R体αリポ酸&セレン

抗酸化力と免疫力と解毒力を増強
がん細胞にアポトーシス(細胞死)を誘導
がんの発生と再発を予防
抗がん剤や放射線治療の副作用を軽減

品名:R体-αリポ酸 & セレン
名称:R体-αリポ酸、セレン含有酵母加工食品
原材料名(内容物):亜鉛含有酵母、チオクト酸(αリポ酸)、セレン含有酵母 、環状オリゴ糖、ゼラチン、結晶セルロース、ステアリン酸カルシウム、微粒二酸化ケイ素
内容量:210mg x 120粒入り(内容量:25.2g)/被包剤を含む重量32.76g
本品4粒当たり:R体-αリポ酸:66mg / セレン:60μg / 亜鉛:10mg
価格:5000円(税込み)

本品4カプセル当たりの栄養成分表示

エネルギー : 3.2 Kcal 炭水化物  : 0.50 g 亜鉛     : 10 mg
タンパク質 : 0.23 g ナトリウム : 6.28 mg R体-αリポ酸 : 66 mg
脂質    : 0.031g セレン   : 60 μg

特徴
1)通常のラセミ型のαリポ酸より生物活性の高いR体-αリポ酸のみを使用しています。
2)R体-αリポ酸をγ-シクロデキストリンで包接することによって、光や熱や胃酸に対する安定性と生体利用能(消化管からの吸収性と血中での持続性)を高めています。
3)グルタチオン・ペルオキシダーゼやチオレドキシン還元酵素などの抗酸化酵素の活性に必要なセレンを1日量60μg含有しています。
4)治癒力を高める様々な酵素の活性に必要なミネラルである亜鉛を1日量10mg含有しています。
アルファリポ酸とセレンと亜鉛の相乗効果で、抗酸化力と免疫力と解毒力を増強します。

【R体αリポ酸とは】

αリポ酸にはR体とS体という2種類の光学異性体(鏡像異性体)が存在することが知られています。光学異性体はちょうど右手と左手のように鏡写しの関係になっています。つまり、R体を鏡に写すとS体になるという関係です(下図参照)。

図:アルファリポ酸(αリポ酸)にはR体とS体という2種類の光学異性体が存在する。体内で生成されるαリポ酸はR体のみでS体は存在しない。

体内で生成されるαリポ酸はR体のみで、S体は天然には存在しません。しかし、αリポ酸を人工的に合成するとR体50%、S体50%の化合物が出来上がります。これをラセミ体と呼びます。現在ではこのラセミ体からR体のみの単離が可能であり、R体だけを作り出せるようになっています。
αリポ酸の場合、S体やラセミ体と比較して、R体の方が生物活性(=効果)が高いという研究結果が数多く報告されています。例えば、αリポ酸の抗がん作用で最も重要は作用であるピルビン酸脱水素酵素を活性化する作用はR体のみで、逆にS体のαリポ酸はピルビン酸脱水素酵素の活性を阻害します。
したがって、がんの治療にαリポ酸を利用するときには、ラセミ体ではなく、R体のみのαリポ酸を使った製品を摂取することが重要です。

図:ブドウ糖(グルコース)が解糖系で分解されてピルビン酸になり、ミトコンドリアでピルビン酸脱水素酵素によってアセチルCoAになってTCA回路で代謝される。R体αリポ酸はピルビン酸脱水素酵素の活性を高めるがS体αリポ酸は阻害する。

