2018年2月アーカイブ

ジクロロ酢酸はパクリタキセル耐性の肺がん細胞をパクリタキセル感受性に変換する

f-gtc (2018年2月26日 17:29)

ジクロロ酢酸はパクリタキセル耐性の肺がん細胞をパクリタキセル感受性に変換する 

Suppression of pyruvate dehydrogenase kinase-2 re-sensitizes paclitaxel-resistant human lung cancer cells to paclitaxel.(ピルビン酸脱水素酵素キナーゼ-2の抑制は、パクリタキセル耐性ヒト肺がん細胞をパクリタキセル感受性にする)Oncotarget. 2017 Apr 10;8(32):52642-52650.

【要旨】

治療開始後の初期の臨床的効果は顕著であっても、パクリタキセルで治療された大部分の肺がん患者は、最終的にはパクリタキセルに耐性になる。ピルビン酸脱水素酵素キナーゼ-2PDK2)は、解糖および酸化的リン酸化の重要な調節因子であり、その発現は様々な腫瘍において増加する。本研究では、生化学および同位体追跡法を用いて、肺がん細胞におけるパクリタキセル耐性の機序におけるPDK2の役割を調べた。
パクリタキセルに感受性の肺がん細胞に比べて、パクリタキセル耐性肺がん細胞ではPDK2の発現亢進が認められた。

siRNAを用いたPDK2遺伝子の発現抑制は、パクリタキセル耐性肺がん細胞のパクリタキセルに対する感受性を増加させた。PDK2発現抑制によるパクリタキセル耐性肺がん細胞への作用は、酸化的リン酸化の亢進よりも解糖の減少として認められた。

PDK2の特異的阻害剤のジクロロ酢酸とパクリタキセルを併用すると、パクリタキセル耐性肺がん細胞の生存率に相乗的な阻害効果を示した。
これらの結果は、パクリタキセルによるPDK2の発現誘導が、肺がん細胞のパクリタキセル耐性の獲得の重要な機序として働くことを示している。これらの結果は、パクリタキセルに耐性を獲得した肺がん患者の治療において、PDK2の阻害が有効である可能性を示している。


ジクロロ酢酸はがん細胞の抗がん剤を高めます。抗がん剤治療中にジクロロ酢酸を服用すると、進行がんでもがんを根治できる可能性が高まります。

ジクロロ酢酸については以下のサイトをご参照下さい。

http://www.1ginzaclinic.com/DCA/DCA.html

http://blog.goo.ne.jp/kfukuda_ginzaclinic/e/550e16665a723f2d6df89f9ba8c94a32

 http://www.f-gtc.or.jp/blog/dca.jpg

図:低酸素誘導因子-1HIF-1)はピルビン酸脱水素酵素キナーゼの発現を誘導して(①)、ピルビン酸脱水素酵素(ピルビン酸をアセチルCoAに変換する)の働きを阻害するので(②)、ミトコンドリアでの酸化的リン酸化によるATP産生が抑制されている。ジクロロ酢酸ナトリウムはピルビン酸脱水素酵素キナーゼの活性を阻害することによってピルビン酸脱水素酵素の活性を高め(③)、R体αリポ酸とビタミンB1はピルビン酸脱水素酵素の補因子として働き(④)、ピルビン酸脱水素酵素の活性を高めてピルビン酸からアセチルCoAの変換を促進し、TCA回路での代謝と酸化的リン酸化を亢進する(⑤)。ミトコンドリアでの酸化的リン酸化が亢進すると、活性酸素の産生が増え、乳酸産生が減少し、アポトーシスが起こりやすくなって、抗がん剤感受性が亢進する(⑥)。

 

原文:

Oncotarget. 2017 Apr 10;8(32):52642-52650.

Suppression of pyruvate dehydrogenase kinase-2 re-sensitizes paclitaxel-resistant human lung cancer cells to paclitaxel.

Abstract

Despite impressive initial clinical responses, the majority of lung cancer patients treated with paclitaxel eventually develop resistance to the drug. Pyruvate dehydrogenase kinase-2 (PDK2) is a key regulator of glycolysis and oxidative phosphorylation, and its expression is increased in a variety of tumors. In this study, the role of PDK2 in mediating paclitaxel resistance in lung cancer cells was investigated using biochemical and isotopic tracing methods. Increased expression of PDK2 was observed in paclitaxel-resistant cells ascompared totheir parental cells. Down-regulation of PDK2 usingsiRNA increased the sensitivity to paclitaxel of resistant lung cancer cells. Targeting paclitaxel-resistant cells throughPDK2 knockdown was associated with reduced glycolysis rather than increased oxidative phosphorylation (OXPHOS). Moreover, combining paclitaxel withthe specific PDK2 inhibitor dichloroacetate had a synergistic inhibitory effect on the viability of paclitaxel-resistant lung cancer cells. These results indicate that paclitaxel-induced expression of PDK2 serves as an important mechanism for acquired paclitaxel resistance of lung cancer cells. They also highlight the importance of PDK2 for potential therapeutic interventions in patients who have developed a resistance to paclitaxel.

