L-カルニチン(L-Carnitine)

【L-カルニチンのサプリメント】
米国, Pure Encapsulations Inc.社製
1カプセル当たり l-Carnitine-l-tartrate(l-カルニチン酒石酸塩)500mgとビタミンC 12mgを含有(フリーのL-カルニチンを340mg含有)
500mg/120カプセル入り
価格:6300円(税込み)

L-カルニチン単独では吸湿性が高いので、酒石酸を結合させて安定性を高めるようにしたのがl-Carnitine-l-tartrate(l-カルニチン酒石酸塩)です。l-Carnitine-l-tartrate(l-カルニチン酒石酸塩)500mg中にフリーのl-カルニチンを340mg含有します。
1日に2〜4カプセルを食間に服用します。

ご希望の方あるいはご質問のある方はメール(info@f-gtc.or.jp)か電話(03-5550-3552)でお問い合わせください。

【L-カルニチンとは】

脂質を燃焼してエネルギーを産生する際には、脂肪酸を燃焼の場であるミトコンドリアに運ばなければなりません。脂肪酸をミトコンドリアに運搬する役目を担うのがL-カルニチンです。 L-カルニチンが不足するとミトコンドリアでの脂肪酸の燃焼が障害されて、細胞におけるエネルギー産生が障害されてしまいます。脂肪酸はL-カルニチンが結合しないとミトコンドリアの中に入ることができないからです。
L-カルニチンはヒトの体内で合成されます。カルニチンの合成には2つの必須アミノ酸(リジン、メチオニン)、3つのビタミン(ビタミンC、ナイアシン、ビタミンB6)、還元型鉄イオンが必要で、これらの栄養素の一つでも不足すればカルニチンは不足することになります

L-カルニチンの合成は肝臓、腎臓、脳でのみ起こります。心臓と骨格筋のように、脂肪酸の酸化によって主なエネルギーを得ている組織は、カルニチンを合成できないため、血液中のカルニチンを取り込んで利用しています。

食事性カルニチンの主な供給源は肉類と乳製品であり、穀類、果物、野菜にはほとんど含まれていません。体内で合成されますが、がんの治療で体力が消耗したり、栄要素が不足するとL-カルニチンの欠乏がおこり、細胞内でのエネルギー産生が低下します。抗がん剤治療中には、腸粘膜の障害で食事性カルニチンの吸収が低下し、肝臓や腎臓機能のダメージで体内での合成が低下し、尿中の排泄も増えることが指摘されています。がんの代替医療では菜食主義を徹底する治療法もありますが、肉や乳製品を完全に排除する食事はカルニチンの不足を引き起こしやすくします。
L-カルニチンは体脂肪の燃焼を促進することで、ダイエットのサプリメントとして人気がありますが、細胞のエネルギー産生を高める効果があるので、様々な病気の治療にも応用されています。がん治療においても、抗がん剤治療による倦怠感や抑うつ気分を軽減する効果、悪液質を改善する効果が報告されています.

抗がん剤治療中をはじめ、がん患者が訴える倦怠感や体力低下に、体内でのL-カルニチンの不足の関与が指摘されています。カルニチンの不足は脳でのエネルギーの枯渇を引き起こし、抑うつ気分や思考力の低下の原因にもなります。
L-カルニチンが抗がん剤治療中の倦怠感や抑うつ気分を改善するという臨床報告があります。例えば、イタリアのUrbino病院の研究では、抗がん剤治療を受けた後、倦怠感を訴えた30人を対象に、L-カルニチンを1日4gを 7日間投与したところ、26人(87%)の患者で倦怠感が軽減しました。
抗がん剤のアドリアマイシンの心臓へのダメージをL-カルニチンが軽減したという報告もあります。
L-カルニチンは極めて安全性が高く、ヒトにおける臨床研究においても有意な副作用はまったく報告されていません。ただし、D-カルニチンは、天然のL-カルニチンの作用を阻害し、心筋および骨格筋におけるL-カルニチン欠乏症を生じさせますので、天然型のL-カルニチンを利用することが大切です。また、L-カルニチンは、いかなる薬物や栄養素とも相互作用が認められていません。カルニチンと補酵素Q10とを組み合わせると、相乗的に働くことがわかっています。
がん治療におけるL-カルニチンの有効性は多くの基礎研究や臨床研究で証明されています。以下のような報告があります。

