kg)の投与によって阻止された。この効果は5HT1A)受容体のアンタゴニスト(拮抗薬、阻害薬)であるWAY100635の同時投与によって減弱したが、カンナビノイド受容体のCB1のアンタゴニスト(SR141716)やCB2のアンタゴニスト(SR144528)では減弱しなかった。カンナビジオールの投与によってマウスの学習機能や認知機能などに低下は認めなかった。培養乳がん細胞を用いた実験では、パクリタキセルとカンナビジオールの併用は、相加あるいは相乗的な抗腫瘍効果の増強を示した。結論:今回の実験結果より、カンナビジオールはパクリタキセルによって引き起こされる神経障害を予防する効果を示し、その作用機序として5-HT1A受容体を介する機序が示唆された。さらに、学習効果や認知機能などの神経系の働きに悪影響は及ぼさず、乳がん細胞に対するパクリタキセルの抗腫瘍効果を減弱させることはなかった。以上のことから、パクリタキセルによる抗がん剤治療にカンナビジオールを併用することは、神経障害の発生予防や軽減において有効で安全な治療法と言える。

 カンナビジオールの抗がん作用については以下のサイトをご参照下さい。

 http://www.f-gtc.or.jp/cannabidiol/CBDoil.html

 (原文)

Br J Pharmacol. 2014 Feb;171(3):636-45. doi: 10.1111/bph.12439.

Cannabidiol inhibits paclitaxel-induced neuropathic pain through 5-HT(1A) receptors without diminishing nervous system function or chemotherapy efficacy.

Abstract

BACKGROUND AND PURPOSE:

Paclitaxel (PAC) is associated with chemotherapy-induced neuropathic pain (CIPN) that can lead to the cessation of treatment in cancer patients even in the absence of alternate therapies. We previously reported that chronic administration of the non-psychoactive cannabinoid cannabidiol (CBD) prevents PAC-induced mechanical and thermal sensitivity in mice. Hence, we sought to determine receptor mechanisms by which CBD inhibits CIPN and whether CBD negatively effects nervous system function or chemotherapy efficacy.

EXPERIMENTAL APPROACH:

The ability of acute CBD pretreatment to prevent PAC-induced mechanical sensitivity was assessed, as was the effect of CBD on place conditioning and on an operant-conditioned learning and memory task. The potential interaction of CBD and PAC on breast cancer cell viability was determined using the MTT assay.

KEY RESULTS:

PAC-induced mechanical sensitivity was prevented by administration of CBD (2.5 - 10mg·kg¹) in female C57Bl/6 mice. This effect was reversed by co-administration of the 5-HT(1A) antagonist WAY 100635, but not the CB antagonist SR141716 or the CB antagonist SR144528. CBD produced no conditioned rewarding effects and did not affect conditioned learning and memory. Also, CBD + PAC combinations produce additive to synergistic inhibition of breast cancer cell viability.

CONCLUSIONS AND IMPLICATIONS:

Our data suggest that CBD is protective against PAC-induced neurotoxicity mediated in part by the 5-HT(1A) receptor system. Furthermore, CBD treatment was devoid of conditioned rewarding effects or cognitive impairment and did not attenuate PAC-induced inhibition of breast cancer cell viability. Hence, adjunct treatment with CBD during PAC chemotherapy may be safe and effective in the prevention or attenuation of CIPN.

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