漢方治療はがん患者の生存率を高める

f-gtc (2018年10月16日 10:23)

漢方治療はがん患者の生存率を高める

台湾におけるがん治療における中医薬(漢方薬)治療の実態に関して多くの報告があります。
以下の論文では漢方治療を受けたがん患者は漢方治療を受けなかったがん患者より生存率が高いことが報告されています。

Use of Complementary Traditional Chinese Medicines by Adult Cancer Patients in Taiwan: A Nationwide Population-Based Study(台湾における成人がん患者による伝統的中医薬の補完的使用:全国民ベースの研究)Integr Cancer Ther. 2018 Jun; 17(2): 531-541.

【要旨】

研究の背景:がん患者の多くは、補完的な代替医療を求めている。台湾の成人がん患者による伝統的な中医薬(漢方薬)の使用を調査した。


方法: 台湾の難治性疾患患者登録データベース(Registry for Catastrophic Illness Patients Database)を調査し、国際疾病分類(第9改正)に基づいて、2001年から2009年までのがんと診断された全ての成人を対象にして、2011年まで追跡調査した。このデータベースにより、中医薬使用者(n=74620)と非使用者(n = 508179)を分類できた。すべての人口統計学的および臨床的なデータが分析された。


結果: 中医薬を使用していないがん患者と比較して、中医薬を使用しているがん患者は、より若く、女性とホワイトカラーの労働者(頭脳労働をする人)が多い傾向にあり、さらに高度に都市化の進んだ地域(highly urbanized areas)に住んでいる人が多かった。
がんの診断を受けてから中医学のクリニックに相談に行くまでの平均間隔は15.3ヶ月であった。
最も多いがんの種類は、中医薬使用者では乳がん(19.4%)であり、中医薬非使用者では肝内胆管がん(13.6%)であった。
中医薬使用者が中医学の診療所を訪れた主な理由は、内分泌系異常、栄養障害および代謝性疾患、免疫障害であった。
中医薬使用者の33.1%が年間に9回以上中医学診療所を訪問し、がんの診断から最初に中医学治療の相談に行くまでの期間の平均は5.14ヶ月であった。
中医学的治療のうち最も多かったのは中医薬(漢方薬)であった。
がん患者が中医学的治療を求めた理由は、不眠、倦怠感・疲労、めまい・頭痛、胃腸障害、筋肉痛・筋膜炎、不安・うつ病であった。
年齢、性別、居住地の都市化、職業、医療期間への訪問回数、および非医療関係のセンターの訪問を調整後の解析で、中医薬非使用者に比べて中医薬使用者の死亡率は低く、その死亡率の調整ハザード比は0.6995%信頼区間 = 0.68-0.70)であった。


結論:本研究では、台湾の成人がん患者における中医薬(漢方薬)使用の概要を提供している。 中医薬の使用は、がんの種類の違いによって様々であった。がん患者を診療する医師は、患者が使用している補完的な中医薬(漢方薬)の使用にもっと注意を払うべきである。 

【解説】

情報技術の進歩により、今やビッグデータの時代と言われています。医療の疫学研究でも医療ビッグデータを利用した研究が増えています。

台湾では、1995年に国民皆保険制度を実現しています。
台湾の医療制度は、「全民健康保険(National Health Insurance」という台湾政府が管理するシステムで、台湾で戸籍を持つ全ての人に対して平等な医療ケアを提供するために作られました。国民全員を加入対象とした完全な社会保険制度で、国民全員が出生した時点で、平等に医療を受ける権利を享受できできます。

健康保険証はICカードのみで、医療事務の電子システム化が進んでおり、オンライン請求率は2006年には99.98%に達しています。

このような状況で、台湾では国民全体の医療情報(年齢、性別、病名、治療内容など)がデータベース化されています。この「全民健康保険研究データベース(National health insurance research database; NHIRD」を使った疫学研究が台湾から数多く発表されています。

がんの場合はNHIRDの中に「難治性疾患患者登録データベース(Registry for Catastrophic Illness Patients Database」というデータベースもあります。

台湾の全民健康保険(National Health Insurance)では、がん患者は西洋医学の標準治療だけでなく、中医学治療(漢方治療)も保険給付され、それらの情報がデータベース化されています。したがって、漢方治療を受けたがん患者と漢方治療を受けなかったがん患者で、生存率や生存期間の比較も可能になっています。

ハザード比(Hazard ratioというのは追跡期間を考慮したリスクの比です。この論文のリスクは死亡率です。

この報告において、漢方薬非使用群に対する漢方薬使用群の死亡率のハザード比が0.69というのは、追跡期間中に漢方薬を服用したがん患者は漢方薬を服用しなかったがん患者に比べて死亡率が31%減少したという意味になります。

95%信頼区間とは,仮に同様な試験を100回した場合に95回はこの値の幅の中に入るという意味です。95%信頼区間 = 0.24-0.45というのは、同様な試験を100回行なえば、95回はハザード比が0.24-0.45の間に入ることを意味します。つまり、漢方薬ががん患者を延命させる可能性は極めて高いという結果です。

漢方薬を使用する人は女性が多く、都市化の進んだ地域に住んでいる人が多いという結果が得られています。

都市の方が漢方薬などの中医学治療を行なっている医療機関が多いというアクセスの良さが理由のようです。田舎では中医学のクリニックが無いということです。

都市化が進んだ地域は、生活環境や医療環境も良いので、それが生存率に影響する可能性があります。また、女性は男性よりも寿命が長いので、女性が多いことが生存率の高さに影響する可能性もあります。

そこで、このような交絡因子(調べようとする因子以外の因子で、病気や死亡の発生に影響を与えるもの)の影響をさける目的で、年齢、性別、居住地の都市化、職業、医療期間への訪問回数、および非医療関係のセンターの訪問を調整後のハザード比を計算しています。

その結果、漢方薬服用はがん患者の死亡率を30%くらい低下させるという結果が得られたということです。

【原文】

Integr Cancer Ther. 2018 Jun;17(2):531-541. doi: 10.1177/1534735417716302. Epub 2017 Jun 30.


Use of Complementary Traditional Chinese Medicines by Adult Cancer Patients in Taiwan: A Nationwide Population-Based Study.

Kuo YT1,2Chang TT1,3Muo CH4Wu MY3Sun MF1,3Yeh CC2,5Yen HR1,3,6.

 

Abstract

BACKGROUND:

Many patients with cancer seek complementary and alternative medicine treatments. We investigated the use of traditional Chinese medicine (TCM) by adult cancer patients in Taiwan.

METHODS:

We reviewed the Registry for Catastrophic Illness Patients Database of Taiwan, and included all adult patients diagnosed cancer, based on the International Classification of Diseases (ninth revision), from 2001 to 2009 and followed until 2011. This database allowed categorization of patients as TCM users (n = 74 620) or non-TCM users (n = 508 179). All demographic and clinical claims data were analyzed.

RESULTS:

Compared with non-TCM users, TCM users were younger and more likely to be female, white-collar workers, and reside in highly urbanized areas. The average interval between cancer diagnosis and TCM consultation was 15.3 months. The most common cancer type was breast cancer in TCM users (19.4%), and intrahepatic bile duct cancer in non-TCM users (13.6%). The major condition for which TCM users visited clinics were endocrine, nutritional and metabolic diseases, and immunity disorders (23.2%). A total of 33.1% of TCM users visited TCM clinics more than 9 times per year and their time from diagnosis to first TCM consultation was 5.14 months. The most common TCM treatment was Chinese herbal medicine. The common diseases for which cancer patients sought TCM treatment were insomnia, malaise and fatigue, dizziness and headache, gastrointestinal disorders, myalgia and fasciitis, anxiety, and depression. Overall, TCM users had a lower adjusted hazard ratio (aHR) for mortality (aHR = 0.69, 95% CI = 0.68-0.70) after adjustment for age, sex, urbanization of residence, occupation, annual medical center visits, and annual non-medical center visits.