L-カルニチンは進行膵臓がんの悪液質による体重減少を防ぐ

進行膵臓がんにおけるL-カルニチンの補充 – ランダム化多施設臨床試験(L-Carnitine-supplementation in advanced pancreatic cancer (CARPAN) - a randomized multicentre trial)Nutr J. 2012; 11: 52.
【要旨】
研究の背景:体重が10%以上減少するがん性悪液質は膵臓がんの予後を悪くする要因の一つである。L-カルニチンの欠乏ががん性悪液質の発症に関連していることが報告されている。
結果:152例の進行膵臓がん患者をスクリーニングし、72例を対象に前向き・多施設・プラセボ対照・ランダム化二重盲検臨床試験にて、L-カルニチン(4g)投与群とプラセボ群投与群に分け、12週間の投与を行った。
この試験を開始する前に患者は平均12±2.5kgの体重減少を起こしていた。12週間の試験期間後、ボディマス指数(body-mass-index: BMI)は、L-カルニチン投与群では3.4±1.4%増加したが、コントロール群(プラセボ投与群)では1.5±1.4%の減少であった。この差は統計的に有意であった(p<0,05)。さらに、栄養状態(body cell massと体脂肪)と生活の質(QOL)の指標はL-カルニチン投与群で改善した。
平均生存期間はL-カルニチン投与群が519±50日に対してコントロール群は399±43日で、L-カルニチン投与群の方が生存期間が延長する傾向を認めた(ただし統計的な有意差は認められなかった)。入院期間はL-カルニチン投与群で36±4日に対してコントロール群は41±9日で、L-カルニチン投与群の方が入院期間が短い傾向を認めた。
結論:今回の結果はまだ予備試験の段階で、より大規模な臨床試験で確かめる必要があるが、L-カルニチンのサプリメントでの補充は、進行膵臓がん患者に治療において臨床的な利益を与えることが示された。

