カンナビジオールの抗がん作用

カンナビジオール(Cannabidiol)大麻草に含まれる成分の一種です。
大麻には陶酔作用や幻覚作用など精神変容作用を示す成分(Δ9-テトラヒドロカンナビノール)が含まれるため使用は規制されていますが、カンナビジオールは精神作用も他の毒性も無い安全性の高い物質です
最近の研究によって、カンナビジオールには、がん細胞の増殖を抑える作用、がん細胞の浸潤や転移を抑える作用、抗がん剤の副作用を軽減する作用が報告されています

【体内の細胞には大麻成分(カンナビノイド)の受容体がある】

カンナビノイド(cannabinoid)というのは大麻に含まれる薬効成分の総称で、テトラヒドロカンナビノール(THC)、カンナビノール(CBN)、カンナビジオール(CBD)など多数の化学物質が含まれます。
カンナビノイドには古くから(何千年も前から)多彩な薬効が知られていて、現在でも様々な病態への治療薬として期待されています。
大麻の成分のカンナビノイドの受容体として見つかったカンナビノイド受容体(CB1とCB2)には、当然のことながら、内因性のリガンドが存在します。
カンナビノイド受容体への内因性リガンドとしてアナンダミド2-アラキドノイルグリセロールが知られています。つまり、体内には内因性カンナビノイドと、それらを合成する酵素や分解する酵素、カンナビノイド受容体によって内因性カンナビノイド・システムが存在します。
この内因性カンナビノイド・システムが関与している疾患として、多発性硬化症、脊髄損傷、神経性疼痛、がん、動脈硬化、脳卒中、心筋梗塞、高血圧、緑内障、肥満、メタボリック症候群、骨粗鬆症などが報告されています。 つまり、これらの疾患の治療に内因性カンナビノイド・システムの正常化や活性化が有効である可能性が示唆されているのです。

【医療大麻とがん治療】

現在、医療大麻は、がん患者の消耗(wasting)や吐き気・嘔吐や疼痛の緩和の目的で欧米など一部の国や地域で使用されています。日本では大麻取締法で医療大麻は使用できません。
カンナビノイドには直接的な抗がん作用があることが報告されています。 最初の報告は1975年で、マウスに肺がん細胞を移植した実験モデルで、Δ9-テトラヒドロカンナビノール(Δ9-THC)やΔ8-テトラヒドロカンナビノール(Δ8-THC)の経口投与で肺がんの増殖を抑制する効果が報告されています。(J Natl Cancer Inst. 55: 597-602, 1975年)
その後、多くの実験系で肺がん以外にも、グリオーマ、甲状腺がん、悪性リンパ腫、皮膚がん、膵臓がん、子宮がん、乳がん、前立腺がん、大腸がんなど多くのがんでカンナビノイドの抗腫瘍効果が報告されています。
最近では、その作用メカニズムに関する研究も進んでおり、直接的は増殖抑制効果だけでなく、血管新生阻害作用、がん細胞の移動や接着や浸潤や転移を抑制する作用などが報告されています。
しかし、カンナイビノイドの主要な薬効成分であるΔ9-テトラヒドロカンナビノール(Δ9-THC)には精神への作用、すなわち陶酔作用や気分の高揚、多幸感などがあるため、がん治療への使用が困難です。この精神作用が、大麻取締法で大麻の使用が禁止されている理由です。
しかし、精神作用はテトラヒドロカンナビノールのみで、カンナビジオールなど他のカンナビノイドには精神作用はありません。そのため、がん治療においてはカンナビジオールの利用が検討されています。
実際、抗がん作用に関しては、テトラヒドロカンナビノール(精神作用があるために日本では禁止されている)よりカンナビジオール(精神作用が無いので日本でも規制の対象にはなっていない)の方が優れているという報告もあります。

【成熟した茎から抽出したカンナビジオールは日本でも規制されていない】

医療大麻が日本に導入できないのは、大麻取締法で大麻草の医療目的使用と臨床試験を禁じているからです。しかし、世界中でその有効性が認められ、多くの国で医療大麻は認可されるようになっています。
日本の大麻取締法は大麻草の葉と花穂(花冠)とその製品を禁止していますが、成長した大麻草の茎や種子の使用やそれ由来の製品は除外されています。 つまり、日本の大麻取締法では「成熟した茎と種子及びその製品が除外される」とあり、成分として規制対象は精神作用のあるテトラヒドロカンナビノール(THC)のみで、カンナビジオールは対象外になっています。
最近の研究によってカンナビジオールには次のような様々な抗腫瘍効果が報告されています。

○ がん細胞の増殖抑制作用やアポトーシス(細胞死)を誘導する作用
○ がん細胞の浸潤・転移を抑制する作用
○ 抗がん剤の副作用軽減と抗腫瘍効果を高める作用
○ がん組織の血管新生阻害作用

図:カンナビノイド受容体は7回膜貫通型のGタンパク質共役型受容体でCB1とCB2の2種類がある。CB1は中枢神経系に多く発現し、CB2は免疫細胞に多く発現している。内因性カンナビノイド(アナンダミドなど)はCB1受容体に作用して中枢神経系において様々な神経伝達調節を行っており、記憶・認知、運動制御、食欲調節、報酬系の制御、鎮痛など多岐にわたる生理作用を担っている。
大麻草に含まれるΔ9-テトラヒドロカンナビノール(Δ9-THC)や合成カンナビノイド(WIN55212-2など)はCB1受容体に結合して様々な精神変容作用(陶酔、幻覚、多幸感など)を示すので、麻薬として使用が禁止されている。大麻草に含まれるカンナビジオール(cannabidiol)はCB1受容体のアンタゴニスト(拮抗薬)として作用するので精神変容作用は示さない。
カンナビジオールはCa透過性イオンチャネルのTRPV(transient receptor potential vanilloid type)、セロトニン受容体の5-HT1A、GRP55、PPARγ(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ)などに作用して様々な生理作用を示す。
医療大麻が抗がん作用を示すことは多くの研究によって報告されているが、大麻(マリファナ)やΔ9-THCは大麻取締法や麻薬取締法などによって日本では現時点では使用は不可能である。カンナビジオールの抗腫瘍作用が多くの研究で示されている。規制対象外の大麻草由来成分のカンナビジオールのがん治療における利用が注目されている。

注意:カンビジオールを含む製品は、成熟した茎のみから製造したものであれば、その使用は大麻取締法に違反しません。しかし、もし大麻の葉や花穂が少しでも混入していたら、大麻になります。つまり、規制の対象になります。現在、欧米で流通しているカンナビジオール・オイルには、葉の1枚も混入していないと証明できるものを入手するのは困難な状況ですので、当院ではカンナビジオール・オイルは扱っていません。

リンク:

  1. カンナビジオールは 抗がん剤の副作用を軽減する。
  2. カンナビジオールはがん細胞の浸潤・転移を抑制する。