CONCLUSIONS:

This study provides an overview of TCM usage among adult cancer patients in Taiwan. TCM use varied among patients with different types of cancer. Physicians caring for cancer patients should pay more attention to their patients' use of complementary TCM.

漢方治療は膵臓がん患者の生存率を高める

f-gtc (2018年10月16日 09:32)

漢方治療は膵臓がん患者の生存率を高める

台湾の医療ビッグデータを利用した疫学研究で、膵臓がん患者で漢方薬(中医薬)を使用した患者は、漢方薬を使用しなかった患者よりも生存率が高いことが示されています。漢方治療の期間が長いほど生存率が高いという用量依存性も示されています。以下のような報告があります。

Complementary Chinese Herbal Medicine Therapy Improves Survival of Patients With Pancreatic Cancer in Taiwan: A Nationwide Population-Based Cohort Study.(台湾において補完的な漢方治療は膵臓がん患者の生存率を高める:全国人口レベルのコホート研究)Integr Cancer Ther. 2018 Jun; 17(2): 411-422. 

【要旨】

背景:膵臓がんは治療が困難ながんであり、発見が遅れることが多く、予後は不良である。一部の患者は伝統的な中国医学の治療を受けている。我々は、台湾の膵臓がん患者における補完的な漢方薬治療の利点を調べることを目指した。

方法:1997年から2010年に台湾難治性疾患患者登録データベース(Taiwanese Registry for Catastrophic Illness Patients Database)に登録された全ての膵臓がん患者を対象とした。年齢、性別、膵臓がんと診断された年を一致させた11マッチング法を用いて、漢方治療を併用した386人と、漢方治療を併用しない386人を比較解析した。死亡リスクの危険率(ハザード比)はCox回帰モデルを用いて比較した。生存期間の差はKaplan-Meier曲線を用いて比較した。

結果:漢方薬の使用、年齢、性別、都市化レベル、他の病気の有無および治療に関して相互に調整されたCoxハザード比モデルによる解析で、漢方治療を受けた患者は死亡リスクのハザード比が低かった(調整ハザード比 = 0.67,95%信頼区間 = 0.56-0.79 漢方療法を90日間以上受けた患者は、漢方治療を受けなかった患者よりも死亡リスクのハザード比が有意に低かった。漢方治療を90180日間受けた群では、調整後ハザード比 = 0.5695%信頼区間 = 0.420.75)で、180日間以上漢方治療を受けた群では ハザード比= 0.3395%信頼区間 = 0.24-0.45)であった。 漢方薬併用群の患者の生存率は高かった。

患者が使用した生薬と漢方方剤で最も頻度が高かったのは、単一の生薬では白花蛇舌草で、漢方処方では香砂六君子湯であった。

結論:補完的な中国薬草療法(漢方治療)は、膵臓がん患者の死亡率を低下させる可能性がある。今後はさらに前向き臨床試験によってこの結果を確認する必要がある。

【解説】
漢方薬(中医薬)治療を受けた期間が長いほど延命効果があるという結果です。
漢方処方では香砂六君子湯(こうしゃりっくんしとう)が多く、単一の生薬では白花蛇舌草の使用頻度が高いという膵臓がんの漢方治療の特徴を明らかにしています。
香砂六君子湯は、胃腸虚弱で消化管に水分が停滞しやすいタイプに用いる六君子湯(人参、白朮、茯苓、大棗、甘草、生姜、半夏、陳皮)に、さらに胃腸の機能を高め、食欲を亢進し、気分の塞さがりを開く働きがある香附子、縮砂、藿香を加えた処方です。六君子湯に抗うつ作用を加えた処方といえます。
香附子・縮砂・藿香は香りが良く、気の巡りを改善し、気うつの症状(気分が沈む、気分が塞がる、意気消沈する精神状態)を改善します。
膵臓がんでは胃腸の働きが低下し、食欲が低下します。さらにうつ症状を呈することが多く経験されます。したがって、進行した膵臓がん患者さんは香砂六君子湯の証が多くなるのかもしれません。
白花蛇舌草は抗がん作用のある生薬です。
白花蛇舌草の煎じ薬は、肝臓の解毒作用を高めて血液循環を促進し、白血球・マクロファージなどの食細胞の機能を著しく高め、リンパ球の数や働きを増して免疫力を高めます。多くのがんに広く使用され、良い治療効果が報告されています。 飲み易く刺激性が少ないので、食欲が低下した進行がんにも適しています。
漢方治療は膵臓がんの抗がん剤治療の副作用軽減と抗腫瘍効果増強に有効です。
その結果、QOL(生活の質)を高め、延命します。

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図:(右)漢方治療は体力・免疫力を増強する効果と直接的な抗腫瘍作用(がん細胞の増殖抑制、アポトーシス誘導など)によって、QOL(生活の質)の改善と延命効果がある。
(左)台湾の医療ビッグデータを利用した疫学研究で、膵臓がん患者で漢方薬(中医薬)を使用した患者は、漢方薬を使用しなかった患者よりも生存率が高いことが示されている。漢方治療の期間が長いほど生存率が高いという用量依存性も示されている。

 

【原文】

Integr Cancer Ther. 2018 Jun;17(2):411-422. doi: 10.1177/1534735417722224. Epub 2017 Aug 3.


Complementary Chinese Herbal Medicine Therapy Improves Survival of Patients With Pancreatic Cancer in Taiwan: A Nationwide Population-Based Cohort Study.

Abstract

BACKGROUND:

Pancreatic cancer is a difficult-to-treat cancer with a late presentation and poor prognosis. Some patients seek traditional Chinese medicine (TCM) consultation. We aimed to investigate the benefits of complementary Chinese herbal medicine (CHM) among patients with pancreatic cancer in Taiwan.

METHODS:

We included all patients with pancreatic cancer who were registered in the Taiwanese Registry for Catastrophic Illness Patients Database between 1997 and 2010. We used 1:1 frequency matching by age, sex, the initial diagnostic year of pancreatic cancer, and index year to enroll 386 CHM users and 386 non-CHM users. A Cox regression model was used to compare the hazard ratios (HRs) of the risk of mortality. The Kaplan-Meier curve was used to compare the difference in survival time.

RESULTS:

According to the Cox hazard ratio model mutually adjusted for CHM use, age, sex, urbanization level, comorbidity, and treatments, we found that CHM users had a lower hazard ratio of mortality risk (adjusted HR = 0.67, 95% CI = 0.56-0.79). Those who received CHM therapy for more than 90 days had significantly lower hazard ratios of mortality risk than non-CHM users (90- to 180-day group: adjusted HR = 0.56, 95% CI = 0.42-0.75; >180-day group: HR = 0.33, 95% CI = 0.24-0.45). The survival probability was higher for patients in the CHM group. Bai-hua-she-she-cao (Herba Oldenlandiae; Hedyotis diffusa Spreng) and Xiang-sha-liu-jun-zi-tang (Costus and Chinese Amomum Combination) were the most commonly used single herb and Chinese herbal formula, respectively.

CONCLUSIONS:

Complementary Chinese herbal therapy might be associated with reduced mortality among patients with pancreatic cancer. Further prospective clinical trial is warranted.

 

ジクロロ酢酸とCOX-2阻害剤のセレコックス(celecoxib)の併用は相乗的な抗腫瘍効果を示す

f-gtc (2018年7月25日 10:30)

ジクロロ酢酸とCOX-2阻害剤のセレコックス(celecoxib)の併用は相乗的な抗腫瘍効果を示す

Inhibition of COX2 enhances the chemosensitivity of dichloroacetate in cervical cancer cells(シクロオキシゲナーゼ2の阻害は子宮頚がん細胞におけるジクロロ酢酸の感受性を増強する)Oncotarget. 2017 Aug 1; 8(31): 51748-51757.

