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アロマターゼ阻害剤によるホルモン療法中のシンバスタチン使用は乳がんの再発予防効果を高める

f-gtc (2017年7月 2日 05:04)

アロマターゼ阻害剤によるホルモン療法中のシンバスタチン使用は乳がんの再発予防効果を高める


閉経後ホルモン受容体陽性乳がんに対しタモキシフェン、タモキシフェンからレトロゾールへのスイッチ、レトロゾールの治療法を比較する第III相臨床試験(BIG198)が米国で行われています。

このBIG1-98試験において、コレステロール値,高脂血症治療薬内服の有無,試験治療中の高脂血症治療薬の内服開始の有無と再発との関係が検討されています。以下のような論文が報告されています。

Cholesterol, Cholesterol-Lowering Medication Use, and Breast Cancer Outcome in the BIG 1-98 Study.BIG 198研究におけるコレステロール,コレステロールを低下させる薬剤の使用,および,乳がんの転帰)J Clin Oncol. 2017 Apr 10;35(11):1179-1188.

【要旨】

目的:コレステロールを低下させる薬剤(Cholesterol-lowering medicationCLM)が乳がんの再発を防ぐ作用があることが報告されている。
CML
(コレステロールを低下させる薬)がエストロゲン作用のあるコレステロール代謝産物の27-ヒドロキシコレステロール(27-hydroxycholesterol)の血中レベルを低下させることによってエストロゲン受容体を介するシグナルを減弱する可能性がある。
また、血清中のコレステロール値や高コレステロール血症自体に対するホルモン療法の作用が、アロマターゼ阻害剤の抗腫瘍効果を妨げている可能性もある。

患者と方法:Breast International GroupBIG)が、ランダム化第III相二重盲検試験(BIG 198)を実施した。このBIG1-98試験では、19982003年にかけて診断された早期ステージのホルモン受容体陽性の浸潤性乳がんのある閉経後女性8,010名が参加した。

血清中の総コレステロール値とCLM使用の有無を、調査開始時および6ヶ月ごとに5.5年間測定しホルモン療法中のCLM開始と転帰との関係を調査した。評価項目は、無病生存期間、乳がん無再発期間、無遠隔転生存期間であった。

結果:コレステロール値はタモキシフェン療法中に減少した。

内分泌療法中にCLMを開始した患者789名の内訳は,レトロゾールのみ318名,タモキシフェン+レトロゾール189名,レトロゾール+タモキシフェン176名,レトロゾールのみ106名であった。

内分泌療法中のCLM開始は、無病生存期間(HR 0.7995 CI 0.660.95P0.01)、乳がん無再発期間(HR 0.7695 CI 0.600.97P0.02)、無遠隔転移期間(HR 0.7495 CI 0.560.97P0.03)の改善と関係があった

結論:ホルモン受容体陽性の早期のステージの乳がんのホルモン療法中のコレステロールを低下する治療薬の併用は、乳がんの再発を予防する効果が期待できる。この観察研究の結果を確認するために前向きのランダム化試験の実施が必要である。

この研究は、スタチンに限定したものでなく、その他の高脂血症治療薬も含まれています。コレステロールの代謝物である27hydroxycholestrolはエストロゲン受容体のリガンドとして作用し,腫瘍増殖に関与している考えられているので、コレステロールを低下させること自体に乳がん再発抑制効果があります。

HMGCoA還元酵素は乳がんに発現し,予後因子であることが同定されています。したがって、HMGCoA還元酵素阻害剤のスタチン(特に脂溶性のシンバスタチン)は、乳がん細胞の増殖を抑制する効果があります。

この研究は観察研究であるため,今後前向き試験で真に高脂血症治療薬が乳がんの予後を改善するかを検証する必要があります。しかし、ホルモン受容体陽性乳がんの術後補助内分泌療法中の患者において,高脂血症の治療が予後を改善する可能性が高いので、ホルモン療法中にコレステロールが高くなった場合は、高脂血症の治療を積極的に受けた方が良いというエビデンスはあると言えます。特に、シンバスタチンによる治療が推奨されます。

一般に,アロマターゼ阻害薬は高脂血症となることから,高脂血症治療薬によるメリットが高いと想定されます。

一方,タモキシフェンはコレストレール値を下げるため,高脂血症の効果はさほどでないと考えられます。

つまり、アロマターゼ阻害剤によるホルモン療法中で、コレステロール値が高い場合は、シンバスタチンを使うエビデンスは高いと言えます。

 

【原文】 

J Clin Oncol. 2017 Apr 10;35(11):1179-1188. doi: 10.1200/JCO.2016.70.3116. Epub 2017 Feb 13.

Cholesterol, Cholesterol-Lowering Medication Use, and Breast Cancer Outcome in the BIG 1-98 Study.

Borgquist S1, Giobbie-Hurder A1, Ahern TP1, Garber JE1, Colleoni M1, Láng I1, Debled M1, Ejlertsen B1, von Moos R1, Smith I1, Coates AS1, Goldhirsch A1, Rabaglio M1, Price KN1, Gelber RD1, Regan MM1, Thürlimann B1.

 

Abstract

Purpose Cholesterol-lowering medication (CLM) has been reported to have a role in preventing breast cancer recurrence. CLM may attenuate signaling through the estrogen receptor by reducing levels of the estrogenic cholesterol metabolite 27-hydroxycholesterol. The impact of endocrine treatment on cholesterol levels and hypercholesterolemia per se may counteract the intended effect of aromatase inhibitors.

Patients and Methods The Breast International Group (BIG) conducted a randomized, phase III, double-blind trial, BIG 1-98, which enrolled 8,010 postmenopausal women with early-stage, hormone receptor-positive invasive breast cancer from 1998 to 2003. Systemic levels of total cholesterol and use of CLM were measured at study entry and every 6 months up to 5.5 years. Cumulative incidence functions were used to describe the initiation of CLM in the presence of competing risks. Marginal structural Cox proportional hazards modeling investigated the relationships between initiation of CLM during endocrine therapy and outcome. Three time-to-event end points were considered: disease-free-survival, breast cancer-free interval, and distant recurrence-free interval. Results Cholesterol levels were reduced during tamoxifen therapy. Of 789 patients who initiated CLM during endocrine therapy, the majority came from the letrozole monotherapy arm (n = 318), followed by sequential tamoxifen-letrozole (n = 189), letrozole-tamoxifen (n = 176), and tamoxifen monotherapy (n = 106). Initiation of CLM during endocrine therapy was related to improved disease-free-survival (hazard ratio [HR], 0.79; 95% CI, 0.66 to 0.95; P = .01), breast cancer-free interval (HR, 0.76; 95% CI, 0.60 to 0.97; P = .02), and distant recurrence-free interval (HR, 0.74; 95% CI, 0.56 to 0.97; P = .03). Conclusion Cholesterol-lowering medication during adjuvant endocrine therapy may have a role in preventing breast cancer recurrence in hormone receptor-positive early-stage breast cancer. We recommend that these observational results be addressed in prospective randomized trials.

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