【訳者注】
悪液質(あくえきしつ:cachexia, カヘキシー)というのは、慢性疾患の経過中に起こる主として栄養失調に基づく病的な全身の衰弱状態で、全身衰弱、羸痩(るいそう)、浮腫、貧血による皮膚蒼白などの症状を呈します。進行がんによる悪液質の場合、がんは宿主を無視して増殖するため体に必要な栄養素を奪い取り、さらにがん細胞から分泌される物質や老廃物の蓄積、炎症細胞からのサイトカインの過剰分泌、血液循環障害など多くのメカニズムが積み重なっています。
飢餓での体重減少は貯蔵脂肪の涸渇が主ですが、悪液質では骨格筋と体脂肪の両方が失われ、体力が急速に低下します。悪液質になると、食欲不振や倦怠感などの症状が現れ、治癒力や抵抗力が低下してQOL(Quality od Life, 生活の質)を悪くする原因となります。抵抗力が低下すると感染症が発生して、ますます体力がなくなり死亡の原因となります。 
悪液質の一つの基準は6ヶ月間で10%以上の体重減少ですが、進行膵臓がんの場合、80%以上の症例で悪液質が発症します。手術や抗がん剤治療が体重減少や悪液質を悪化させます。
がんの末期も死期を決める最大の要因は生体防御力や抵抗力のレベルにかかっています。がんの増殖を抑えることができなくても、がん患者の衰弱と死亡の直接的な原因である悪液質の状態を軽減できれば、延命効果が得られます
L-カルニチンは細胞内における脂質の代謝に不可欠で、不足するとミトコンドリアでの脂肪酸の燃焼が障害されて、細胞におけるエネルギー産生が低下してしまいます。脂肪酸はL-カルニチンが結合しないとミトコンドリアの中に入ることができないからです。
体脂肪の燃焼を促進することで、ダイエットのサプリメントとして人気がありますが、細胞のエネルギー産生を高める効果があるので、様々な病気の治療にも応用されています。癌においても、抗がん剤治療による倦怠感や抑うつ気分を軽減する効果が報告されています。
L-カルニチンはヒトの体内で合成されます。カルニチンの合成には2つの必須アミノ酸(リジン、メチオニン)、3つのビタミン(ビタミンC、ナイアシン、ビタミンB6)、還元型鉄イオンが必要で、これらの栄養素の一つでも不足すればカルニチンは不足することになります。
L-カルニチンの合成は肝臓、腎臓、脳でのみ起こります。心臓と骨格筋のように、脂肪酸の酸化によって主なエネルギーを得ている組織は、カルニチンを合成できないため、血液中のカルニチンを取り込んで利用しています。
食事性カルニチンの主な供給源は肉類と乳製品であり、穀類、果物、野菜にはほとんど含まれていません。体内で合成されますが、がんの治療で体力が消耗したり、栄要素が不足するとL-カルニチンの欠乏がおこり、細胞内でのエネルギー産生が低下します。抗がん剤治療中には、腸粘膜の障害で食事性カルニチンの吸収が低下し、肝臓や腎臓機能のダメージで体内での合成が低下し、尿中の排泄も増えることが指摘されています。
がんの代替医療では菜食主義を徹底する治療法もありますが、肉や乳製品を完全に排除する食事もカルニチンの不足を引き起こします。
したがって、抗がん剤治療中をはじめ、がん患者が訴える倦怠感や体力低下に、体内でのL-カルニチンの不足の関与が指摘されています。カルニチンの不足は脳でのエネルギーの枯渇を引き起こし、抑うつ気分や思考力の低下の原因にもなります。
Lカルニチンが抗がん剤治療中の倦怠感や抑うつ気分を改善するという臨床報告があります。例えば、イタリアのUrbino病院の研究では、抗がん剤治療を受けた後、倦怠感を訴えた30人を対象に、L-カルニチンを1日4gを 7日間投与したところ、26人(87%)の患者で倦怠感が軽減しました。
抗がん剤のアドリアマイシンの心臓へのダメージをL-カルニチンが軽減したという報告もあります。シスプラチンによる腎臓障害を防いだり、タキソールによる神経障害を軽減する効果も報告されています。

L-カルニチンは極めて安全性が高く、ヒトにおける臨床研究においても有意な副作用はまったく報告されていません。ただし、D-カルニチンは、天然のL-カルニチンの作用を阻害し、心筋および骨格筋におけるL-カルニチン欠乏症を生じさせますので、天然型のL-カルニチンを利用することが大切です。
また、カルニチンは、いかなる薬物や栄養素とも逆相互作用が認められていません。カルニチンとコエンザイムQ10とを組み合わせると、相乗的に働くことがわかっています。



