デヒドロエピアンドロステロン(Dehydroepiandrosterone :DHEA)

◉ デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)とは

私たちの体内では、様々なホルモンが生理機能を調節しています。ホルモンというのは、体内において特定の器官で合成・分泌され、血液など体液を通して体内を循環し、別の決まった細胞で生理機能を発揮する生理活性物質です。
デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)は、女性ホルモン(エストロゲン)および男性ホルモン(テストステロン)の前駆物質です。主に副腎皮質や肝臓、精巣でコレステロールから合成され、大部分は硫酸抱合体(DHEA-S)として血中に分泌されています。(下図)

図:デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)はコレステロールから副腎皮質で合成され、硫酸抱合されデヒドロエピアンドロステロン硫酸(DHEA-S)となる。DHEAは男性ホルモン(テストステロン)や女性ホルモン(エストラジオール)に変換される。。

DHEAの身体に対する作用は男性ホルモンの作用に類似します。男性ホルモンは、精子形成促進、骨・筋肉増殖作用があります。
分泌量は思春期に急激に高まり20代でピークを迎えますが、その後急激に分泌量が減少し、40代では約半分、70 歳から 80 歳までには若年者のレベルの 10% から 20% まで低下し、80代ではほとんど分泌されなくなってしまいます
DHEA と DHEA硫酸塩(DHEAS) は、人間の中で最も豊富なステロイドです。DHEAS は、血清中の遊離 DHEA の約 250 倍存在します。脳、骨、乳房、脂肪などの標的組織では、DHEAS はスルファターゼ酵素によって DHEA に変換され、さらにアンドロステンジオール、アンドロステンジオン、エストロン、テストステロン、ジヒドロテストステロン、17β-エストラジオールに代謝されます。
DHEAとDHEASの最高濃度は、20 歳から 30 歳の男性で観察され、10 歳ごとに約 10% ずつ徐々に減少します。 加齢に伴うDHEAの分泌量減少が関連する症状として、認知機能や記憶力の低下幸福感の低下うつ病の増加骨密度の低下肥満糖尿病心血管疾患の増加勃起不全性欲の低下などが報告されています。
中年および高齢者を対象としたデヒドロエピアンドロステロン補給の臨床試験では、これらの症状の改善が報告されています。
高齢になりDHEAが体内で合成されなくなってくると、男性ホルモンや女性ホルモンの合成量が低下するために老いるという考えがあります。そこでこれらの性ホルモンの元となるDHEAを補なって体を若返らせようというのがこのサプリメントの目的です。 米国では、体内で分泌量が減少したDHEAを補うと若さが戻り、性欲と性機能もアップする「若返りのサプリメント」あるいは「スーパーホルモン」として人気があります。

◉ DHEAの効能

デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)のサプリメントは気分、活力、幸福感を高め、様々なストレスに対する抵抗力を増強させると言われていますDHEAは、筋肉を増強し、体脂肪を減少させ、運動能力を向上し、免疫機能を高め、性欲を高める効果など、体全体を若返らせる効果があります
さらに、コレステロール値を下げ、アルツハイマー病患者の脳機能を改善し、全身性エリテマトーデスの症状を軽減します。

DHEAの低下は気分障害およびうつ病の発症と関連しており、DHEAの補給は、男性と女性の両方において気分と幸福感にプラスの効果を示します。
DHEAレベルの低下は、アテローム性動脈硬化症、心不全、心血管合併症、および全体的な死亡率のリスクを高めることが研究によって示されています

DHEA は血管平滑筋の弛緩に関与しています。内皮機能不全は、アテローム性動脈硬化症および心血管疾患の病因に寄与し、インスリン抵抗性の発症につながります。
DHEA は主に内皮細胞に独自の受容体を持っているため、その投与は、内皮依存的に血管拡張作用を有します。 DHEA は、可溶性グアニル酸シクラーゼの活性化を介してカリウム チャネルを活性化し、一酸化窒素 (NO) 合成の増加を介して内皮機能を高め、最終的に動脈を拡張することが示されています。

血管内皮細胞からの一酸化窒素(NO)放出の増加は、勃起不全の改善作用と関連しています。 女性では、DHEA は性的満足度、生殖能力、および加齢に伴う膣の萎縮を改善します。

高齢者では、DHEA は免疫調節作用を発揮し、単球、T 細胞受容体ガンマ/デルタ (TCRγδ) を発現する T 細胞、およびナチュラル キラー (NK) 細胞の数を増加させます
筋力と骨密度を高め、体脂肪と加齢に伴う皮膚萎縮を減らし、プロコラーゲン/皮脂の生成を刺激します
全身性エリテマトーデスでは、DHEA はステロイドを節約します。非盲検研究では、炎症性腸疾患患者の大部分で寛解を誘発しました。
DHEA/DHEAS は、喘息やアレルギーを予防するようです。T ヘルパー 2 アレルギー性炎症を軽減し、好酸球増加症と気道過敏性を軽減します。 動物実験では、DHEAの補充は寿命を延長する効果が報告されています。

図:デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)は様々な組織・臓器において多彩な抗老化作用を発揮する。

 

◉ DHEAの新規の作用メカニズム

DHEAの作用は、より強力な性ホルモンであるテストステロンとエストラジオールへの変換を介して仲介されるホルモン作用と従来考えられてきました。これにより、アンドロゲンとエストロゲンの受容体が活性化され、それぞれのホルモン効果が誘発されます。
しかし、最近の研究は、DHEA の作用が他の複数の受容体にも関与していることが示されています。 例えば、DHEAは血管内皮細胞のeNOS(内皮型一酸化窒素合成酵素)を活性化しますが、このeNOSの活性化はエストロゲン、アンドロゲン、またはプロゲステロン受容体のアンタゴニストによって阻害されず、DHEA による eNOS の活性化が別の特異的受容体及びシグナル伝達系を介することが明らかになっています。

