アボカドに含まれる脂肪族アセトゲニンは上皮成長因子受容体(EGFR)を介したシグナル伝達系を阻害してがん細胞の増殖を抑制する

f-gtc (2012年10月17日 08:40)

アボカドに含まれる脂肪族アセトゲニンは上皮成長因子受容体(EGFR)を介したシグナル伝達系を阻害してがん細胞の増殖を抑制する

 

Aliphatic acetogenin constituents of avocado fruits inhibit human oral cancer cell proliferation by targeting the EGFR/RAS/RAF/MEK/ERK1/2 pathway. (アボカド果実の脂肪族アセトゲニン成分はEGFR/RAS/RAF/MEK/ERK1/2経路を標的とすることによりヒト口腔がん細胞の増殖を阻害するBiochem Biophys Res Commun. 409(3): 465-469. 2011

 

【要旨】

アボカド(Persea americana)果実は人間の食物の一部として消費され、その抽出エキスが様々なヒトがん細胞に増殖阻害効果を示すことが報告されているが,個々の成分の有効性やその作用機序はほとんど明らかになっていない。

アボカド果実の果肉を、活性を指標として成分を分け(分画),クロロホルム可溶性抽出物(D003)が前悪性および悪性ヒト口腔がん細胞株に対し高い有効性を示すことを確認した。

この抽出物から、既知の構造を持つ2つの脂肪族アセトゲニン、化合物1(2S,4S)-2,4-ジヒドロキシヘプタデス-16-エニル酢酸]と化合物2(2S,4S)-2,4-ジヒドロキシヘプタデス-16-イニル酢酸]を単離した。

本研究において我々は、このクロロホルム抽出物の増殖阻害活性がEGFR/RAS/RAF/MEK/ERK1/2がん経路のEGFR(Tyr1173),c-RAF(Ser338),そしてERK1/2(Thr202/Tyr204)のリン酸化の阻害によることを初めて明らかにした。

化合物12は共にc-RAF(Ser338)ERK1/2(Thr202/Tyr204)のリン酸化を阻害した。化合物2のみ、EGFによって誘導されるEGFR(Tyr1173)の活性化(リン酸化)を阻止した。化合物12を組み合わせると,それらはc-RAF(Ser338)ERK1/2(Thr202/Tyr204)のリン酸化とヒト口腔がん細胞の増殖に対して相乗的に阻害した。本研究結果により、アボカド果実の抗がん作用が、EGFR/RAS/RAF/MEK/ERK1/2がん経路の2つの鍵となる構成要素を標的とする特異的な脂肪族アセトゲニンの組み合わせによることが示唆された。

 

【訳者注】

野菜や果物から多くの抗がん成分が見つかっています。アボカドはビタミン・ミネラルなどの栄養素が豊富で、糖質が少なく、オレイン酸を主体とする脂肪が多いなど、他の野菜や果物とは異なる特徴を持っています。
アボカドに含まれる抗がん成分についても基礎研究が行われています。アボカドには多彩なカロテノイドが豊富で、しかも脂肪が多いので、脂溶性のカロテノイドの吸収が良いことが報告されています。

この論文では、他の野菜や果物に含まれないアボカドに特徴的な成分の脂肪族アセトゲニンが、上皮成長因子(EGF)がその受容体(EGFR)に結合して活性化されるEGFR/RAS/RAF/MEK/ERK1/2というシグナル伝達系を阻害してがん細胞の増殖を阻害する作用を報告しています。EGFRを標的とした抗がん剤としてEGFRチロシンキナーゼ阻害剤(イレッサ、タルセバ)や抗EGFR抗体(アービタックスなど)が使用され、その有効性が報告されています。EGFR/RAS/RAF/MEK/ERK1/2シグナル伝達系は多くのがん細胞において活性化されているので、この経路を阻害する作用は抗がん作用が期待できます。この研究は培養細胞を使った実験なので、アボカドを多く食べて、どの程度の抗腫瘍効果が期待できるかは不明です。ただ、糖質が少なく、オレイン酸が豊富で、カロテノイドなどのビタミン・ミネラルが豊富なので、がんの中鎖脂肪ケトン食には有用な食材です。

 

【原文】 

Biochem Biophys Res Commun. 2011 Jun 10;409(3):465-9. Epub 2011 May 8.

Aliphatic acetogenin constituents of avocado fruits inhibit human oral cancer cell proliferation by targeting the EGFR/RAS/RAF/MEK/ERK1/2 pathway.

D'Ambrosio SM, Han C, Pan L, Kinghorn AD, Ding H.

Source

Department of Radiology, College of Medicine, The Ohio State University, Columbus, OH 43210, USA.

Abstract

Avocado (Persea americana) fruits are consumed as part of the human diet and extracts have shown growth inhibitory effects in various types of human cancer cells, although the effectiveness of individual components and their underlying mechanism are poorly understood. Using activity-guided fractionation of the flesh of avocado fruits, a chloroform-soluble extract (D003) was identified that exhibited high efficacy towards premalignant and malignant human oral cancer cell lines. From this extract, two aliphatic acetogenins of previously known structure were isolated, compounds 1 [(2S,4S)-2,4-dihydroxyheptadec-16-enyl acetate] and 2 [(2S,4S)-2,4-dihydroxyheptadec-16-ynyl acetate]. In this study, we show for the first time that the growth inhibitory efficacy of this chloroform extract is due to blocking the phosphorylation of EGFR (Tyr1173), c-RAF (Ser338), and ERK1/2 (Thr202/Tyr204) in the EGFR/RAS/RAF/MEK/ERK1/2 cancer pathway. Compounds 1 and 2 both inhibited phosphorylation of c-RAF (Ser338) and ERK1/2 (Thr202/Tyr204). Compound 2, but not compound 1, prevented EGF-induced activation of the EGFR (Tyr1173). When compounds 1 and 2 were combined they synergistically inhibited c-RAF (Ser338) and ERK1/2 (Thr202/Tyr204) phosphorylation, and human oral cancer cell proliferation. The present data suggest that the potential anticancer activity of avocado fruits is due to a combination of specific aliphatic acetogenins that target two key components of the EGFR/RAS/RAF/MEK/ERK1/2 cancer pathway.

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