ケトン食は悪性グリオーマの放射線治療の補助療法として有効

f-gtc (2012年8月21日 12:35)

ケトン食は悪性グリオーマの放射線治療の補助療法として有効

PLoS One. 2012;7(5):e36197. Epub 2012 May 1.

 

【要旨】

ケトン食は高脂肪、低炭水化物(低糖質)の食事で、血中のケトン体の濃度を高めることによって体内のエネルギー代謝を変える。KetoCal® は市販されている食品で、ケトン比(脂肪:炭水化物+蛋白質)が4:1で必須栄養素を完全に含んでおり、難治性のてんかんのに対する非薬物治療として有効性が認められている。この食事によって誘導されるケトン血症は脳細胞の恒常性に変化を与え、悪性グリオーマなど他の神経疾患の治療にも効果が期待されている。

我々は、悪性グリオーマの頭蓋内生体蛍光マウスモデル( intracranial bioluminescent mouse model of malignant glioma)を用い、グリオーマ細胞を移植後、標準的な食事を与えるグループとケトン食を与えるグループに分けた。それぞれのグループに2x4Gの全脳照射を行い、腫瘍の増殖を生体内イメージングによって追跡した。

ケトン食を与えたマウスではケトン体のβヒドロキシ酪酸の血中濃度を上昇し、平均生存期間は標準食を与えられたマウスより約5日間延長した。

ケトン食と放射線治療の併用療法は相和効果以上であり、ケトン食を与えられて照射を受けた11匹のマウスのうち9匹において、腫瘍細胞からの生体蛍光シグナルは検出限界以下まで消滅した。ケトン食のマウスは腫瘍移植後101日後に標準食に変更したが、200日以上に渡って再発を認めなかった。

結論として、ケトン食は放射線治療の抗腫瘍効果を著明に増強した。この結果は、ケトン食によって誘導される細胞内代謝の変化は、ヒトの悪性グリオーマの標準的治療の補助療法として有用であることが示唆された。


【訳者注】

脳腫瘍に対して、ケトン食はそれだけで延命効果があり、放射線治療と併用すると、相和(additive)以上の効果で、顕著な腫瘍縮小効果を示したという内容です。ケトン食によってケトン体(アセト酢酸やβヒドロキシ酪酸)が増加し、これらケトン体はがん細胞のエネルギー産生を阻害し、放射線感受性を高めるという作用機序のようです。

脳腫瘍に対してケトン食が有効であるという報告は多数あります。この論文もその一つで、ケトン体が脳腫瘍の放射線感受性を高めるという結果を報告しています。脳腫瘍の放射線治療の最中にケトン食を実践することは有効だと言えます。

 

Abstractの原文

PLoS One. 2012;7(5):e36197. Epub 2012 May 1.

The ketogenic diet is an effective adjuvant to radiation therapy for the treatment of malignant glioma.

Abdelwahab MGFenton KEPreul MCRho JMLynch AStafford PScheck AC.

Source

Neuro-Oncology Research, Barrow Neurological Institute® of St. Joseph's Hospital and Medical Center, Phoenix, Arizona, United States of America.

Abstract

INTRODUCTION:

The ketogenic diet (KD) is a high-fat, low-carbohydrate diet that alters metabolism by increasing the level of ketone bodies in the blood. KetoCal® (KC) is a nutritionally complete, commercially available 4:1 (fat:carbohydrate+protein) ketogenic formula that is an effective non-pharmacologic treatment for the management of refractory pediatric epilepsy. Diet-induced ketosis causes changes to brain homeostasis that have potential for the treatment of other neurological diseases such as malignant gliomas.

METHODS:

We used an intracranial bioluminescent mouse model of malignant glioma. Following implantation animals were maintained on standarddiet (SD) or KC. The mice received 2×4 Gy of whole brain radiation and tumor growth was followed by in vivo imaging.

RESULTS:

Animals fed KC had elevated levels of β-hydroxybutyrate (p = 0.0173) and an increased median survival of approximately 5 days relative to animals maintained on SD. KC plus radiation treatment were more than additive, and in 9 of 11 irradiated animals maintained on KC the bioluminescent signal from the tumor cells diminished below the level of detection (p<0.0001). Animals were switched to SD 101 days after implantation and no signs of tumor recurrence were seen for over 200 days.

CONCLUSIONS:

KC significantly enhances the anti-tumor effect of radiation. This suggests that cellular metabolic alterations induced through KC may be useful as an adjuvant to the current standard of care for the treatment of human malignant gliomas.

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