【γ-シクロデキストリンによる包接化とは】

αリポ酸のサプリメントは、ラセミ体よりもR体のみを配合した製品の方が効果が高いのですが、ラセミ体(R体+S体)のαリポ酸からS体を分離してR体-αリポ酸のみにすると、非常に不安定な性質に変わるという弱点があります
すなわち、単離したR体-αリポ酸は空気や熱、光、水分の存在下で容易に不溶性ポリマーに変化します。ポリマーというのは重合体とも呼ばれ、分子が多数結合することによって生成される分子量の大きな化合物です。αリポ酸は、2個のチオール基を持ち、光や熱の影響を受けやすく容易に不規則な架橋を形成するためです。
不溶性ポリマーを形成すると消化管からの吸収が妨げられ、生体利用能が大きく低下し、効果が期待できません。また、R体単独では融点が50〜60℃と低いため加工や貯蔵中に変性しやすい欠点もあります。
このように、R体のみでは非常に不安定で、生体利用能が悪いという弱点があるため、αリポ酸のサプリメントの多くはラセミ体が使われているのが現状です。(アメリカではR体-αリポ酸より安定なR体-αリポ酸ナトリウム塩を使用したサプリメントが販売されていますが、日本ではR体-αリポ酸ナトリウムは食品として認可されていないため使用できません)
R体のαリポ酸をガンマ・シクロデキストリン(γ-CD)で包接化すると、光や熱や胃酸に対する安定性が高まり、生体利用能が格段に高まることが確かめられています。
ガンマ・シクロデキストリン(γ-CD)は8個のブドウ糖が環状につながった環状オリゴ糖と呼ばれる天然成分です。γ-CDは底の無いカップ状をしており、その内径は約1nm(ナノメートル=10億分の1メートル)で、その内側は疎水性を、外側は親水性を示し、疎水性(水に溶けにくい)物質をカップ内に取り込み固定します。これを「包接」と呼びます。
R体-αリポ酸をγCDで包接化すると、R体-αリポ酸の安定性と吸収性と持続性(血液中にとどまる時間)が高まり、生体利用能が向上することが明らかになっています。 健常人における試験では、持続性の指標であるT1/2(最高血中濃度が半減するまでの時間)が未包接αリポ酸では25〜32分であったのに対して包接αリポ酸では7時間以上と大幅に伸び、通常はαリポ酸が吸収されにくい食後でも吸収性と持続性が高まることが確認されています。γCDはもともと水溶性物質ですが、αリポ酸を包接して包接体になると不溶性に変化し、消化酵素のアミラーゼで分解されなくなります。しかし、そこに胆汁酸が加わると、包接されているαリポ酸が乳化され、徐々にγCDから消化管内に放出されるとともに、γCDもアミラーゼによりゆっくりと分解され、消化されていくため、体内への吸収性と血中の持続性が向上すると考えられています。

図:ガンマ・シクロデキストリン(γ-CD)は8個のグルコース(ブドウ糖)が環状に結合し、底のないバケツ状をしている。この内腔にR体αリポ酸が取込まれる(包接される)と 光や熱や胃酸に対する安定性が高まり、消化管からの吸収性が高まり、生体利用能が向上する。

R体-αリポ酸 & セレンのサプリメントに関するお問合せやご注文は、info@f-gtc.or.jp へメールにてお問合せ下さい。電話(03-5550-3552)でも受付けています。

○ アルファリポ酸と低容量ナルトレキソンを併用すると、がん細胞を死滅させる効果が増強します。
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アルファリポ酸とセレンと亜鉛の抗がん作用と相乗効果

【αリポ酸とは】

アルファリポ酸(αlipoic acid、別名:チオクト酸)は、多数の酵素の補助因子として欠かせない体内成分です。特に、クエン酸回路のピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体の補助因子として、ミトコンドリアでのエネルギー産生に重要な役割を果たしています。
植物と動物(人間も含む)の体内で少量産生されていて、動物では脂肪酸とシステインから肝臓で合成されます。1950年に牛の肝臓から分離されました。かつてはビタミンB群のビタミンに分類されていましたが、体内で合成されるため、現在ではビタミンとは分類されていません。ビタミン様物質と認識されています。
抗酸化作用、糖代謝を促進する作用、体内の重金属を排出する作用、糖尿病の神経障害を改善する効果などがあり、糖尿病や動脈硬化関連疾患(虚血性心疾患や脳梗塞)、多発性硬化症、認知症などの疾患の予防や改善に効果があることが報告されています。特に活性酸素などのフリーラジカルによる酸化障害が発症や病態進展に関連している疾患の治療に効果が認められています。
ドイツでは、アルファリポ酸は糖尿病による神経障害の治療薬として認可されています。アルファリポ酸を1日量として600-1,200mg経口摂取あるいは静脈注射で用いたところ、3-5週間で糖尿病患者の末梢神経障害の症状を軽減したことが報告されています。
日本国内では医薬品(適応は「激しい肉体疲労時にリポ酸の需要が増大したとき」など)としてのみ取り扱われていましたが、2004年より一般のサプリメントに配合しても良い成分となりました。糖代謝の促進や抗酸化作用があるので、ダイエット効果や抗老化や美容を目的としたサプリメントとして人気があります
近年、アルファリポ酸の抗がん作用が報告され、がんの再発予防や治療への利用が注目されています