 

ジクロロ酢酸とメトホルミンはがん細胞の増殖を相乗的に抑制する

f-gtc (2018年2月26日 17:00)

ジクロロ酢酸とメトホルミンはがん細胞の増殖を相乗的に抑制する

Dichloroacetate and metformin synergistically suppress the growth of ovarian cancer cells.(ジクロロ酢酸とメトホルミンは卵巣がん細胞の増殖を相乗的に抑制する)Oncotarget. 2016 Sep 13;7(37):59458-59470.

【要旨】

ジクロロ酢酸とメトホルミンはいずれも、がん細胞の代謝を制御することによって有望な抗腫瘍効果を示している。しかしながら、ジクロロ酢酸は細胞保護的なオートファジーを誘導し、メトホルミンは乳酸蓄積を引き起こす作用によって、その抗がん作用の可能性を制限している。

したがって、それぞれの欠点を克服することによって、それぞれの治療効果を高めることができる。

本研究では、ジクロロ酢酸とメトホルミンが、卵巣がん細胞の増殖抑制とアポトーシス誘導において相乗的に効果を増強することを明らかにした。

興味深いことに、ジクロロ酢酸によって誘導されるMcl-1タンパクと細胞保護的オートファジーをメトホルミンは劇的に減弱し、メトホルミンによって引き起こされる過剰な乳酸蓄積とグルコース消費をジクロロ酢酸が著しく減弱した。

ヌードマウスを使った移植腫瘍の実験では、ジクロロ酢酸とメトホルミンは異種移植卵巣腫瘍の増殖を相乗的に抑制した。これらの結果は、ジクロロ酢酸とメトホルミンの併用は、卵巣がんの治療のための新しい戦略を開発する道を開くかもしれない。

 

メトホルミン(metformin)は、世界中で1億人以上の2型糖尿病患者に使われているビグアナイド系経口血糖降下剤です。糖尿病だけでなくがんの予防や治療の分野でも注目されており、がんの発生を予防する効果やがん細胞の抗がん剤感受性を高める効果が報告されています。

メトホルミンはミトコンドリアの呼吸酵素複合体1(電子伝達複合体1)を阻害してATPの産生を減らし、そのためにAMP:ATP比が上昇するためにAMPKが活性化されます。つまり、メトホルミンはミトコンドリア毒であり、この毒を適量使うと血糖を低下させることができるというメカニズムです。

さて、その作用機序から、ミトコンドリアの呼吸酵素複合体をメトホルミンで阻害した状態でジクロロ酢酸でがん細胞のミトコンドリアの代謝を亢進すれば、がん細胞に比較的特異的に酸化ストレスを高めることができます。

上記のようなジクロロ酢酸とメトホルミンの相乗的な抗腫瘍効果については複数の論文報告があります。

体内で産生された乳酸は肝臓で糖新生に使われます。これをコリ回路と言います。メトホルミンは肝臓における糖新生を阻害するので、体内で乳酸蓄積を引き起こして乳酸アシドーシスの副作用が起こすリスクがあります。

がん組織では乳酸産生が亢進していますが、メトホルミンだけでは乳酸アシドーシスを引き起こすリスクを高めます。

ジクロロ酢酸は乳酸アシドーシスの治療に使われています。ミトコンドリアでの代謝を活性化して乳酸産生を抑えるためです。

したがって、がん治療の目的でメトホルミンを使用するとき、ジクロロ酢酸の併用は、抗腫瘍効果増強と副作用軽減の目的で、合理的な組合せと言えます。

 

原文:

Oncotarget. 2016 Sep 13; 7(37): 59458-59470.

Dichloroacetate and metformin synergistically suppress the growth of ovarian cancer cells

Abstract

Both dichloroacetate (DCA) and metformin (Met) have shown promising antitumor efficacy by regulating cancer cell metabolism. However, the DCA-mediated protective autophagy and Met-induced lactate accumulation limit their tumor-killing potential respectively. So overcoming the corresponding shortages will improve their therapeutic effects. In the present study, we found that DCA and Met synergistically inhibited the growth and enhanced the apoptosis of ovarian cancer cells. Interestingly, we for the first time revealed that Met sensitized DCA via dramatically attenuating DCA-induced Mcl-1 protein and protective autophagy, while DCA sensitized Met through markedly alleviating Met-induced excessive lactate accumulation and glucose consumption. The in vivo experiments in nude mice also showed that DCA and Met synergistically suppressed the growth of xenograft ovarian tumors. These results may pave a way for developing novel strategies for the treatment of ovarian cancer based on the combined use of DCA and Met.

 

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