L-カルニチンはがん性悪液質を緩和する

L-カルニチン:がんにおける多作用性の抗消耗治療に適したサプリメント(L-Carnitine: an adequate supplement for a multi-targeted anti-wasting therapy in cancer.) Clin Nutr. 31(6):889-895, 2012
【要旨】
研究の背景と目的:がんの増殖は脂肪組織と筋肉組織の減少による体重減少を引き起こす。
方法:高度の悪液質を引き起こすラットの主要のAH-130吉田腹水肝がん細胞を移植したラットにL-カルニチン(体重1kg当たり1g)を投与した。
結果:L-カルニチンの投与は、食餌摂取量と筋肉組織重量において著明な改善を示した。これらの効果により身体機能(身体活動の量、平均移動速度、総移動距離)は改善した。
L-カルニチンの投与は、プロテアソーム(タンパク質を分解する酵素複合体)の活性と、これに関連するユビキチンとC8プロテアソーム・サブユニットとMuRF-1の遺伝子の発現量を低下させた。さらに興味深いことに、L-カルニチン投与はcaspase-3(カスパーゼ-3)のmRNAの量を減らし、アポトーシスを制御する作用が示唆された。さらに、培養した筋肉細胞に50マイクロモルのL-カルニチンを添加すると蛋白質分解速度が著明に減少したので、蛋白分解を阻害する直接作用も示唆された。
結論:L-カルニチンの補充は、複数の作用機序によってがん性悪液質を改善する有効な治療法と結論できる

L-カルニチンはカルニチン・パルミトイル基転移酵素(carnitine palmityl transferase)の発現と活性を制御することによってマウスのがん性悪液質を緩和する。(L-carnitine ameliorates cancer cachexia in mice by regulating the expression and activity of carnitine palmityl transferase.)Cancer Biol Ther. 12(2):125-30. 2011
【要旨】
がん性悪液質は脂肪組織と筋肉組織の減少を伴う進行性の体重減少によって特徴づけられる。主に肝臓におけるカルニチン・パルミトイル基転移酵素IとIIの活性の低下による脂肪酸酸化の障害が、がん性悪液質の発生に関与する重要な要因である。最近の研究によってがん性悪液質の治療にL-カルニチンの投与の有効性が示されているが、その作用機序は不明である。
今回の研究では、がん性悪液質を起こしたマウスの肝臓におけるカルニチン・パルミトイル基転移酵素IとIIの活性と発現に対するL-カルニチンの作用を検討することを目的とした。
マウスに大腸がん細胞のcolon-26腺がん細胞を移植すると、食餌摂取量の低下と腓腹筋の筋肉量の減少と副睾丸の脂肪量の減少によって特徴づけられるがん性悪液質が発生した。さらに、がん性悪液質マウスでは、肝臓のカルニチン・パルミトイル基転移酵素IとIIのmRNA量と活性と血清中のフリーのカルニチンとアセチル・カルニチンの量は顕著に低下し、炎症性サイトカインの腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)とインターロイキン-6(IL-6)の血清濃度は上昇した。
がん性悪液質を呈したマウスに1日に18mg/kgのL-カルニチンを投与すると、食餌摂取量と腓腹筋の筋肉量と副睾丸の脂肪組織の量が増加し、血中のグルコースとアルブミン量が増加し、総コレステロール量は減少した。しかし、がん組織の増殖には影響しなかった。
がん性悪液質のマウスにL-カルニチンと投与すると、肝臓におけるカルニチン・パルミトイル基転移酵素IとIIのmRNA量と活性が上昇し、血清TNF-αとIL-6の量が減少した。これらの結果から、L-カルニチンは、血清TNF-αとIL-6量と、肝臓におけるカルニチン・パルミトイル基転移酵素IとIIの発現と活性に作用することによって、がん性悪液質を緩和することが示された。

病的状態におけるL-カルニチン補充の抗消耗作用の作用機序:基礎研究と臨床研究からの証拠
(Mechanisms underlying the anti-wasting effect of L-carnitine supplementation under pathologic conditions: evidence from experimental and clinical studies.)Eur J Nutr. 52(5):1421-42. 2013