【αリポ酸の抗酸化作用】

αリポ酸は分子内に2つのイオウ原子を含み、酸化型還元型(dihydrolipoic acid)の2つの型があります。吸収されたアルファリポ酸は体内で還元型のジヒドロリポ酸に変換されます。 同じイオウを含むグルタチオンは、還元型しか抗酸化作用を示さないのに対して、アルファリポ酸は、酸化型も還元型も両方とも抗酸化作用を示すのが特徴です。2つの硫黄原子が酸化と還元のサイクルを形成してフリーラジカルを消去するからです。
抗酸化剤として、フリーラジカルを消去し、遷移金属をキレートして排除し、細胞内の抗酸化物質であるグルタチオンやビタミンCの量を増やす作用があります。

理想的な抗酸化剤とは、1)食事から摂取できる、2)細胞内や組織内に移行して効果を発揮する、3)細胞膜と細胞質の両方で働く、4)他の抗酸化物質の働きを高める、5)毒性が低い、といった特徴をもつものです。
アルファリポ酸はこれらの全ての条件を満たす、唯一の天然抗酸化物質と言われています。すなわち、アルファリポ酸は抗酸化剤として次のような特徴を持っています。
1)活性酸素や一酸化窒素ラジカルなどのフリーラジカルを直接消去します
2)グルタチオン、ビタミンC、ビタミンEの抗酸化力を再生します。これらの抗酸化物質は酸化されると抗酸化力を失いますが、ジヒドロリポ酸はこれらの酸化した物質を還元して、これらの抗酸化力を再生します。アルファリポ酸は脂溶性と水溶性の両方の性質をもつので、ビタミンC(水溶性)とビタミンE(脂溶性)のどちらの還元にも寄与します。
3)グルタチオンの合成酵素であるgamma-glutamylcysteine ligaseの産生を高め、グルタチオン産生に必要なシステインの細胞内取り込みを促進し、グルタチオンの産生を高めます
4)フリーラジカルを発生する鉄や銅などのフリーの金属イオンをキレート(結合)することによって活性酸素の産生を抑えます
5)多くの抗酸化物質は親水性(水溶性)か疎水性(脂溶性)のどちらかの性質しか持ちませんが、アルファリポ酸は親水性と疎水性の両方の性質を持ちます。したがって、細胞膜でも細胞質でも核でも働き、蛋白質や脂肪など全ての細胞内成分の酸化を抑制します。血液中の物質の酸化も抑制します。
6)酸化ストレスを軽減することによって、発がんや炎症性疾患の増悪に関連する転写因子のNF-κBの活性化を抑制します

以上のような複数の機序によって、アルファリポ酸は強い抗酸化作用を示します。

【αリポ酸の抗がん作用】

アルファリポ酸の摂取は、がんの発生や再発の予防、がん細胞の増殖抑制とアポトーシス(細胞死)誘導、がんの悪性進展の抑制、などの効果が報告されています。以下のような作用機序が報告されています。
1) 酸化ストレスや炎症によって活性化される転写因子のNF-κBは、がん細胞の増殖や抗がん剤抵抗性を促進します。アルファリポ酸は強い抗酸化作用によってNF-κBの活性を低下させ、がん細胞の増殖を抑え、抗がん剤が効きやすくする効果があります
2) 細胞周期において増殖を促進する蛋白質の活性や量を低下させます。さらに、アポトーシスを阻害する因子(bcl-2)の発現を抑え、アポトーシスを促進する因子(bax)の発現を高め、アポトーシスを実行するチトクロームCやAIF(apoptosis inducing factor)のミトコンドリアから核への移行を促進します。これらの複数の機序によって、がん細胞の増殖を止め、アポトーシス(細胞死)を起こりやすくします。多くのがん細胞に対して直接的な抗腫瘍作用を示します。
3) がん細胞はミトコンドリアでの酸化的リン酸化の活性が低下しているために、アポトーシスが起こりにくくなっているという考えがあります。アルファリポ酸はTCAサイクルのピルビン酸脱水素酵素複合体とアルファケトグルタル酸脱水素酵素複合体を活性化してミトコンドリアの酸化的リン酸化を高める作用があり、その結果、がん細胞を死にやすくすることが報告されています。(後述)
4) 抗がん剤による神経障害や腎臓障害などの副作用の軽減作用や症状の改善効果が報告されています。抗がん剤(ドセタキセル+シスプラチン)による末梢神経障害を軽減する効果が報告されています。ドキソルビシンの心臓障害を軽減する効果が報告されています。