DHEAは血液脳関門を容易に通過します。動物実験では、DHEAが5-ヒドロキシトリプタミン(5-HT)ニューロンの活動を増加させ、この効果が抗うつ作用と関連していると報告されています。
また、ドーパミン、グルタミン酸、γ-アミノ酪酸などの神経伝達物質も影響を受けることが指摘されており、これが気分や幸福感の向上と関連している可能性が示唆されています。 気分障害や抑うつに対する改善効果も、性ホルモンとは関連のない効果と思われます。

DHEA は、血中コルチゾールのレベルを低下させます。 コルチゾールの増加は、高齢者の身体的ストレスに続く免疫力の低下に寄与する可能性があり、認知障およびストレス関連の精神障害の発症に寄与する可能性があります。慢性的に上昇したコルチゾールレベルは、肥満、糖尿病、心臓病、気分障害、および記憶障害の発症を促進します
コルチゾールは筋肉組織を分解し、複数のメカニズムを介して精巣のテストステロン合成を抑制します。
従って、DHEAは高齢者における免疫力低下や筋力低下を抑制し、がんや感染症や心臓病や糖尿病を減らし、全死因死亡率を低下させます。

◉ 服用量

サプリメントの用量は、40歳以上の健常人で、男性は一日20〜50mg、女性は一日10〜30 mgが一般的といわれています。 若年者は既に体内でDHEAが十分量合成されているため、40歳以下の人は摂取すべきではありません。

◉ 副作用

DHEAは生体内で合成されるホルモンであるため、サプリメントとして摂取しても安全であるという考えがありますが、DHEAはステロイドの一種でもあり、実際は多くの副作用が報告されています。
DHEAの身体に対する作用は男性ホルモンに類似しています。したがって、男性ホルモンを元々体内で合成している男性は影響が少ないと言われています。
一方、
女性では男性ホルモンの過剰作用(多毛症、顔面皮脂分泌量増加、皮膚炎)が現れることがあります。普段体内で男性ホルモンをほとんど合成していない女性が、DHEAサプリメントを摂取することで、一時的に多量のDHEAが男性ホルモン変換され、急激に男性ホルモンの量が増えるためと考えられています。

長期摂取による安全性は確立していません。長期摂取後の摂取中止によりステロイド特有のリバウンドが起こる可能性もあります。 長期連用後の服用中止による倦怠感、肝炎、不整脈などが報告されています。 長期間あるいは大量の摂取はホルモン感受性のがん(前立腺がん、乳がん、卵巣がん)のリスクを高める危険性が示唆されています。

◉ 注意

前立腺がん、乳がん、卵巣がんの患者の方はがんの進行を早める恐れがあるため摂取禁忌です。
妊娠中や授乳中の女性の摂取も推奨できません。
国際オリンピック委員会(IOC)ではDHEAを蛋白同化ステロイド(筋肉増強剤)の一つとして、ドーピング薬物の対象にしています。
DHEAを摂取した場合ドーピング検査で陽性となるため、スポーツ選手は注意が必要です

日本ではDHEAを含む製品は法律上医薬品とみなされるため、サプリメンントとして店頭での販売は出来なませんが、海外からの個人輸入なら入手可能です。 しかし、医薬品に区分される成分で作用が強いことから、自己判断で利用せず、DHEAに詳しい医師や薬剤師の管理のもとでのみ使用すべきです。

◉ DHEAをサプリメントとして摂取する時に知っておくこと

デヒドロエピアンドロステロン(DHEA) は栄養補助食品として多くの注目とメディアの関心を集めており、米国など一部の国では店頭販売されています。 ヨーロッパでは、フランスのように禁止されているか、スイスのように処方箋が必要です。

老化の影響を緩和することは、長寿で健康的な生活を手に入れ、より良い生活の質を維持するための夢です。DHEA は加齢に伴う障害にいくつかのプラスの効果があると主張されているため、DHEAはアンチエイジング薬として提案され、「若返りのホルモン」と見なされています。

理論的には、ホルモンの必要性に応じて組織で変換されるため、副作用は少ないと考えられています。しかし、理想的なアンチエイジング・サプリメントというにはまだ十分なエビデンスはありません。 いくつかの研究は、老化の一部として DHEA レベルが低下することを示しています。この減少が老化プロセスの生理学的反映と見なされるべきか、または DHEA の積極的な投与が加齢に伴う障害の予防と治療に役立つかどうかはまだ明らかではありません。 したがって、DHEA を使用する場合は、有効性だけでなく安全性に関する長期的な影響が依然として不確実であるという事実を理解して、自己責任での使用になります

DHEA :25mg x 180カプセル
製造:DaVinci Laboratories,  USA
価格:8000円(消費税込み)

1日に1カプセル(25mg)から3カプセル(75mg)を服用します。1日3カプセル服用して1個が60日分になります。

ご希望の方はメール(info@f-gtc.or.jp)か電話(03-5550-3552)でお問い合わせ下さい。

DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)は日本では医薬品でもサプリメントとしても承認されていません。当院では、米国でサプリメントとして販売されている製品を、薬監証明を取得して、厚労省の許可を得て輸入し、処方薬として治療目的で使用しています。

主に、高齢男性のフレイル(虚弱)やサルコペニア(加齢に伴う筋肉減弱)を予防し、健康寿命を延ばす目的で治療に使用しています。