【要旨】
ミトコンドリア機能を高めるジクロロ酢酸は、子宮頚がんを含む多くの悪性腫瘍の治療において、抗がん剤感受性を高める増感剤として有望な可能性を示している。しかし、子宮頚がんに対するジクロロ酢酸単独の効果については不明である。
さらに、以前の報告は、シクロオキシゲナーゼ-2COX2)発現の増加が、化学療法抵抗性および子宮頚がんの予後不良と関連することを実証している。しかし、COX2が子宮頚がん細胞におけるジクロロ酢酸の感受性に影響を与えるかどうかは依然として不明である。
この研究では、子宮頚がん細胞がジクロロ酢酸に対して感受性が無いことがわかった。さらに、ジクロロ酢酸が子宮頚がん細胞のCOX-2の発現を亢進し、子宮頸がん細胞におけるジクロロ酢酸の化学感受性を妨げていることを初めて明らかにした。
メカニズムに関する研究は、ジクロロ酢酸がRNA binding protein quakingQKI)のレベルを低下させ、COX2 mRNAの分解を抑制してCOX2タンパク質の増加を引き起こすことを示した。
COX2阻害剤のセレコキシブの併用は、インビトロおよびインビボの両方の実験系でジクロロ酢酸に対する子宮頚がん細胞の感受性を高め、子宮頸がん細胞の増殖を抑制した。
これらの結果は、COX2がジクロロ酢酸の新規な抵抗因子であり、セレコキシブとジクロロ酢酸との組み合わせが子宮頚がんの治療に有益であり得ることを示している

【解説】
RNA binding protein quakingQKI)はRNA結合タンパク質であり、mRNA前駆体のスプライシング、mRNAの輸送、安定性、翻訳、miRNAのプロセシング、環状RNAの形成などに関与しています。

ジクロロ酢酸は子宮頚がん細胞にアポトーシスを誘導できますが、ジクロロ酢酸はCOX2の発現を増加し、COX-2は子宮頚がん細胞のジクロロ酢酸に対する感受性を低下させます。ジクロロ酢酸はCOX2mRNAの安定性を亢進して、COX2たんぱく質を増やすからです。

そのため、COX2阻害剤のcelecoxibは、ジクロロ酢酸の抗腫瘍効果を高めることができるのです。 

つまり、子宮頚がんを含めて、抗がん剤に対するがん細胞の感受性を高める目的でジクロロ酢酸を併用するときにはシクロオキシゲナーゼ-2COX-2)阻害剤のcelecoxib(商品名:セレコックス)を併用するのが良いと言えます。

原文:

Oncotarget. 2017 Jun 16;8(31):51748-51757. doi: 10.18632/oncotarget.18518. eCollection 2017 Aug 1.

Inhibition of COX2 enhances the chemosensitivity of dichloroacetate in cervical cancer cells.

Abstract

Dichloroacetate (DCA), a traditional mitochondria-targeting agent, has shown promising prospect as a sensitizer in fighting against malignancies including cervical cancer. But it is unclear about the effect of DCA alone on cervical tumor. Moreover, previous reports have demonstrated that the increased cyclooxygenase-2 (COX2) expression is associated with chemoresistance and poor prognosis of cervical cancer. However, it is still unknown whether COX2 can affect the sensitivity of DCA in cervical cancer cells. In this study, we found that cervical cancer cells were insensitive to DCA. Furthermore, we for the first time revealed that DCA could upregulate COX2 which impeded the chemosensitivity of DCA in cervical cancer cells. Mechanistic study showed that DCA reduced the level of RNA binding protein quaking (QKI), leading to the decay suppression of COX2 mRNA and the subsequent elevation of COX2 protein. Inhibition of COX2 using celecoxib could sensitize DCA in repressing the growth of cervical cancer cells both in vitro and in vivo. These results indicate that COX2 is a novel resistance factor of DCA, and combination of celecoxib with DCA may be beneficial to the treatment of cervical cancer.

ビタミンDは、トリプル・ネガティブ乳がんのがん幹細胞を阻害し、分化を誘導する。

f-gtc (2018年4月15日 10:21)

ビタミンDは、トリプル・ネガティブ乳がんのがん幹細胞を阻害し、分化を誘導する。

 

Vitamin D compounds inhibit cancer stem-like cells and induce differentiation in triple negative breast cancer.(ビタミンD化合物は、トリプル・ネガティブ乳がんにおいて

がん幹細胞様細胞を阻害し、分化を誘導する。)J Steroid Biochem Mol Biol. 2017 Oct;173:122-129.

 

【要旨】

トリプル・ネガティブ乳がんは、ホルモン受容体を持たず、悪性度が高く、再発率が高いという特徴を有しており、現在利用可能な標的療法に対する反応性が最も低い乳がんサブタイプの1つである。

したがって、早い段階からの乳がんの発生予防は、トリプル・ネガティブ乳がんの進行を遅延させる上で重要な役割を果たす可能性がある。

がん幹細胞は、腫瘍の進行、治療抵抗性および転移の原因と考えられるがん細胞である。

我々は以前に、ジェミニ・ビタミンD類似体BXL0124Gemini vitamin D analog BXL0124)を含むビタミンD化合物が、生体内(in vivo)で上皮内腺管がんの進行を抑制し、MCF10DCIS乳がん細胞のマンモスフェア培養においてがん幹細胞様細胞を阻害することを示した。

本研究では、トリプル・ネガティブ乳がんにおける乳がん幹細胞様細胞の増殖と分化に対するビタミンD化合物の作用を検討した。

がん幹細胞様の性質を有する乳がん細胞を増やすマンモスフェア培養(Mammosphere cultures)を用いて、トリプル・ネガティブ乳がん細胞株SUM159のがん幹細胞マーカーに対する 1α,25(OH)2ビタミンD3 およびBXL0124の効果を評価した。

ビタミンD化合物は、対照群と比較して、マンモスフェア培養の一次、二次、および三次継代におけるマンモスフィア(がん細胞塊)形成効率を有意に低下させた。 

1α,25(OH)2ビタミンD3 およびBXL0124で処理されたマンモスフェアにおいて、がん幹細胞様表現型および多能性の主要マーカーが分析された。その結果、OCT4CD44およびLAMA5レベルの減少を認めた。

ビタミンD化合物はまた、乳がん幹細胞の維持に関与するNotchシグナル伝達分子、Notch1Notch2Notch3JAG1JAG2HES1およびNFκBの発現レベルを低下した。

さらに、ビタミンD化合物は、筋上皮細胞の分化マーカーであるサイトケラチン14および平滑筋アクチンの発現を亢進し、腺管細胞のマーカーであるサイトケラチン18の発現を抑制した。

基底様乳がんに関連するバイオマーカーであるサイトケラチン5は、ビタミンD化合物によって発現レベルが有意に抑制された。
これらの結果は、ビタミンD化合物が、がん幹細胞および分化を制御することによってトリプル・ネガティブ乳がんを阻害する潜在的な予防剤として役立つことを示唆している

 

 

ビタミンDの血中濃度が高いほど、乳がんの生存率が良くなることが大規模疫学研究で明らかになっています。トリプル・ネガティブ乳がんでは特に血中ビタミンD濃度が低いというデータが報告されています。

Triple negative breast cancer patients presenting with low serum vitamin D levels: a case series(血清ビタミンD濃度が低値を示すトリプル・ネガティブ乳がん:ケースシリーズ)Cases J. 2009; 2: 8390.


一般にがん患者は血清中のビタミンD濃度(貯蔵型の25-ヒドロキシビタミンDで測定)が低値を示すことが明らかになっています。この論文では15例のトリプル・ネガティブ乳がんを対象に25-ヒドロキシビタミンDの血清中の濃度を測定し、健常人や他のサブタイプの乳がん患者と比較しています。
解析の結果、トリプル・ネガティブ乳がん患者では特にビタミンDの血清中濃度が低いという結果を示しています。トリプル・ネガティブ乳がん患者は積極的にビタミンDのサプリメントを補充することが有用と言えます。
再発予防や進行乳がんでビタミンD3のサプリメントの大量摂取が代替医療ではポピュラーです。以下のような症例報告があります。 

 

Effects of Pre-surgical Vitamin D Supplementation and Ketogenic Diet in a Patient with Recurrent Breast Cancer.(再発乳がん患者における術前のビタミンD補充とケトン食の効果)Anticancer Res. 2015 Oct;35(10):5525-32.