正常細胞とがん細胞に対するαリポ酸の2方向性の作用
活性酸素を消去するαリポ酸の抗酸化作用は、正常細胞に対して酸化ストレスを低下させ、細胞の酸化障害を軽減する作用を示します。
しかし一方、がん細胞に対しては、がん細胞で低下しているピルビン酸脱水素酵素の活性を高め、TCA回路と酸化的リン酸化による活性酸素の産生が高めることによって酸化ストレスを増加させて、がん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導します。(下図)

【αリポ酸の服用法と副作用】

人間では、αリポ酸は主に肝臓で合成されています。内因性のαリポ酸の血中濃度は1〜25ng/mlで、ジヒドロリポ酸(DHLA)は33〜145ng/mlと報告されています。
補酵素としての作用には十分な量が体内で合成されています。
しかしながら、αリポ酸の産生量は年齢とともに低下し、糖尿病など多くの疾患で、αリポ酸の産生は低下します。このため、食事やサプリメントから摂取量を増やす必要があります。
動物性食品では肉類に多く含まれ、植物性食品では、ほうれん草、ブロッコリー、トマト、豆類、米糠などに多く含まれます。
しかし、食品から摂取される量は少なく、薬効を期待するにはサプリメントからの摂取が必要です。
例えば、サプリメントで1日200〜600mg摂取するのは、食事からの摂取量の1000倍くらいの量に相当します。したがって、アルファリポ酸を治療に使用する場合は、サプリメントからの摂取が必要です。
アルファリポ酸の摂取量については、抗酸化作用だけであれば、1日20〜50mgで十分ですが、がん治療の目的では、多くの臨床試験の結果などから、1日300〜600mgの摂取が適当です。
糖尿病性神経症にアルファリポ酸を1日600〜1200mgの投与で神経の痛みや感覚低下、麻痺が改善しています。抗がん剤による神経障害の治療にも1日600mg前後の服用が推奨されます。
食後の服用はアルファリポ酸の吸収を低下させるので、通常、食事の1〜2時間前の服用が推奨されています。
内服で吸収は早く30〜60分で血中濃度はピークに達します。
血中の半減期は30分と短く、血中で蓄積することはありません。
1日600mgのアルファリポ酸を3週間連続で注射で投与しても、副作用は認めず、糖尿病性神経症の改善に有効でした。
大量(1日1200mg以上)に投与したときの副作用として、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、倦怠感、不眠が見られます。
血糖を低下させる作用があるので、血糖降下剤を服用中は注意が必要です
アレルギー反応として発疹やかゆみが見られることもあります。
尿の臭いが強くなることもあります。

上記の投与量はラセミ体のαリポ酸を使った場合も推奨量です。ガンマ・シクロデキストリンで包接したR体-αリポ酸のみの製品を使用すれば、ラセミ体の数分の1で同じ効果が期待できます。
当クリニックで販売している「R体-αリポ酸 & セレン」に使用されているガンマシクロデキストリンで包接したR体-αリポ酸は、通常の製品で使用されているラセミ体のαリポ酸と比較してαリポ酸本来の薬効が高く、本製品の1日分の66mgのR体-αリポ酸は、通常のラセミ体のαリポ酸の500mg以上の効果が期待できます。

