αリポ酸はサーチュイン1の発現誘導とAMP活性化プロテインキナーゼの活性化によって脂肪酸の酸化を促進する

f-gtc (2013年3月22日 09:52)

αリポ酸はサーチュイン1の発現誘導とAMP活性化プロテインキナーゼの活性化によって脂肪酸の酸化を促進する

α-Lipoic acid regulates lipid metabolism through induction of sirtuin 1 (SIRT1) and activation of AMP-activated protein kinase.(αリポ酸はsirtuin1SIRT1)の発現誘導とAMP活性化プロテインキナーゼの活性化を介して脂肪代謝を調節する)Diabetologia 55(6): 1824-35, 2012

【要旨】

目的と仮説:サーチュイン1(Sirtuin 1; SIRT1)は、栄養枯渇に応答してエネルギー産生と寿命を調節する長寿関連タンパク質である。肥満やメタボリック症候群の治療薬開発のターゲットとして注目されている。この研究では、C2C12筋管細胞(C2C12myotubes)において、αリポ酸がSIRT1の活性化や発現誘導を介して脂質低下作用を示すかどうかを検討した。

方法:培養したC2C12筋管細胞の培養液にαリポ酸を投与して、SIRT1阻害剤(ニコチンアミド)、SIRT1低分子干渉RNAsiRNA)、AMPK阻害剤(compound C)の存在下あるいは非存在下において、AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)、アセチル-CoAカルボキシラーゼ(ACC)、脂肪組織のトリアシルグリセロール・リパーゼ(ATGL)、脂肪酸合成酵素(FAS)の発現量、細胞内のトリアシルグリセロールの量、脂肪酸のβ酸化の変化を解析した。

生体内でのαリポ酸の脂質低下作用は、高脂肪食で飼育したストレプトゾトシン/ニコチンアミド誘発糖尿病マウスと遺伝性肥満マウス(db/db mice)を用いて検討した。

結果:C2C12筋管細胞(myotubes)においてαリポ酸はNAD+/NADH比を増加させ、SIRT1活性と発現量を高めた。その結果、αリポ酸はAMPKACCのリン酸化を亢進し、パルミチン酸のβ酸化を亢進し、細胞内トリアシルグルセロール量を減少させた。

ニコチンアミドあるいはSIRT1siRNAで処理した細胞では、αリポ酸によって誘導されるAMPKACCのリン酸化、細胞内トリアシルグリセロール量、

パルミチン酸のβ酸化は抑制された。これはシグナル伝達においてSIRT1AMPKの上流に位置することを示している。

αリポ酸は脂肪組織トリアシルグリセロール・リパーゼ(ATGL)の発現を増やし、脂肪酸合成酵素(FAS)の発現を抑制した。

高脂肪食で飼育した糖尿病マウスとdb/dbマウスにαリポ酸を経口投与すると、体重と内臓脂肪の量が著明に減少した。

結論:培養細胞とマウスを使った実験で、αリポ酸はSIRT1AMPKの両方を活性化し、脂質を低下させる効果を示した。これらの結果は脂質代謝異常や肥満の治療においてαリポ酸が有用な作用を示すことを示唆している。

 

【訳者注】

寿命を延ばす確実な方法としてカロリー制限があります。カロリー制限は、栄養不良を伴わない低カロリー食事療法で、霊長類を含む多岐にわたる生物種において老化を遅延させ、寿命を延長させることが知られています。
このカロリー制限のときに活性化されて寿命延長と抗老化作用に関与するのがサーチュイン遺伝子です。つまり、サーチュイン遺伝子が活性化されると老化が抑制されることになります。

サーチュインがAMPKの上流に位置するリン酸化酵素であるLKB1を脱アセチル化し、AMPKを活性化します。AMPKが活性化すると、AMPKは細胞内NAD+を増加させることでさらにサーチュイン活性が促進し、自ら活性が増強するループを形成しているという報告があります。

サーチュイン遺伝子やAMP活性化プロテインキナーゼの活性化はがん細胞の増殖を抑制する作用を持ちます。

AMPKの活性化は、細胞内の脂肪酸のβ酸化を亢進し、脂質合成に関与するアセチル-CoAカルボキシラーゼ(ACC)と脂肪酸合成酵素(FAS)の活性を阻害します。脂肪酸の合成が阻害され、β酸化が亢進するとがん細胞は増殖が阻害されます。

αリポ酸は抗酸化作用やグルコース代謝を促進する(αリポ酸はピルビン酸をアセチルCoAに変換するピルビン酸脱水素酵素の補酵素)作用が主体ですが、さらにSIRT1AMPKを活性化して、脂肪酸のβ酸化を亢進して脂肪酸合成を阻害する作用もαリポ酸の抗腫瘍作用のメカニズムになっていると思われます。

 

【原文】

Diabetologia. 2012 Jun;55(6):1824-35. doi: 10.1007/s00125-012-2530-4. Epub 2012 Mar 30.

α-Lipoic acid regulates lipid metabolism through induction of sirtuin 1 (SIRT1) and activation of AMP-activated protein kinase.

Chen WL, Kang CH, Wang SG, Lee HM.

Source

Graduate Institute of Medical Sciences, College of Medicine, Taipei Medical University, 250 Wu-Hsing Street, Taipei 110, Taiwan.

Abstract

AIMS/HYPOTHESIS:

Sirtuin 1 (SIRT1) is a longevity-associated protein, which regulates energy metabolism and lifespan in response to nutrient deprivation. It has been proposed to be a therapeutic target for obesity and metabolic syndrome. We investigated whether α-lipoic acid (ALA) exerts a lipid-lowering effect through regulation of SIRT1 activation and production in C(2)C(12) myotubes.

METHODS:

ALA-stimulated AMP-activated protein kinase (AMPK), acetyl-CoA carboxylase (ACC), adipose triacylglycerol lipase (ATGL) and fatty acid synthase (FAS) production, as well as intracellular triacylglycerol accumulation and fatty acid β-oxidation were analysed in the absence or presence of a SIRT1 inhibitor (nicotinamide), SIRT1 small interfering (si) RNA and an AMPK inhibitor (compound C) in C(2)C(12) myotubes. Mice with streptozotocin/nicotinamide-induced diabetes and db/db mice fed on a high-fat diet were used to study the ALA-mediated lipid-lowering effects in vivo.

RESULTS:

ALA increased the NAD(+)/NADH ratio to enhance SIRT1 activity and production in C(2)C(12) myotubes. ALA subsequently increased AMPK and ACC phosphorylation, leading to increased palmitate β-oxidation and decreased intracellular triacylglycerol accumulation in C(2)C(12) myotubes. In cells treated with nicotinamide or transfected with SIRT1 siRNA, ALA-mediated AMPK/ACC phosphorylation, intracellular triacylglycerol accumulation and palmitate β-oxidation were reduced, suggesting that SIRT1 is an upstream regulator of AMPK. ALA increased ATGL and suppressed FAS protein production in C(2)C(12) myotubes. Oral administration of ALA in diabetic mice fed on a high-fat diet and db/db mice dramatically reduced the body weight and visceral fat content.

CONCLUSIONS/INTERPRETATION:

ALA activates both SIRT1 and AMPK, which leads to lipid-lowering effects in vitro and in vivo. These findings suggest that ALA may have beneficial effects in the treatment of dyslipidaemia and obesity.

 

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