ビタミンDは、トリプル・ネガティブ乳がんのがん幹細胞を阻害し、分化を誘導する。

f-gtc (2018年4月15日 10:21)

ビタミンDは、トリプル・ネガティブ乳がんのがん幹細胞を阻害し、分化を誘導する。

 

Vitamin D compounds inhibit cancer stem-like cells and induce differentiation in triple negative breast cancer.(ビタミンD化合物は、トリプル・ネガティブ乳がんにおいて

がん幹細胞様細胞を阻害し、分化を誘導する。)J Steroid Biochem Mol Biol. 2017 Oct;173:122-129.

 

【要旨】

トリプル・ネガティブ乳がんは、ホルモン受容体を持たず、悪性度が高く、再発率が高いという特徴を有しており、現在利用可能な標的療法に対する反応性が最も低い乳がんサブタイプの1つである。

したがって、早い段階からの乳がんの発生予防は、トリプル・ネガティブ乳がんの進行を遅延させる上で重要な役割を果たす可能性がある。

がん幹細胞は、腫瘍の進行、治療抵抗性および転移の原因と考えられるがん細胞である。

我々は以前に、ジェミニ・ビタミンD類似体BXL0124Gemini vitamin D analog BXL0124)を含むビタミンD化合物が、生体内(in vivo)で上皮内腺管がんの進行を抑制し、MCF10DCIS乳がん細胞のマンモスフェア培養においてがん幹細胞様細胞を阻害することを示した。

本研究では、トリプル・ネガティブ乳がんにおける乳がん幹細胞様細胞の増殖と分化に対するビタミンD化合物の作用を検討した。

がん幹細胞様の性質を有する乳がん細胞を増やすマンモスフェア培養(Mammosphere cultures)を用いて、トリプル・ネガティブ乳がん細胞株SUM159のがん幹細胞マーカーに対する 1α,25(OH)2ビタミンD3 およびBXL0124の効果を評価した。

ビタミンD化合物は、対照群と比較して、マンモスフェア培養の一次、二次、および三次継代におけるマンモスフィア(がん細胞塊)形成効率を有意に低下させた。 

1α,25(OH)2ビタミンD3 およびBXL0124で処理されたマンモスフェアにおいて、がん幹細胞様表現型および多能性の主要マーカーが分析された。その結果、OCT4CD44およびLAMA5レベルの減少を認めた。

ビタミンD化合物はまた、乳がん幹細胞の維持に関与するNotchシグナル伝達分子、Notch1Notch2Notch3JAG1JAG2HES1およびNFκBの発現レベルを低下した。

さらに、ビタミンD化合物は、筋上皮細胞の分化マーカーであるサイトケラチン14および平滑筋アクチンの発現を亢進し、腺管細胞のマーカーであるサイトケラチン18の発現を抑制した。

基底様乳がんに関連するバイオマーカーであるサイトケラチン5は、ビタミンD化合物によって発現レベルが有意に抑制された。
これらの結果は、ビタミンD化合物が、がん幹細胞および分化を制御することによってトリプル・ネガティブ乳がんを阻害する潜在的な予防剤として役立つことを示唆している

 

 

ビタミンDの血中濃度が高いほど、乳がんの生存率が良くなることが大規模疫学研究で明らかになっています。トリプル・ネガティブ乳がんでは特に血中ビタミンD濃度が低いというデータが報告されています。

Triple negative breast cancer patients presenting with low serum vitamin D levels: a case series(血清ビタミンD濃度が低値を示すトリプル・ネガティブ乳がん:ケースシリーズ)Cases J. 2009; 2: 8390.


一般にがん患者は血清中のビタミンD濃度(貯蔵型の25-ヒドロキシビタミンDで測定)が低値を示すことが明らかになっています。この論文では15例のトリプル・ネガティブ乳がんを対象に25-ヒドロキシビタミンDの血清中の濃度を測定し、健常人や他のサブタイプの乳がん患者と比較しています。
解析の結果、トリプル・ネガティブ乳がん患者では特にビタミンDの血清中濃度が低いという結果を示しています。トリプル・ネガティブ乳がん患者は積極的にビタミンDのサプリメントを補充することが有用と言えます。
再発予防や進行乳がんでビタミンD3のサプリメントの大量摂取が代替医療ではポピュラーです。以下のような症例報告があります。 

 

Effects of Pre-surgical Vitamin D Supplementation and Ketogenic Diet in a Patient with Recurrent Breast Cancer.(再発乳がん患者における術前のビタミンD補充とケトン食の効果)Anticancer Res. 2015 Oct;35(10):5525-32.


この患者の術前の生検による病理検査では、プロゲステロン受容体(PgR)の発現は少なく(10%, score 2+)、増殖活性を示す核タンパク質Ki67は強陽性(30%)でした。

診断から手術まで3週間あり、その間の治療の計画が無かったので、患者は自分の判断で、ビタミンD3(1日10,000 IU)と厳格なケトン食を実施しました。



乳房切除を行われ、切除組織の病理検査でHER2の発現は全く認めず(陰性、score 0)で、PgRの発現は亢進していました(20%)。ERKi67の陽性度は変化はありませんでした。


この症例は、高用量のビタミンD3とケトン食の併用は、乳がん細胞のHER2発現を抑制し、プロゲステロン受容体の発現を亢進するなど、乳がん細胞の生物学的性状に影響を及ぼす可能性を示唆しています。
この論文は1例の症例報告ですので、高用量のビタミンD3とケトン食の併用が乳がんに有効かどうかのエビデンスは低いのですが、高用量のビタミンD3とケトン食はそれぞれ乳がんに対する効果が報告されているので、この2つの治療の併用を試してみる価値はあるかもしれません。
また、ビタミンD3とメトホルミンの相乗効果は乳がんや前立腺がんや大腸がんなどで報告されています。メトホルミンはAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)を活性化してAkt/mTORシグナル伝達系を阻害し、がん細胞の増殖を抑制します。
ビタミンD3はメトホルミンの抗腫瘍効果を高めます。次のような報告があります。