【酸化的リン酸化の促進によるがん治療】

ミトコンドリアは細胞の活動に必要なエネルギーを産生する働きを行っています。すなわち、ブドウ糖から細胞質で解糖系で産生されたピルビン酸を取り込み、酸素を使ってさらにエネルギー(ATP)を産生します。さらに、ミトコンドリアは、細胞がアポトーシスで死ぬ過程でも重要な役割を果たしています。
がん細胞では、ミトコンドリアでの酸化的リン酸化によるエネルギー産生が低下し、代わりに酸素を使わない嫌気性解糖系でのエネルギー産生が亢進しています。がん細胞でミトコンドリアの活性が低下していることは、がん細胞がアポトーシスを起こしにくくなっていることと関連していると考えられています。すなわち、ミトコンドリアを活性化して酸化的リン酸化を促進すると、がん細胞が死にやすくなることが報告されています
実際に、ミトコンドリアの活性を高めると、がん細胞が死にやすくなることが培養細胞や動物実験の研究で明らかになっています。
たとえば、ジクロロ酢酸ナトリウムはピルビン酸脱水素酵素キナーゼを阻害してピルビン酸脱水素酵素を活性します。(ピルビン酸脱水素酵素キナーゼはピルビン酸脱水素酵素を不活性化します。)
ジクロロ酢酸ナトリウムを使うとミトコンドリアが活性化されてがん細胞が死んで行くことが報告されています。
αリポ酸も、ビルビン酸脱水素酵素の補酵素として活性を高めることによってミトコンドリアの酸化的リン酸化を高めます。したがって、がん細胞を死滅しやすくする効果が期待できます。
がん細胞のミトコンドリアにおける酸化的リン酸化を活性化する方法として、アルファリポ酸とジクロロ酢酸ナトリウムとビタミンB1の組み合わせは、試してみる価値があるがんの代替治療の一つです。
(がん細胞の酸化的リン酸化の活性化についてはこちらへ)

【セレンはグルタチオン・ペルオキシダーゼの働きに必要な微量元素】

セレン(またはセレニウム)は体に必須の微量元素の一つで、セレンの摂取不足はがんや心臓病病の発症リスクを高めることが知られています。
体の抗酸化力を高めるためには、抗酸化物質(ビタミンC,ビタミンE,ポリフェノール,アルファリポ酸,CoQ10など)を取り入れえるだけでなく、体に備わっている抗酸化酵素(活性酸素消去酵素)の働きを高めることも大切です。
種々の微量元素が抗酸化酵素の活性に必須であり、その中でセレン(またはセレニウム)は過酸化水素を水と酸素に分解するグルタチオン・ペルオキシダーゼの活性に必要です。セレンを補充することは、体の抗酸化力を高め、老化やがん予防に効果があることが明らかになっています。
私たちの体は肺から取り入れた酸素を利用して、細胞のミトコンドリアでエネルギーであるATPを効率よく生産しています。しかし、その一方で、活性酸素が発生して、細胞のDNAや蛋白質や脂質を酸化するため、老化やがんの原因となります。
このような活性酸素の害を防ぐため、種々の抗酸化酵素や抗酸化性物質といった活性酸素を消去するための防御システムが体には備わっています(図)。

図:活性酸素の生成と消去 活性酸素の生成と消去には種々の微量元素が関与している。セレン(Se)は過酸化酸素を分解するグルタチオン・ペルオキシダーゼの活性に必要。

酸素(O2)がエネルギー産生や種々の酵素反応や炎症細胞の活動に使われると、電子が一個余分についたスーパーオキシド(O2-が発生します。スーパーオキシドはスーパーオキシド・ディスムターゼ(SOD)という抗酸化酵素によって過酸化水素(H2O2)に変換され、さらにカタラーゼグルタチオン・ペルオキシダーゼによって水と酸素に変わります。
過酸化水素が鉄や銅イオンなどと反応して生成されるヒドロキシ・ラジカル(・OH)は酸化力が極めて強いため、細胞の酸化障害の主要な原因となっています。したがって、過酸化水素を片っ端から水と酸素に変換してくれるグルタチオン・ペルオキシダーゼの働きを高めてやることは、体の酸化障害を予防する有効な手段となります。
グルタチオンは3つのアミノ酸(グルタミン酸、システイン、グリシン)から成る物質で、細胞内に大量に存在します。グルタチオンの中のシステインに含まれるSH基が電子供与体となり、フリーラジカルに電子を与えて安定化させる働きがあります。
細胞内には還元型グルタチオン(GSH)として存在し、電子を与えたあとは2量体(GSSG:酸化型グルタチオン)に変化して安定になるため、フリーラジカルによる電子の連続的な奪い合いを止めることができます。酸化型グルタチオン(GSSG)はグルタチオン・レダクターゼがNADPHからの電子をGSSGに転移してGSHに戻ります。
この還元型グルタチオンを電子供与体として過酸化水素を水と酸素に分解したり、脂質過酸化物を還元して無毒化するのがグルタチオン・ペルオキシダーゼです。
グルタチオン・ペルオキシダーゼはフリーラジカルや活性酸素に対する生体防御において重要な役割を担っています。この酵素はセレンをセレノシステイン(アミノ酸の一種のシステインに含まれるイオウ原子がセレニウムに置き換わっている)の形でその酵素活性部位に持っています。血漿中のグルタチオン・ペルオキシダーゼ量はセレン欠乏の指標として測定されています。つまり、セレンが欠乏するとグルタチオン・ペルオキシダーゼの量が減って体の抗酸化力が低下することになります
セレンが必要な蛋白質はグルタチオン・ペルオキシダーゼ以外にも、チオレドキシン還元酵素(thioredoxin reductase)など25種類くらいあると言われていますので、セレニウムの欠乏は抗酸化力の減弱だけでなく、様々な細胞の働きに支障がでてきます。セレンが欠乏すると酸化ストレスにたいする抵抗力がなくなり、免疫力も低下して感染症にかかりやすくなります。セレンは精子の運動能を高める作用や心臓疾患や白内障を予防する効果も知られています。体の抗酸化力を高めて、脂質の過酸化を抑制することによって動脈硬化の進展を抑えます。抗がん剤治療による心臓障害を予防する効果も報告されています。