【要旨】
目的:筋肉消耗や筋肉萎縮とも言われる骨格筋量の減少は、がんや感染症などの慢性疾患の症状としてよく見られる。筋肉の萎縮は患者の予後や生活の質に強い悪影響を及ぼすので、この筋肉消耗と防ぐ効果的な治療法を開発することは非常に重要である。
抗消耗作用をもったサプリメントとしてのL-カルニチンの有効性を評価するために、この総説では、動物実験や臨床試験の結果を詳細にまとめた。蛋白分解の亢進や蛋白合成障害、筋細胞核アポトーシス、炎症、酸化ストレス、ミトコンドリア障害などの病的状態における骨格筋の減少に関連するメカニズムに対してL-カルニチンやその誘導体(アセチル-L-カルニチン、プロピオニル-L-カルニチン)が有効であることを示している。
結果:動物実験と臨床試験の結果から、L-カルニチンの補充は、病的状態におけるタンパク質合成の亢進やタンパク質分解の抑制、細胞死(アポトーシス)の阻害、炎症過程の抑制によって窒素バランスを改善することが証明されている。
さらに、少なくとも動物実験の結果からは、L-カルニチンの補充は、酸化ストレスを予防し、ミトコンドリアの機能を良くすることを示す証拠がえられている。しかしながら、この効果に関しては臨床試験の数が少ないので、人間での効果はまだ確定的ではない。
結論:結論として、L-カルニチンの補充は病的な筋肉量の減少に関与しているメカニズムに作用して、筋肉量の減少を抑制する効果がある。この作用は、慢性疾患の患者におけるL-カルニチンの補充が異化を抑制し、疲労に関連する指標を改善する理由を説明している。
しかし、筋肉の消耗を抑制する治療法としてのL-カルニチンの有効性を確定するには、人間での適切な臨床試験(二重盲検、ランダム化、プラセボ対照、大規模試験)の実施が必要である。

訳者注:動物実験や小規模な臨床試験の結果からは、L-カルニチンが慢性疾患における筋肉量の減少などの悪液質や消耗状態を改善する効果が強く示唆されています。しかし、サプリメントの臨床試験は医薬品と違って研究費がなかなか得られないので、大規模は臨床試験の結果が得られていないという事情があります。有効性は十分に示唆されますが、大規模なプラセボ対照二重盲検ランダム化試験での有効性がでるまでは、その効果は確定できないということです。

抗酸化物質+L-カルニチン+セレコキシブはがん性悪液質を改善する

がん関連の食欲不振および悪液質を示す患者に対するカルニチン+セレコキシブ±酢酸メゲストロールの併用療法のランダム化第3相臨床試験 (Randomized phase III clinical trial of a combined treatment with carnitine + celecoxib ± megestrol acetate for patients with cancer-related anorexia/cachexia syndrome.)Clin Nutr 31(2): 176-182, 2012
【要旨】
研究の背景と目的:がん関連の食欲不振と悪液質(cancer-related anorexia/cachexia syndrome)の治療におけるカルニチン+セレコキシブ±酢酸メゲストロールの2剤併用(天然成分の抗酸化物質を含む)の効果を比較する第3相ランダム化非劣性試験を行った。主要評価項目(primary endpoint)は除脂肪体重(lean body mass)の増加と総身体活動の改善で、副次エンドポイント(secondary endpoint)は握力と6分歩行試験の評価による体力の増加で評価した。
方法:60例のがん患者を第1群(L-カルニチン4g/日+セレコキシブ300mg/日)と第2群(L-カルニチン4g/日+セレコキシブ300mg/日+酢酸メゲストロール320mg/日)の2群にランダムに2つのグループに分けた。すべての患者はポリフェノール(300mg/日)、αリポ酸(300mg/日)、カルボシステイン(2.7g/日)、ビタミンE,A,Cを組み合わせた抗酸化物質を基礎治療として投与した。治療期間は4ヶ月で、症例数は60例であった。
結果:主要および副次エンドポイントの両方において、2群の間に有意な差は認めなかった。除脂肪体重(二重エネルギーX線吸収測定法とCTで評価)と6分間歩行テストによって評価した体力は両群とも著明に増加した。副作用はきわめて軽微で無視できるレベルで両群に差は認めなかった。
結論:第1群の2剤併用(L-カルニチン+セレコキシブ)は酢酸メゲストロールを追加した第2群(L-カルニチン+セレコキシブ+酢酸メゲストロール)と比較して、効果の劣性を認めなかった(効果は同等)。
したがって、酢酸メゲストロールを追加しなくても、抗酸化物質とL-カルニチンとセレコキシブの併用による治療は、安全で安価で費用対効果の高い実施しやすい治療法として、がん性悪液質に治療に有効であることが示唆された