この患者の術前の生検による病理検査では、プロゲステロン受容体(PgR)の発現は少なく(10%, score 2+)、増殖活性を示す核タンパク質Ki67は強陽性(30%)でした。

診断から手術まで3週間あり、その間の治療の計画が無かったので、患者は自分の判断で、ビタミンD3(1日10,000 IU)と厳格なケトン食を実施しました。



乳房切除を行われ、切除組織の病理検査でHER2の発現は全く認めず(陰性、score 0)で、PgRの発現は亢進していました(20%)。ERKi67の陽性度は変化はありませんでした。


この症例は、高用量のビタミンD3とケトン食の併用は、乳がん細胞のHER2発現を抑制し、プロゲステロン受容体の発現を亢進するなど、乳がん細胞の生物学的性状に影響を及ぼす可能性を示唆しています。
この論文は1例の症例報告ですので、高用量のビタミンD3とケトン食の併用が乳がんに有効かどうかのエビデンスは低いのですが、高用量のビタミンD3とケトン食はそれぞれ乳がんに対する効果が報告されているので、この2つの治療の併用を試してみる価値はあるかもしれません。
また、ビタミンD3とメトホルミンの相乗効果は乳がんや前立腺がんや大腸がんなどで報告されています。メトホルミンはAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)を活性化してAkt/mTORシグナル伝達系を阻害し、がん細胞の増殖を抑制します。
ビタミンD3はメトホルミンの抗腫瘍効果を高めます。次のような報告があります。


Synergistic antitumor activity of vitamin D3 combined with metformin in human breast carcinoma MDA-MB-231 cells involves mTOR related signaling pathways.
(ヒト乳がん細胞MDA-MB-231細胞におけるビタミンD3とメトホルミンの併用による相乗的な抗腫瘍効果はmTOR関連のシグナル伝達系が関与する)Pharmazie. 2015 Feb;70(2):117-22.

メトホルミンは2型糖尿病の治療に使用されていますが、最近の多くの研究によって、メトホルミンとビタミンDは多くのがん細胞に対して抗腫瘍効果を示すことが示されています。

この研究では、ヒト乳がん細胞株MDA-MB-231を用いて、ビタミンD3とメトホルミンの併用はアポトーシス誘導において相乗効果があることを報告しています。その抗腫瘍効果の発現にはmTOR関連のシグナル伝達系が関与することを報告しています。つまり、ビタミンD3とメトホルミンはmTOR(哺乳類ラパマイシン標的蛋白質)の活性を阻害することによってアポトーシスを誘導することを示しています。
前立腺がんや大腸がんでも同様の効果が報告されています。メトホルミンはAMP依存性プロテインキナーゼ(AMPK)を活性化し、活性化してAMPKmTORを抑制することによって、がん細胞の増殖を抑制します。 以下のような報告もあります。

 

Combined use of vitamin D3 and metformin exhibits synergistic chemopreventive effects on colorectal neoplasia in rats and mice. (ビタミンD3とメトホルミンの併用はラットとマウスの結腸直腸がんの発生に対して相乗的な化学予防効果を示す)Cancer Prev Res (Phila). 2015 Feb;8(2):139-48.

この研究はラットとマウスを用いた大腸発がん実験での検討です。メトホルミンは化学発がんモデルで大腸がんの発生を抑制する作用があります。ビタミンD3はメトホルミンの発がん抑制作用を増強するという結果です。
そのメカニズムとして、mTOR活性の抑制を認めています。さらに、ビタミンD3にはビタミンD受容体/β-カテニンのシグナル伝達系に作用してβ-カテニンの働きを抑制することによってc-MycやサイクリンD1の発現を抑制する作用も指摘しています。
ビタミンD3とメトホルミンの併用は、相乗効果によって発がん抑制や抗腫瘍効果を高めることができるという結論です。
ケトン食もAMPKを活性化し、Akt/mTORシグナル伝達系を抑制します。したがって、ケトン食を実践しているとき、ビタミンD3とメトホルミンを併用すると、抗腫瘍効果を高めることができます進行した乳がんの代替医療として、高用量(1日400010000国際単位)のビタミンD3とメトホルミン(1日10001500mg程度)とケトン食の組合せは、相乗効果が期待できると考えられます。ビタミンD3もメトホルミンも安価ですので、試してみる価値は高いと言えます。この組合せは乳がんだけでなく、大腸がんや膵臓がんや肺がんなど他のがんにも効果が期待できます。 

 

原文:

Vitamin D compounds inhibit cancer stem-like cells and induce differentiation in triple negative breast cancer.J Steroid Biochem Mol Biol. 2017 Oct;173:122-129.

 

Abstract

Triple-negative breast cancer is one of the least responsive breast cancer subtypes to available targeted therapies due to the absence of hormonal receptors, aggressive phenotypes, and the high rate of relapse.
Early breast cancer prevention may therefore play an important role in delaying the progression of triple-negative breast cancer.
Cancer stem cells are a subset of cancer cells that are thought to be responsible for tumor progression, treatment resistance, and metastasis.
We have previously shown that vitamin D compounds, including a Gemini vitamin D analog BXL0124, suppress progression of ductal carcinoma in situ in vivo and inhibit cancer stem-like cells in MCF10DCIS mammosphere cultures.
In the present study, the effects of vitamin D compounds in regulating breast cancer stem-like cells and differentiation in triple-negative breast cancer were assessed. 
Mammosphere cultures, which enriches for breast cancer cells with stem-like properties, were used to assess the effects of 1α,25(OH)2D3 and BXL0124 on cancer stem cell markers in the triple-negative breast cancer cell line, SUM159.
Vitamin D compounds significantly reduced the mammosphere forming efficiency in primary, secondary and tertiary passages of mammospheres compared to control groups.
Key markers of cancer stem-like phenotype and pluripotency were analyzed in mammospheres treated with 1α,25(OH)2D3 and BXL0124.
As a result, OCT4, CD44 and LAMA5 levels were decreased.
The vitamin D compounds also down-regulated the Notch signaling molecules, Notch1, Notch2, Notch3, JAG1, JAG2, HES1 and NFκB, which are involved in breast cancer stem cell maintenance.
In addition, the vitamin D compounds up-regulated myoepithelial differentiating markers, cytokeratin 14 and smooth muscle actin, and down-regulated the luminal marker, cytokeratin 18. Cytokeratin 5, a biomarker associated with basal-like breast cancer, was found to be significantly down-regulated by the vitamin D compounds.
These results suggest that vitamin D compounds may serve as potential preventive agents to inhibit triple negative breast cancer by regulating cancer stem cells and differentiation.

 

ジクロロ酢酸はパクリタキセル耐性の肺がん細胞をパクリタキセル感受性に変換する

f-gtc (2018年2月26日 17:29)

ジクロロ酢酸はパクリタキセル耐性の肺がん細胞をパクリタキセル感受性に変換する 

Suppression of pyruvate dehydrogenase kinase-2 re-sensitizes paclitaxel-resistant human lung cancer cells to paclitaxel.(ピルビン酸脱水素酵素キナーゼ-2の抑制は、パクリタキセル耐性ヒト肺がん細胞をパクリタキセル感受性にする)Oncotarget. 2017 Apr 10;8(32):52642-52650.

