漢方治療(中医薬治療)は肺がんの抗がん剤治療の効果を高める

f-gtc (2013年7月15日 07:36)

漢方治療(中医薬治療)は肺がんの抗がん剤治療の効果を高める


The efficacy of Chinese herbal medicine as an adjunctive therapy for advanced non-small cell lung cancer: a systematic review and meta-analysis.(進行非小細胞性肺がんの補助療法として中医薬治療の有効性:系統的レビューとメタ解析)PLoS One. 2013;8(2):e57604. 

【要旨】

進行した非小細胞性肺がんの治療において、標準治療と補完・代替医療との併用、特に中医薬治療(Chinese herbal medicine)の併用に関して多くの研究が行われている。しかし、その有効性に関しては十分に検討されていない。

この研究の目的は、進行した非小細胞性肺がんの治療において、標準的な抗がん剤治療に中医薬治療を併用した場合の有効性を評価することにある。

11のデータベースを検索し、条件に合う24の臨床試験を選び出した。これらの臨床試験に含まれる2109人の患者のデータを解析した。2109人のうち、1064人は抗がん剤治療と中医薬の併用による治療を受け、1039人は抗がん剤治療のみを受けた(6人の患者は脱落した)

抗がん剤治療単独群に比べて、抗がん剤と中医薬を併用した群は1年生存率が著明に向上した。(相対比=1.36, 95% 信頼区間=1.15-1.60, p=0.0003. その他に、併用群では奏功率 (相対比=1.36, 95% 信頼区間=1.19-1.56, p<1.0E-5) や、カルノフスキー・パフォーマンス・スコア (Karnofsky performance score)で評価した全身状態の改善の率(相対比=2.90, 95% 信頼区間=1.62-5.18, p=0.0003)も向上した. 一方、副作用に関しては、併用群で著明な軽減が認められた。例えば、グレード3〜4の吐き気や嘔吐の頻度は併用群で顕著に低減した (相対比=0.24, 95%信頼区間=0.12-0.50, p=0.0001) 。ヘモグロビンや血小板の減少の頻度も併用群では低下した。

さらに、この研究では、非小細胞性肺がんに高頻度に使用される生薬が同定された。

この系統的レヴューは、進行した非小細胞性肺がんの治療において、中医薬治療は抗がん剤治療の補助療法として有用で、抗がん剤の副作用を軽減し、生存率を向上し、抗がん剤による腫瘍の縮小効果(奏功率)を高め、全身状態を良くする効果があることが示された。

しかしながら、今回検討したランダム化比較臨床試験の多くは小規模なものばかりで、大規模なランダム化試験は含まれていないので、今後はさらに大規模な臨床試験の実施が必要である。

 

【コメント】

非小細胞性肺がんに高頻度に使用される生薬としては、黄蓍(オウギ)、南沙参(ナンシャジン)、麦門冬(バクモンドウ)、甘草(カンゾウ)、茯苓(ブクリョウ)、白花蛇舌草(ビャッカジャゼツソウ)、天門冬(テンモンドウ)、桃仁(トウニン)、田七人参(デンシチニンジン)が挙げられています。その薬効から予想されるものです。

このメタ解析の元になった臨床試験は全て中国で実施されたもので、24の臨床試験で2100人程度のデータを集めているので、一つの臨床試験の規模は平均で100人弱なので、小規模と言わざるを得ません。

メタ解析(メタアナリシス:meta-analysis)とは、過去に行われた複数の研究結果を統合し、統計的に総合評価を行う方法です。一つ一つの研究では症例数が少なくて統計的に差がでなくても、そのような研究データをまとめて統計的に処理すれば、より信頼性の高い結果が得られます。

一般的に、メタ解析で有効性が示されれば、かなりエビデンスが高いという評価になります。しかし、大規模なランダム化試験で有意な結果がでなければ、確定とは言えません。

しかし、抗がん剤治療に漢方薬や中医薬を併用しても、悪い結果になる可能性は低く、むしろ良い効果が得られると言えます。

 

(原文)

PLoS One. 2013;8(2):e57604. doi: 10.1371/journal.pone.0057604. Epub 2013 Feb 28.

The efficacy of Chinese herbal medicine as an adjunctive therapy for advanced non-small cell lung cancer: a systematic review and meta-analysis.

Li SG, Chen HY, Ou-Yang CS, Wang XX, Yang ZJ, Tong Y, Cho WC.

Source

Graduate School, Guangzhou University of Chinese Medicine, Guangzhou, China.

Abstract

Many published studies reflect the growing application of complementary and alternative medicine, particularly Chinese herbal medicine (CHM) use in combination with conventional cancer therapy for advanced non-small cell lung cancer (NSCLC), but its efficacy remains largely unexplored. The purpose of this study is to evaluate the efficacy of CHM combined with conventional chemotherapy (CT) in the treatment of advanced NSCLC. Publications in 11 electronic databases were extensively searched, and 24 trials were included for analysis. A sum of 2,109 patients was enrolled in these studies, at which 1,064 patients participated in CT combined CHM and 1,039 in CT (six patients dropped out and were not reported the group enrolled). Compared to using CT alone, CHM combined with CT significantly increase one-year survival rate (RR = 1.36, 95% CI = 1.15-1.60, p = 0.0003). Besides, the combined therapy significantly increased immediate tumor response (RR = 1.36, 95% CI = 1.19-1.56, p<1.0E-5) and improved Karnofsky performance score (KPS) (RR = 2.90, 95% CI = 1.62-5.18, p = 0.0003). Combined therapy remarkably reduced the nausea and vomiting at toxicity grade of III-IV (RR = 0.24, 95% CI = 0.12-0.50, p = 0.0001) and prevented the decline of hemoglobin and platelet in patients under CT at toxicity grade of I-IV (RR = 0.64, 95% CI = 0.51-0.80, p<0.0001). Moreover, the herbs that are frequently used in NSCLC patients were identified. This systematic review suggests that CHM as an adjuvant therapy can reduce CT toxicity, prolong survival rate, enhance immediate tumor response, and improve KPS in advanced NSCLC patients. However, due to the lack of large-scale randomized clinical trials in the included studies, further larger scale trials are needed.

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