【訳者注】
がん性悪液質は炎症性サイトカイン酸化ストレスの増大によって発生するので、抗炎症作用抗酸化作用が有効であることが知られています。脂肪酸のミトコンドリアへの運搬に必要なL-カルニチンが、がん性悪液質状態のエネルギー産生を改善し体重を増やすことが報告されています。
シクロオキシゲナーゼ-2選択的阻害剤のセレコキシブ(celecoxib:商品名はセレブレックス、セレコックス)は抗炎症作用によって悪液質を改善することが報告されています。さらに、卵巣ホルモン製剤の酢酸メゲストロールも食欲を増進し体重を増やす効果が知られています。
この臨床試験では、抗酸化物質のサプリメントをベースにしてL-カルニチンとセレコキシブを併用した治療法に、酢酸メゲステロールを追加して効果が高まるかどうか比較しています。その結果、酢酸メゲストロールを追加しても効果に差は認めなかったということです。
酢酸メゲストロールを追加しなくても効果が同じであるので、抗酸化物質+L-カルニチン+セレコキシブで十分に効果が期待できるということになります。がん性悪液質の治療法を決める際、費用対効果の観点から参考になる研究結果だと思います。
がん性悪液質の改善にはサリドマイドやω3不飽和脂肪酸のドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)も極めて効果が高いので、抗酸化性サプリメント(ポリフェノールやαリポ酸など)にL-カルニチン、セレコキシブ(商品名;セレコックス)、DHAやEPA、サリドマイドなどを併用する治療はがん性悪液質の治療に効果が期待できると思います。

カルニチン欠乏が無くても、カルニチンを補えば、脂肪酸酸化を高めることができる。

健常成人における長鎖脂肪酸の酸化に対するL-カルニチンのサプリメントによる補充の効果(Effects of oral L-carnitine supplementation on in vivo long-chain fatty acid oxidation in healthy adults.)Metabolism 51 (11): 1389-91, 2002
【要旨】
L-カルニチンの基本的な作用機序に関する文献は多数あるが、健常な人間に正常な状態においてL-カルニチンをサプリメントとして経口投与したとき、脂肪酸の酸化に対する効果に関しては、不明な点も多い。カルニチン欠乏のある時には、L-カルニチンの補充が長鎖脂肪酸の代謝を正常化させることは良く知られている。
しかしながら、脂肪酸代謝に異常が無い健常人にL-カルニチンを投与した場合に、長鎖脂肪酸の代謝にどのような影響を及ぼすのかに関しては、検討されていない。
そこで、この研究では、L-カルニチンをサプリメントで投与(1日1gづつを3回、10日間服用)し、投与前と投与後で、同位元素(13C)で標識したパルミチン酸の酸化を測定した。その結果、L-カルニチンを投与すると、13CO2の呼気への排泄が著明に増加した。
この研究結果より、カルニチン欠乏や脂肪酸代謝異常が無い健常人においても、L-カルニチンをサプリメントで補うことによって、長鎖脂肪酸の酸化を高めることが明らかになった