【要旨】

治療開始後の初期の臨床的効果は顕著であっても、パクリタキセルで治療された大部分の肺がん患者は、最終的にはパクリタキセルに耐性になる。ピルビン酸脱水素酵素キナーゼ-2PDK2)は、解糖および酸化的リン酸化の重要な調節因子であり、その発現は様々な腫瘍において増加する。本研究では、生化学および同位体追跡法を用いて、肺がん細胞におけるパクリタキセル耐性の機序におけるPDK2の役割を調べた。
パクリタキセルに感受性の肺がん細胞に比べて、パクリタキセル耐性肺がん細胞ではPDK2の発現亢進が認められた。

siRNAを用いたPDK2遺伝子の発現抑制は、パクリタキセル耐性肺がん細胞のパクリタキセルに対する感受性を増加させた。PDK2発現抑制によるパクリタキセル耐性肺がん細胞への作用は、酸化的リン酸化の亢進よりも解糖の減少として認められた。

PDK2の特異的阻害剤のジクロロ酢酸とパクリタキセルを併用すると、パクリタキセル耐性肺がん細胞の生存率に相乗的な阻害効果を示した。
これらの結果は、パクリタキセルによるPDK2の発現誘導が、肺がん細胞のパクリタキセル耐性の獲得の重要な機序として働くことを示している。これらの結果は、パクリタキセルに耐性を獲得した肺がん患者の治療において、PDK2の阻害が有効である可能性を示している。


ジクロロ酢酸はがん細胞の抗がん剤を高めます。抗がん剤治療中にジクロロ酢酸を服用すると、進行がんでもがんを根治できる可能性が高まります。

ジクロロ酢酸については以下のサイトをご参照下さい。

http://www.1ginzaclinic.com/DCA/DCA.html

http://blog.goo.ne.jp/kfukuda_ginzaclinic/e/550e16665a723f2d6df89f9ba8c94a32

 http://www.f-gtc.or.jp/blog/dca.jpg

図:低酸素誘導因子-1HIF-1)はピルビン酸脱水素酵素キナーゼの発現を誘導して(①)、ピルビン酸脱水素酵素(ピルビン酸をアセチルCoAに変換する)の働きを阻害するので(②)、ミトコンドリアでの酸化的リン酸化によるATP産生が抑制されている。ジクロロ酢酸ナトリウムはピルビン酸脱水素酵素キナーゼの活性を阻害することによってピルビン酸脱水素酵素の活性を高め(③)、R体αリポ酸とビタミンB1はピルビン酸脱水素酵素の補因子として働き(④)、ピルビン酸脱水素酵素の活性を高めてピルビン酸からアセチルCoAの変換を促進し、TCA回路での代謝と酸化的リン酸化を亢進する(⑤)。ミトコンドリアでの酸化的リン酸化が亢進すると、活性酸素の産生が増え、乳酸産生が減少し、アポトーシスが起こりやすくなって、抗がん剤感受性が亢進する(⑥)。

 

原文:

Oncotarget. 2017 Apr 10;8(32):52642-52650.

Suppression of pyruvate dehydrogenase kinase-2 re-sensitizes paclitaxel-resistant human lung cancer cells to paclitaxel.

Abstract

Despite impressive initial clinical responses, the majority of lung cancer patients treated with paclitaxel eventually develop resistance to the drug. Pyruvate dehydrogenase kinase-2 (PDK2) is a key regulator of glycolysis and oxidative phosphorylation, and its expression is increased in a variety of tumors. In this study, the role of PDK2 in mediating paclitaxel resistance in lung cancer cells was investigated using biochemical and isotopic tracing methods. Increased expression of PDK2 was observed in paclitaxel-resistant cells ascompared totheir parental cells. Down-regulation of PDK2 usingsiRNA increased the sensitivity to paclitaxel of resistant lung cancer cells. Targeting paclitaxel-resistant cells throughPDK2 knockdown was associated with reduced glycolysis rather than increased oxidative phosphorylation (OXPHOS). Moreover, combining paclitaxel withthe specific PDK2 inhibitor dichloroacetate had a synergistic inhibitory effect on the viability of paclitaxel-resistant lung cancer cells. These results indicate that paclitaxel-induced expression of PDK2 serves as an important mechanism for acquired paclitaxel resistance of lung cancer cells. They also highlight the importance of PDK2 for potential therapeutic interventions in patients who have developed a resistance to paclitaxel.

 

ジクロロ酢酸とメトホルミンはがん細胞の増殖を相乗的に抑制する

f-gtc (2018年2月26日 17:00)

ジクロロ酢酸とメトホルミンはがん細胞の増殖を相乗的に抑制する

Dichloroacetate and metformin synergistically suppress the growth of ovarian cancer cells.(ジクロロ酢酸とメトホルミンは卵巣がん細胞の増殖を相乗的に抑制する)Oncotarget. 2016 Sep 13;7(37):59458-59470.

【要旨】

ジクロロ酢酸とメトホルミンはいずれも、がん細胞の代謝を制御することによって有望な抗腫瘍効果を示している。しかしながら、ジクロロ酢酸は細胞保護的なオートファジーを誘導し、メトホルミンは乳酸蓄積を引き起こす作用によって、その抗がん作用の可能性を制限している。

したがって、それぞれの欠点を克服することによって、それぞれの治療効果を高めることができる。

本研究では、ジクロロ酢酸とメトホルミンが、卵巣がん細胞の増殖抑制とアポトーシス誘導において相乗的に効果を増強することを明らかにした。

興味深いことに、ジクロロ酢酸によって誘導されるMcl-1タンパクと細胞保護的オートファジーをメトホルミンは劇的に減弱し、メトホルミンによって引き起こされる過剰な乳酸蓄積とグルコース消費をジクロロ酢酸が著しく減弱した。

ヌードマウスを使った移植腫瘍の実験では、ジクロロ酢酸とメトホルミンは異種移植卵巣腫瘍の増殖を相乗的に抑制した。これらの結果は、ジクロロ酢酸とメトホルミンの併用は、卵巣がんの治療のための新しい戦略を開発する道を開くかもしれない。

 

メトホルミン(metformin)は、世界中で1億人以上の2型糖尿病患者に使われているビグアナイド系経口血糖降下剤です。糖尿病だけでなくがんの予防や治療の分野でも注目されており、がんの発生を予防する効果やがん細胞の抗がん剤感受性を高める効果が報告されています。

メトホルミンはミトコンドリアの呼吸酵素複合体1(電子伝達複合体1)を阻害してATPの産生を減らし、そのためにAMP:ATP比が上昇するためにAMPKが活性化されます。つまり、メトホルミンはミトコンドリア毒であり、この毒を適量使うと血糖を低下させることができるというメカニズムです。

さて、その作用機序から、ミトコンドリアの呼吸酵素複合体をメトホルミンで阻害した状態でジクロロ酢酸でがん細胞のミトコンドリアの代謝を亢進すれば、がん細胞に比較的特異的に酸化ストレスを高めることができます。

上記のようなジクロロ酢酸とメトホルミンの相乗的な抗腫瘍効果については複数の論文報告があります。

体内で産生された乳酸は肝臓で糖新生に使われます。これをコリ回路と言います。メトホルミンは肝臓における糖新生を阻害するので、体内で乳酸蓄積を引き起こして乳酸アシドーシスの副作用が起こすリスクがあります。

がん組織では乳酸産生が亢進していますが、メトホルミンだけでは乳酸アシドーシスを引き起こすリスクを高めます。

ジクロロ酢酸は乳酸アシドーシスの治療に使われています。ミトコンドリアでの代謝を活性化して乳酸産生を抑えるためです。

したがって、がん治療の目的でメトホルミンを使用するとき、ジクロロ酢酸の併用は、抗腫瘍効果増強と副作用軽減の目的で、合理的な組合せと言えます。

 

原文:

Oncotarget. 2016 Sep 13; 7(37): 59458-59470.

Dichloroacetate and metformin synergistically suppress the growth of ovarian cancer cells

Abstract

Both dichloroacetate (DCA) and metformin (Met) have shown promising antitumor efficacy by regulating cancer cell metabolism. However, the DCA-mediated protective autophagy and Met-induced lactate accumulation limit their tumor-killing potential respectively. So overcoming the corresponding shortages will improve their therapeutic effects. In the present study, we found that DCA and Met synergistically inhibited the growth and enhanced the apoptosis of ovarian cancer cells. Interestingly, we for the first time revealed that Met sensitized DCA via dramatically attenuating DCA-induced Mcl-1 protein and protective autophagy, while DCA sensitized Met through markedly alleviating Met-induced excessive lactate accumulation and glucose consumption. The in vivo experiments in nude mice also showed that DCA and Met synergistically suppressed the growth of xenograft ovarian tumors. These results may pave a way for developing novel strategies for the treatment of ovarian cancer based on the combined use of DCA and Met.