【セレンのがん予防効果】

動物に様々な発がん物質を投与してがんを発生させる実験で、セレンの発がん予防効果が示されています。人間の疫学研究でも、セレンの摂取量とがんの発生率が逆相関することが報告されています。たとえば、土壌中のセレン濃度が高い地域ほどがん発生率が少ないという研究がアメリカから発表されています。セレン濃度が高い地域に育つ農作物はセレンの含量が多く、それを食べる住民の血中セレン濃度も高くなって体の抗酸化力が増すことががん予防につながると予想されています。血中セレンの濃度が高いと、活性酸素や発がん物質によるDNAのダメージが軽減して発がんが抑えられると考えられています。
セレノメチオニンの形で1日200μgのセレンをサプリメントとして服用すると、全がんの死亡率が半分に減少することが報告されています。この研究では、前立腺がん、肺がん、大腸がんの発生率が低下することも明らかになっています。(JAMA 276:1957-1963, 1996)
セレンの投与によって消化器系のがんや膀胱がんの発生率が低下することも報告されています。
がんの治療(手術や放射線)中には、がん細胞に対する細胞性免疫の応答性は低下しますが、1日200μgの亜セレン酸ナトリウム(sodium selenite)の補充を行うと、細胞性免疫の応答性は増強するという報告があります。セレンはナチュラルキラー細胞の活性を高め、Tリンパ球の数を増やし、インターフェロンの産生を高めるなど、免疫力を総合的に高める効果があります。
セレンには抗酸化力や免疫力の増強だけでなく、がん細胞のシグナル伝達系に作用して、細胞増殖を抑え、細胞死(アポトーシス)を誘導する効果があることも報告されています。DNA修復酵素の発現を高める効果も報告されています。
 抗酸化力を増強するため、がんの化学療法や放射線療法の毒性を軽減し、がん治療の効果を高めることも期待できます。したがって、がんの治療や再発予防においては、1日200マイクログラム程度のセレンを補充することは有効と言えます
セレンは海藻や穀物や肉など多くの食品に含まれています。ニンニクにはセレンが豊富に含まれていてニンニクのがん予防効果の一部はセレンが関連しています。
健康維持や病気の予防のためにセレンは1日50〜200マイクログラムが必要といわれています。日本では、通常の食事で必要量のセレンは摂取できていると言われています。しかし、食事からの摂取が不足しがちながん患者さんの場合は、1日200μg程度までの補充は有用と考えられます。セレンを添加した培養液で増殖させたパン酵母を使ったサプリメントはセレンの他に多くの微量元素やビタミンなども豊富です。
1日に100-200マイクログラム のセレンは発がん物質によるDNAの変異や酸化障害を抑制し、発がん抑制やがんの進展予防に有効と報告されています。ただし、400マイクログラム以上の過剰の摂取は有害である可能性も指摘されています。