Synergistic antitumor activity of vitamin D3 combined with metformin in human breast carcinoma MDA-MB-231 cells involves mTOR related signaling pathways.
(ヒト乳がん細胞MDA-MB-231細胞におけるビタミンD3とメトホルミンの併用による相乗的な抗腫瘍効果はmTOR関連のシグナル伝達系が関与する)Pharmazie. 2015 Feb;70(2):117-22.

メトホルミンは2型糖尿病の治療に使用されていますが、最近の多くの研究によって、メトホルミンとビタミンDは多くのがん細胞に対して抗腫瘍効果を示すことが示されています。

この研究では、ヒト乳がん細胞株MDA-MB-231を用いて、ビタミンD3とメトホルミンの併用はアポトーシス誘導において相乗効果があることを報告しています。その抗腫瘍効果の発現にはmTOR関連のシグナル伝達系が関与することを報告しています。つまり、ビタミンD3とメトホルミンはmTOR(哺乳類ラパマイシン標的蛋白質)の活性を阻害することによってアポトーシスを誘導することを示しています。
前立腺がんや大腸がんでも同様の効果が報告されています。メトホルミンはAMP依存性プロテインキナーゼ(AMPK)を活性化し、活性化してAMPKmTORを抑制することによって、がん細胞の増殖を抑制します。 以下のような報告もあります。

 

Combined use of vitamin D3 and metformin exhibits synergistic chemopreventive effects on colorectal neoplasia in rats and mice. (ビタミンD3とメトホルミンの併用はラットとマウスの結腸直腸がんの発生に対して相乗的な化学予防効果を示す)Cancer Prev Res (Phila). 2015 Feb;8(2):139-48.

この研究はラットとマウスを用いた大腸発がん実験での検討です。メトホルミンは化学発がんモデルで大腸がんの発生を抑制する作用があります。ビタミンD3はメトホルミンの発がん抑制作用を増強するという結果です。
そのメカニズムとして、mTOR活性の抑制を認めています。さらに、ビタミンD3にはビタミンD受容体/β-カテニンのシグナル伝達系に作用してβ-カテニンの働きを抑制することによってc-MycやサイクリンD1の発現を抑制する作用も指摘しています。
ビタミンD3とメトホルミンの併用は、相乗効果によって発がん抑制や抗腫瘍効果を高めることができるという結論です。
ケトン食もAMPKを活性化し、Akt/mTORシグナル伝達系を抑制します。したがって、ケトン食を実践しているとき、ビタミンD3とメトホルミンを併用すると、抗腫瘍効果を高めることができます進行した乳がんの代替医療として、高用量(1日400010000国際単位)のビタミンD3とメトホルミン(1日10001500mg程度)とケトン食の組合せは、相乗効果が期待できると考えられます。ビタミンD3もメトホルミンも安価ですので、試してみる価値は高いと言えます。この組合せは乳がんだけでなく、大腸がんや膵臓がんや肺がんなど他のがんにも効果が期待できます。 

 

原文:

Vitamin D compounds inhibit cancer stem-like cells and induce differentiation in triple negative breast cancer.J Steroid Biochem Mol Biol. 2017 Oct;173:122-129.

 

Abstract

Triple-negative breast cancer is one of the least responsive breast cancer subtypes to available targeted therapies due to the absence of hormonal receptors, aggressive phenotypes, and the high rate of relapse.
Early breast cancer prevention may therefore play an important role in delaying the progression of triple-negative breast cancer.
Cancer stem cells are a subset of cancer cells that are thought to be responsible for tumor progression, treatment resistance, and metastasis.
We have previously shown that vitamin D compounds, including a Gemini vitamin D analog BXL0124, suppress progression of ductal carcinoma in situ in vivo and inhibit cancer stem-like cells in MCF10DCIS mammosphere cultures.
In the present study, the effects of vitamin D compounds in regulating breast cancer stem-like cells and differentiation in triple-negative breast cancer were assessed. 
Mammosphere cultures, which enriches for breast cancer cells with stem-like properties, were used to assess the effects of 1α,25(OH)2D3 and BXL0124 on cancer stem cell markers in the triple-negative breast cancer cell line, SUM159.
Vitamin D compounds significantly reduced the mammosphere forming efficiency in primary, secondary and tertiary passages of mammospheres compared to control groups.
Key markers of cancer stem-like phenotype and pluripotency were analyzed in mammospheres treated with 1α,25(OH)2D3 and BXL0124.
As a result, OCT4, CD44 and LAMA5 levels were decreased.
The vitamin D compounds also down-regulated the Notch signaling molecules, Notch1, Notch2, Notch3, JAG1, JAG2, HES1 and NFκB, which are involved in breast cancer stem cell maintenance.
In addition, the vitamin D compounds up-regulated myoepithelial differentiating markers, cytokeratin 14 and smooth muscle actin, and down-regulated the luminal marker, cytokeratin 18. Cytokeratin 5, a biomarker associated with basal-like breast cancer, was found to be significantly down-regulated by the vitamin D compounds.
These results suggest that vitamin D compounds may serve as potential preventive agents to inhibit triple negative breast cancer by regulating cancer stem cells and differentiation.

 

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