 

カンナビジオールはトリプル・ネガティブ乳がんの増殖・転移を抑制する

f-gtc (2017年10月 1日 14:34)

カンナビジオールはトリプル・ネガティブ乳がんの増殖・転移を抑制する

Modulation of the tumor microenvironment and inhibition of EGF/EGFR pathway: Novel antitumor mechanisms of Cannabidiol in breast cancer(腫瘍の微小環境の制御とEGF/EGFR経路の阻害:乳がんに対するカンナビジオールの新規の抗腫瘍効果のメカニズム)Mol Oncol. 2015 Apr; 9(4): 906-919.


【要旨】

精神作用のないカンナビノイドの一種であるカンナビジオールの抗腫瘍効果に関しては十分に検討されておらず、特にトリプルネガティブ乳がんに対する作用についてはほとんど検討されていない。

この研究では、トリプルネガティブ乳がん細胞を含めて高度に悪性度の高い乳がん細胞株を用いて、カンナビジオールの抗腫瘍活性を検討した。

我々はこの研究で初めて、乳がん細胞における上皮成長因子(EGF)誘導性の増殖と移動をカンナビジオールが有意に阻害することを明らかにした。

カンナビジオールは、EGFRERKAKTNF-κBシグナル伝達系のEGF誘導性の活性化を阻害し、MMP2MMP9EGF誘導性の分泌を阻害した。

さらに、マウスを使った複数の実験系で、カンナビジオールは腫瘍の増大と転移を阻害した。

分子メカニズムの解析の結果、カンナビジオールは原発巣と肺転移巣における腫瘍関連マクロファージの集積を有意に阻害した。

培養細胞を使ったin vitroの実験では、培養がん細胞にカンナビジオールを投与した使用後の培養液はマクロファージ細胞RAW264.7細胞の移動を抑制した。
カンナビジオール投与培養がん細胞の使用後の培養液は、マクロファージの集積と活性化に重要なサイトカインのGM-CSFCCL3の濃度の低下を認めた。

以上の結果より、カンナビジオールはEGF/EGFRシグナル伝達系の阻害と腫瘍微小環境の制御という新規なメカニズムによって乳がん細胞の増殖と転移を阻害することを初めて明らかにした。

これらの結果は、治療法が限られ、予後が不良なトリプル・ネガティブ乳がんを含めて、悪性度の高い乳がんサブタイプの増殖と転移を阻止する新規の治療法としてカンナビジオールが使用できる可能性を示している

カンナビジオールの抗がん作用については以下のサイトをご参照下さい。

 http://www.f-gtc.or.jp/cannabidiol/CBDoil.html

【原文】

Mol Oncol. 2015 Apr; 9(4): 906-919.

Modulation of the tumor microenvironment and inhibition of EGF/EGFR pathway: Novel antitumor mechanisms of Cannabidiol in breast cancer

 

Abstract

The antitumor role and mechanisms of Cannabidiol (CBD), a nonpsychotropic cannabinoid compound, are not well studied especially in triplenegative breast cancer (TNBC). In the present study, we analyzed CBD's antitumorigenic activity against highly aggressive breast cancer cell lines including TNBC subtype. We show here for the first timethat CBD significantly inhibits epidermal growth factor (EGF)induced proliferation and chemotaxis of breast cancer cells. Further studies revealed that CBD inhibits EGFinduced activation of EGFR, ERK, AKT and NFkB signaling pathways as well as MMP2 and MMP9 secretion. In addition, we demonstrated that CBD inhibits tumor growth and metastasis in different mouse model systems. Analysis of molecular mechanisms revealed that CBD significantly inhibits the recruitment of tumorassociated macrophages in primary tumor stroma and secondary lung metastases. Similarly, our in vitro studies showed a significant reduction in the number of migrated RAW 264.7 cells towards the conditioned medium of CBDtreated cancer cells. The conditioned medium of CBDtreated cancer cells also showed lower levels of GMCSF and CCL3 cytokines which are important for macrophage recruitment and activation. In summary, our study shows for the first timethat CBD inhibits breast cancer growth and metastasis through novel mechanisms by inhibiting EGF/EGFR signaling and modulating the tumor microenvironment. These results also indicate that CBD can be used as a novel therapeutic option to inhibit growth and metastasis of highly aggressive breast cancer subtypes including TNBC, which currently have limited therapeutic options and are associated with poor prognosis and low survival rates.

 

 

カンナビジオールはドキソルビシン誘発性心筋障害を防ぐ

f-gtc (2017年10月 1日 09:37)

カンナビジオールはドキソルビシン誘発性心筋障害を防ぐ

Cannabidiol Protects against Doxorubicin-Induced Cardiomyopathy by Modulating Mitochondrial Function and Biogenesis(カンナビジオールはミトコンドリアの機能と新生を制御することによってドキソルビシン誘発性心筋障害を防ぐ)Mol Med. 2015; 21(1): 38-45.

【要旨】
ドキソルビシンは広く使用されている抗腫瘍活性の高い抗がん剤であるが、その用量依存的な心臓毒性によって臨床使用に限界がある。
ドキソルビシンの心臓毒性には活性酸素や一酸化窒素による酸化ストレスの亢進や、心筋細胞や血管内皮細胞のミトコンドリア機能の障害や細胞死が関与している。
カンナビジオールは大麻に含まれる精神活性を持たない成分であり、有害作用は少なく、抗酸化作用や抗炎症作用を有し、さらに最近は抗腫瘍活性も報告されている。ドキソルビシン誘発性の心筋障害のマウスの実験モデルを用いて、カンナビジオールの効果を検討した。
ドキソルビシン誘発性心筋障害は心筋細胞のダメージのレベル(血清中のクレアチニンキナーゼと乳酸脱水素酵素の値)、活性酸素や一酸化窒素による細胞傷害のレベル(細胞内のグルタチオン量、グルタチオンペルオキシダーゼ1活性、脂質過酸化、3-ニトロチロシン形成、誘導性一酸化窒素合成酵素mRNAレベル)、心筋細胞死(アポトーシス、ポリADPリボースポリメラーゼ1依存性)、心筋機能(心拍出機能と左室内径短縮率)で評価した。
ドキソルビシンはミトコンドリア新生を抑制し、ミトコンドリア機能を低下させ(呼吸酵素複合体IIIの活性低下)、心筋細胞における脱共役たんぱく23uncoupling protein 2 and 3)とmedium-chain acyl-CoA dehydrogenase mRNAの発現を低下させた。
カンナビジオールの投与は、これらのドキソルビシン誘発性の心筋機能の障害を改善し、活性酸素や一酸化窒素による細胞ストレスと細胞死を軽減した。
カンナビジオールは障害されたミトコンドリア機能とミトコンドリア新生を改善した。
これらの実験結果は、ドキソルビシンによる心筋障害に対する新たな治療法をしてカンナビジオールの有用性を示唆しており、ミトコンドリアの機能や新生に対するカンナビジオールの作用は、他の多くの組織障害の実験モデルでのカンナビジオールの作用機序を説明できるかもしれない。

 

解説:

カンナビジオールは、活性酸素や一酸化窒素による傷害を軽減する作用、ミトコンドリアの機能や新生を亢進する作用、炎症や細胞死を軽減する作用などのメカニズムで、ドキソルビシン誘発性の心筋傷害や心不全を予防する効果が期待できるという報告です。

この論文では、マウスの実験でカンナビジオールは1日1回、10mg/kgを腹腔内投与しています。人間に換算すれば12mg/kg程度ですが、口腔内からの吸収率を20%くらいに考えると、ヒトでの口腔内(舌下投与)の1日量は510mg/kg程度が基準になると思います。
(動物の標準代謝量は体重の3/4乗(正確には0.751乗)に比例するという法則があり、一般にマウスの体重当たりのエネルギー消費量や薬物の代謝速度は人間の約7倍と言われています。)

他の論文で、カンナビジオールはシスプラチンによる腎臓障害を軽減することが報告されています。さらに、多くのがん細胞に対して抗腫瘍活性を発揮することが報告されています。

カンナビジオールの安全性は極めて高いので、抗がん剤治療の副作用軽減と抗腫瘍効果増強にカンナビジオールの併用は有効だと言えます。

 

カンナビジオールの詳細は以下のサイトをご参照下さい。

http://www.f-gtc.or.jp/cannabidiol/CBDoil.html

 

【原文】

Mol Med. 2015 Jan 6;21:38-45. doi: 10.2119/molmed.2014.00261.