【亜鉛(Zn)は治癒力を高める必須ミネラル】

体内には3000以上の酵素があり、亜鉛はそのうち300以上の酵素と関わっています。亜鉛を必要とする酵素は、DNAの複製(細胞の分裂・増殖)や遺伝子の発現(DNAの遺伝情報から蛋白質を作りだす)など、生命活動の基本として働くものが多く、さらにDNAの修復や活性酸素の除去などに働く酵素にも関与しているので、老化やがんの予防に重要なミネラルと言えます。
亜鉛は免疫力増強に必須のミネラルです。亜鉛は細胞の成長と分裂に重要なカギをにぎっているため、亜鉛が不足すると免疫細胞の産生と働きがうまくいかなくなるからです。
亜鉛が欠乏すると、成長の遅延、食欲不振、感覚機能の異常(とくに味覚異常)、皮膚障害や脱毛、性力減退、免疫力低下、妊娠や胎児への影響、インスリンの合成や膵臓機能低下、脂質やアミノ酸代謝の障害、神経精神症状、行動異常、活動性の低下など様々な異常が現れます。
アトピー性皮膚炎の患者の毛髪には、健常者に比べて水銀などの体に有害なミネラルが多く、亜鉛などの必須ミネラルが少ないことが、症状の悪化に関連していることが示唆されています。亜鉛やセレンは有毒ミネラルの体内吸収を妨げ、排泄を促進します。また、かゆみを引き起こすヒスタミンの生成を抑える働きもあることから、亜鉛の補充はアトピー性皮膚炎の症状改善に役立つ可能性が指摘されています。

亜鉛はストレスによっても低下しやすいミネラルです。ストレスによってメタロチオネインという金属と結合する蛋白質が増加することが知られています。ストレス下で増加するメタロチオネインは肝臓で合成されますが、そのとき亜鉛が必要で、亜鉛は血液中から肝臓へと移動します。
ストレス下では活性酸素やフリーラジカルが各組織中で増大するため、これらを消去するSODやカタラーゼやペルオキシダーゼなどの酵素の活性に必要な亜鉛、銅、マンガン、鉄、セレンなどが消費されています。また、病気が治る過程では、体の治癒力や抵抗力が働くときに必要な多くの必須ミネラルが動員されて消耗されてしまいます。つまり、がん患者さんでは、亜鉛を消耗する状況にあり、治療による侵襲やストレスの強いほど血液中の亜鉛は低下することが知られています。
食事の味が判らないと感じる場合も亜鉛不足を疑います。味覚異常の原因として亜鉛の不足が関連していることが指摘されています。舌にあって味を感じる 味蕾 という細胞の働きに亜鉛は必要なミネラルであることが明らかになっています。

成人の亜鉛の1日あたりの推奨摂取量は15mgとされていますが、日本人の平均摂取量はその半分程度とかなり不足しています。多くのがん患者さんが亜鉛が不足していると推測され、亜鉛不足が治癒力や抵抗力の低下の原因にもなっています。
脂肪酸やクエン酸などによって亜鉛の消化管からの吸収は促進されますが、フィチン酸、ポリリン酸、食物繊維などによって吸収が阻害されます。ポリリン酸は加工食品の添加物として広く使われ、亜鉛と結合して亜鉛の吸収を阻害するので、加工食品が多くを占める食生活では欠乏しやすく、また食物繊維の多い食生活でも亜鉛は不足しがちになります。
亜鉛は毒性が低いので取りすぎても問題はないとされています。しかし、亜鉛の過剰な摂取は銅の吸収を妨げ、貧血を招く可能性は指摘されています。
亜鉛が多く含まれる食品として、牡蠣、豚レバー、するめ、ホヤ貝、ホタテ貝、牛肉、豚肉、たらこ、卵黄、アンコウ肝などがあります。
セレンと亜鉛はともに免疫力や抗酸化力を高めてがんを初めとして様々な病気の予防に効果がありますが、この両者は拮抗的で、亜鉛の摂取量を増やすとセレンの吸収は低下することが知られています。セレンの摂取が少ない地域はがんが多いことが報告されており、がん予防の目的でセレンのサプリメントが推奨されています。亜鉛が不足すると免疫力が低下して、がんが発生しやすいという指摘はあるのですが、亜鉛の豊富な食物を摂取している人ではがんの発生率が高いことも報告されています。この理由として、亜鉛の血中濃度が高いときにはセレンの血中濃度は低いという両者の拮抗関係を示唆する考えがあります。したがって、セレンと亜鉛をサプリメントで補充するときは、両者を一緒に補充することが大切です。