【訳者注】
脂肪酸のうち、炭素の数が8〜12個の中鎖脂肪酸の場合は、消化管でグリセロールと脂肪酸に分解されたあと、中鎖脂肪酸は門脈から直接肝臓に運ばれ、すぐに肝臓のミトコンドリアで分解され、エネルギー産生に使用されます。中鎖脂肪酸はミトコンドリアに単独で入れます。
一方、炭素数が14以上の長鎖脂肪酸は、小腸で吸収されたあと、カイロミクロンとなってリンパ管へ入り、胸管から血液に入って、主に脂肪組織や筋肉組織に運ばれ、多くは貯蔵されます。エネルギーが必要になったとき、脂肪酸に分解され、ミトコンドリアに入って代謝されますが、このときL-カルニチンが必要です。つまり、L-カルニチンが無いと長鎖脂肪酸はミトコンドリアには入れないのです。
L-カルニチンは体内で合成され、肉や乳製品に豊富に含まれます。
したがって、健常な人では、体内にカルニチンが十分あるので、L-カルニチンをサプリメントで補充しても、意味が無い可能性もあります。しかし、この研究では、カルニチン欠乏の無い健常な人に対しても、L-カルニチンをサプリメントで補充すれば、長鎖脂肪酸の代謝を高めることができることが示されています。
つまり、ケトン食を実践するとき、中鎖脂肪酸だけでなく長鎖脂肪酸の摂取も増えますので、長鎖脂肪酸の代謝を促進するためにL-カルニチンをサプリメントで1日1〜3グラム程度補充する意味はあるようです。

L-カルニチンはヒストンのアセチル化を高めて、がん細胞の増殖を抑制する

L-カルニチンは内因性のヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤で、生体内(in vivo)および試験管内(in vitro)でがん細胞の増殖を選択的に阻害する(L-Carnitine Is an Endogenous HDAC Inhibitor Selectively Inhibiting Cancer Cell Growth In Vivo and In Vitro)PLoS One. 2012; 7(11): e49062.
【要旨】
L-カルニチンは、一般的には、脂肪酸を分解してクエン酸回路でATPを産生するために、長鎖脂肪酸のアシル基をミトコンドリアのマトリックスに運搬する役目が知られている。がん細胞ではATP産生は主に細胞質での解糖系に依存しているというワールブルグの理論に基づいて、我々は、L-カルニチンをがん細胞に投与すると細胞代謝の調節に異常を来して細胞死を誘導するのではないかと予想した。この研究では、ヒト肝細胞がん細胞株のHepG2とSMMC-7721と、胸腺細胞の初代培養、HepG2を移植したマウスを用いた。ATP量はHPLC(高速液体クロマトグラフィー)法にて測定した。細胞周期はフローサイトメトリーにて、細胞死と生存率はMTSにて測定した。遺伝子、mRNA発現、タンパク量は、それぞれgene microarray、real-time PCR、ウェスタンブロット法にて測定した。ヒストン脱アセチル化酵素の活性とヒストンアセチル化の状態は試験管内および培養細胞にて測定した。L-カルニチンとヒストン脱アセチル化酵素の分子レベルでの相互作用はCDOCKER protocol of Discovery Studio 2.0にて行った。
以上の実験にて、以下のことが明らかになった。
(1)培養細胞および移植腫瘍を使った実験系でL-カルニチンはがん細胞の増殖を選択的に抑制した。
(2)L-カルニチンの投与によって、がん細胞においてがん抑制遺伝子のp21cip1遺伝子の発現を選択的に高めたがp27kip1の発現は高めなかった。
(3)L-カルニチンは正常胸腺細胞とがん細胞の両方において、ヒストンのアセチル化を高め、アセチル化したヒストンの量を増やした。
(4)L-カルニチンはヒストン脱アセチル化酵素IとIIの活性部位に結合することによってこの酵素の活性を阻害し、ヒストンのリジンのアセチル化を高めた。
(5)L-カルニチンはp21cip1遺伝子の部分のクロマチンのアセチル化ヒストンの量を増やしたが、p27kip1遺伝子のクロマチンのアセチル化ヒストンの量には影響しなかった。
これらの結果は、L−カルニチンは脂肪酸のアシル基をミトコンドリアに運搬する役目の他に、ヒストン脱アセチル化酵素の内因性の阻害剤としても作用していることが示され、その生理的および病的意義の重要性が示唆された。