Cannabidiol Protects against Doxorubicin-Induced Cardiomyopathy by Modulating Mitochondrial Function and Biogenesis.

Hao E1,2, Mukhopadhyay P1, Cao Z1, Erdélyi K1, Holovac E1, Liaudet L3, Lee WS1,4, Haskó G5, Mechoulam R6, Pacher P1.


Abstract

Doxorubicin (DOX) is a widely used, potent chemotherapeutic agent; however, its clinical application is limited because of its dose-dependent cardiotoxicity. DOX's cardiotoxicity involves increased oxidative/nitrative stress, impaired mitochondrial function in cardiomyocytes/endothelial cells and cell death. Cannabidiol (CBD) is a nonpsychotropic constituent of marijuana, which is well tolerated in humans, with antioxidant, antiinflammatory and recently discovered antitumor properties. We aimed to explore the effects of CBD in a well-established mouse model of DOX-induced cardiomyopathy. DOX-induced cardiomyopathy was characterized by increased myocardial injury (elevated serum creatine kinase and lactate dehydrogenase levels), myocardial oxidative and nitrative stress (decreased total glutathione content and glutathione peroxidase 1 activity, increased lipid peroxidation, 3-nitrotyrosine formation and expression of inducible nitric oxide synthase mRNA), myocardial cell death (apoptotic and poly[ADP]-ribose polymerase 1 [PARP]-dependent) and cardiac dysfunction (decline in ejection fraction and left ventricular fractional shortening). DOX also impaired myocardial mitochondrial biogenesis (decreased mitochondrial copy number, mRNA expression of peroxisome proliferator-activated receptor γ coactivator 1-alpha, peroxisome proliferator-activated receptor alpha, estrogen-related receptor alpha), reduced mitochondrial function (attenuated complex I and II activities) and decreased myocardial expression of uncoupling protein 2 and 3 and medium-chain acyl-CoA dehydrogenase mRNA. Treatment with CBD markedly improved DOX-induced cardiac dysfunction, oxidative/nitrative stress and cell death. CBD also enhanced the DOX-induced impaired cardiac mitochondrial function and biogenesis. These data suggest that CBD may represent a novel cardioprotective strategy against DOX-induced cardiotoxicity, and the above-described effects on mitochondrial function and biogenesis may contribute to its beneficial properties described in numerous other models of tissue injury.

トリプルネガティブ乳がんにメトホルミンと2-デオキシ-D-グルコースの併用が有効

f-gtc (2017年10月 1日 07:15)

トリプルネガティブ乳がんにメトホルミンと2-デオキシ-D-グルコースの併用が有効

Co-treatment of breast cancer cells with pharmacologic doses of 2-deoxy-D-glucose and metformin: Starving tumors.(薬理学的用量の2-デオキシ-D-グルコースとメトホルミンによる乳がん細胞の併用投与:がん細胞の飢餓)Oncol Rep. 2017 Apr;37(4):2418-2424.

【要旨】
がん細胞のエネルギー産生の特徴は好気性解糖である。従って、解糖系の阻害はがん細胞に選択的な治療法となる。
解糖系を阻害する2-デオキシ-D-グルコース(2DGは、多くのがん細胞においてアポトーシス(細胞死)を誘導することが示されている。さらに、糖尿病治療薬のメトホルミンの抗腫瘍活性が実証されている。
本研究では、2DGとメトホルミンの薬理学的用量の組み合わせが抗腫瘍効果を高めるかどうかを確認することを目的とした。
トリプルネガティブ乳がん(TNBC)細胞のMDA-MB-231およびHCC1806細胞を用いて、2DGとメトホルミンのそれぞれ単独の投与と併用投与の場合の細胞生存率を測定した。
アポトーシスの誘導は、ミトコンドリア膜電位の低下およびPARP(ポリADPリボースポリメラーゼ)の切断の測定によって定量した。
2DG
またはメトホルミンによる乳がん細胞の治療は、細胞生存率の有意な低下およびアポトーシスの増加をもたらした。
2DG
とメトホルミンを同時に投与すると、それぞれ単一で投与した場合と比較して、生存率が有意に低下した。この生存率の低下は、アポトーシスの誘導によるものであった。
さらに、アポトーシス誘導に関しては、単剤で投与した場合と比較して、併用投与はより強い誘導効果を示した。
ヒト乳がん細胞の解糖系亢進は治療のターゲットになりうる。解糖系阻害剤の2DGおよび糖尿病治療薬のメトホルミンの併用投与は副作用が少なく、乳がんに対する適切な治療法になるかもしれない。

解説:
トリプルネガティブ乳がんに対してメトホルミンと2-デオキシ-D-グルコースの併用が抗腫瘍効果を高めることは他にも多数の論文があり、最近増えています。がん細胞では解糖系が亢進しているので、メトホルミンだけでは抗腫瘍効果が十分に得られないことが分ってきたからです。
メトホルミンをがん治療に使うときには、がん細胞の解糖系を阻害する方法を併用することが重要と言えます。
トリプルネガティブ乳がん細胞では、特に解糖系が亢進していることが報告されています。したがって、トリプルネガティブ乳がん細胞ではメトホルミンと2-デオキシ-D-グルコースの併用は有用です。

 

トリプルネガティブ乳がん細胞の補完・代替医療については以下のサイトで解説しています。

http://www.f-gtc.or.jp/TNBC/Triple_Negative_Breast_Cancer.html

 

【原文】

Oncol Rep. 2017 Apr;37(4):2418-2424. doi: 10.3892/or.2017.5491. Epub 2017 Mar 6.

Co-treatment of breast cancer cells with pharmacologic doses of 2-deoxy-D-glucose and metformin: Starving tumors.

Wokoun U1, Hellriegel M1, Emons G1, Gründker C1.

 

Abstract

A characteristic of tumor cells is the increased aerobic glycolysis for energy production. Thus, inhibition of glycolysis represents a selective therapeutic option. It has been shown that glycolysis inhibitor 2-deoxy-D-glucose (2DG) induces apoptotic cell death in different tumor entities. In addition, the antitumor activity of the anti-diabetic drug metformin has been demonstrated. In the present study, we aimed to ascertain whether the combination of pharmacologic doses of 2DG with metformin increases the antitumor efficacy. Cell viability of MDA-MB-231 and HCC1806 triple-negative breast cancer (TNBC) cells treated without or with 2DG or with metformin alone or with the combination of both agents was measured using Alamar Blue assay. Induction of apoptosis was quantified by measurement of the loss of mitochondrial membrane potential and cleavage of PARP. Treatment of breast cancer cells with glycolysis inhibitor 2DG or with the anti-diabetic drug metformin resulted in a significant decrease in cell viability and an increase in apoptosis. Treatment with 2DG in combination with metformin resulted in significantly reduced viability compared with the single agent treatments. The observed reduction in viability was due to induction of apoptosis. In addition, in regards to apoptosis induction a stronger effect in the case of co-treatment compared with single agent treatments was observed. The glycolytic phenotype of human breast cancer cells can be targeted for therapeutic intervention. Co-treatment with doses of the glycolysis inhibitor 2DG and anti-diabetic drug metformin is tolerable in humans and may be a suitable therapy for human breast cancers.

アロマターゼ阻害剤によるホルモン療法中のシンバスタチン使用は乳がんの再発予防効果を高める

f-gtc (2017年7月 2日 05:04)

アロマターゼ阻害剤によるホルモン療法中のシンバスタチン使用は乳がんの再発予防効果を高める


閉経後ホルモン受容体陽性乳がんに対しタモキシフェン、タモキシフェンからレトロゾールへのスイッチ、レトロゾールの治療法を比較する第III相臨床試験(BIG198)が米国で行われています。

このBIG1-98試験において、コレステロール値,高脂血症治療薬内服の有無,試験治療中の高脂血症治療薬の内服開始の有無と再発との関係が検討されています。以下のような論文が報告されています。

Cholesterol, Cholesterol-Lowering Medication Use, and Breast Cancer Outcome in the BIG 1-98 Study.BIG 198研究におけるコレステロール,コレステロールを低下させる薬剤の使用,および,乳がんの転帰)J Clin Oncol. 2017 Apr 10;35(11):1179-1188.

【要旨】

目的:コレステロールを低下させる薬剤(Cholesterol-lowering medicationCLM)が乳がんの再発を防ぐ作用があることが報告されている。
CML
(コレステロールを低下させる薬)がエストロゲン作用のあるコレステロール代謝産物の27-ヒドロキシコレステロール(27-hydroxycholesterol)の血中レベルを低下させることによってエストロゲン受容体を介するシグナルを減弱する可能性がある。
また、血清中のコレステロール値や高コレステロール血症自体に対するホルモン療法の作用が、アロマターゼ阻害剤の抗腫瘍効果を妨げている可能性もある。

患者と方法:Breast International GroupBIG)が、ランダム化第III相二重盲検試験(BIG 198)を実施した。このBIG1-98試験では、19982003年にかけて診断された早期ステージのホルモン受容体陽性の浸潤性乳がんのある閉経後女性8,010名が参加した。

血清中の総コレステロール値とCLM使用の有無を、調査開始時および6ヶ月ごとに5.5年間測定しホルモン療法中のCLM開始と転帰との関係を調査した。評価項目は、無病生存期間、乳がん無再発期間、無遠隔転生存期間であった。

結果:コレステロール値はタモキシフェン療法中に減少した。

内分泌療法中にCLMを開始した患者789名の内訳は,レトロゾールのみ318名,タモキシフェン+レトロゾール189名,レトロゾール+タモキシフェン176名,レトロゾールのみ106名であった。

内分泌療法中のCLM開始は、無病生存期間(HR 0.7995 CI 0.660.95P0.01)、乳がん無再発期間(HR 0.7695 CI 0.600.97P0.02)、無遠隔転移期間(HR 0.7495 CI 0.560.97P0.03)の改善と関係があった

結論:ホルモン受容体陽性の早期のステージの乳がんのホルモン療法中のコレステロールを低下する治療薬の併用は、乳がんの再発を予防する効果が期待できる。この観察研究の結果を確認するために前向きのランダム化試験の実施が必要である。

この研究は、スタチンに限定したものでなく、その他の高脂血症治療薬も含まれています。コレステロールの代謝物である27hydroxycholestrolはエストロゲン受容体のリガンドとして作用し,腫瘍増殖に関与している考えられているので、コレステロールを低下させること自体に乳がん再発抑制効果があります。

HMGCoA還元酵素は乳がんに発現し,予後因子であることが同定されています。したがって、HMGCoA還元酵素阻害剤のスタチン(特に脂溶性のシンバスタチン)は、乳がん細胞の増殖を抑制する効果があります。

この研究は観察研究であるため,今後前向き試験で真に高脂血症治療薬が乳がんの予後を改善するかを検証する必要があります。しかし、ホルモン受容体陽性乳がんの術後補助内分泌療法中の患者において,高脂血症の治療が予後を改善する可能性が高いので、ホルモン療法中にコレステロールが高くなった場合は、高脂血症の治療を積極的に受けた方が良いというエビデンスはあると言えます。特に、シンバスタチンによる治療が推奨されます。

一般に,アロマターゼ阻害薬は高脂血症となることから,高脂血症治療薬によるメリットが高いと想定されます。

一方,タモキシフェンはコレストレール値を下げるため,高脂血症の効果はさほどでないと考えられます。

つまり、アロマターゼ阻害剤によるホルモン療法中で、コレステロール値が高い場合は、シンバスタチンを使うエビデンスは高いと言えます。

 

【原文】 

J Clin Oncol. 2017 Apr 10;35(11):1179-1188. doi: 10.1200/JCO.2016.70.3116. Epub 2017 Feb 13.

Cholesterol, Cholesterol-Lowering Medication Use, and Breast Cancer Outcome in the BIG 1-98 Study.

Borgquist S1, Giobbie-Hurder A1, Ahern TP1, Garber JE1, Colleoni M1, Láng I1, Debled M1, Ejlertsen B1, von Moos R1, Smith I1, Coates AS1, Goldhirsch A1, Rabaglio M1, Price KN1, Gelber RD1, Regan MM1, Thürlimann B1.

 

Abstract

Purpose Cholesterol-lowering medication (CLM) has been reported to have a role in preventing breast cancer recurrence. CLM may attenuate signaling through the estrogen receptor by reducing levels of the estrogenic cholesterol metabolite 27-hydroxycholesterol. The impact of endocrine treatment on cholesterol levels and hypercholesterolemia per se may counteract the intended effect of aromatase inhibitors.

Patients and Methods The Breast International Group (BIG) conducted a randomized, phase III, double-blind trial, BIG 1-98, which enrolled 8,010 postmenopausal women with early-stage, hormone receptor-positive invasive breast cancer from 1998 to 2003. Systemic levels of total cholesterol and use of CLM were measured at study entry and every 6 months up to 5.5 years. Cumulative incidence functions were used to describe the initiation of CLM in the presence of competing risks. Marginal structural Cox proportional hazards modeling investigated the relationships between initiation of CLM during endocrine therapy and outcome. Three time-to-event end points were considered: disease-free-survival, breast cancer-free interval, and distant recurrence-free interval. Results Cholesterol levels were reduced during tamoxifen therapy. Of 789 patients who initiated CLM during endocrine therapy, the majority came from the letrozole monotherapy arm (n = 318), followed by sequential tamoxifen-letrozole (n = 189), letrozole-tamoxifen (n = 176), and tamoxifen monotherapy (n = 106). Initiation of CLM during endocrine therapy was related to improved disease-free-survival (hazard ratio [HR], 0.79; 95% CI, 0.66 to 0.95; P = .01), breast cancer-free interval (HR, 0.76; 95% CI, 0.60 to 0.97; P = .02), and distant recurrence-free interval (HR, 0.74; 95% CI, 0.56 to 0.97; P = .03). Conclusion Cholesterol-lowering medication during adjuvant endocrine therapy may have a role in preventing breast cancer recurrence in hormone receptor-positive early-stage breast cancer. We recommend that these observational results be addressed in prospective randomized trials.

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診療案内

科学的根拠」と「費用対効果」を重視し、経済的負担が少なく、科学的根拠のあるがんの補完・代替医療(未認可医薬品やサプリメント)を実践しています。

診察は 予約制 ですので、診察ご希望の場合は予め電話(03-5550-3552)でご連絡下さい。全て自由診療で保険は適用されませんのでご了承下さい。

以下の項目を専門に診療致しております。

ご予約・お問い合わせ

電話:03-5550-3552
(月~金曜 午前9時から午後5時30分)

FAX:03-3541-7577(24時間受信)

e-mail:info@f-gtc.or.jp

診療時間

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アクセス

〒104-0061 東京都中央区銀座5-14-9石和田ビル5階

東銀座駅(営団日比谷線/都営浅草線)4または6番出口より徒歩2分

銀座駅(銀座線/日比谷線/丸の内線)5番出口より徒歩5分