β-カリオフィレンのカンナビノイド受容体タイプ2(CB2)活性化作用

β-カリオフィレンは食品添加物として日本や欧米で認可されている安全性の高い植物由来の精油です。β-カリオフィレンはカンナビノイド受容体タイプ2(CB2)の選択的アゴニストであることが報告されています。 CB2の活性化は、がんや疼痛性疾患や炎症性疾患など多くの病気の治療に役立つことが明らかになっています。 目的に応じて1日に100mgから1000mg程度を2〜3回に分けて、ジュースや油(オリーブオイルなど)に混ぜて摂取します。
銀座東京クリニックでは食品添加物としてのβ-カリオフィレンを30g/6000円で処方薬としてがんや疼痛性疾患などに使用しています。ご希望の方はメール(info@f-gtc.or.jp)でお知らせ下さい。

【体内には大麻成分(カンナビノイド)が結合する受容体が存在する】

薬用植物の活性成分の研究から、体内の受容体が発見された例が幾つかあります。大麻草に含まれるカンナビノイド(大麻草に含まれる薬効成分の総称)が結合するカンナビノイド受容体もその一つです。
大麻草(マリファナ)には400を超える化合物が含まれていますが、そのうち約80がカンナビノイドと呼ばれる大麻草固有の成分です。
カンナビノイドは体の中のカンナビノイド受容体に結合することによって様々な薬効を発揮します。
カンナビノイド受容体は動物が大麻成分を薬として利用するために存在する訳ではありません。もともと生体内で内因性のリガンド(受容体に結合して活性化する成分)があって特異的な受容体との間にシグナル伝達系を作っていたものが、その受容体に結合する成分が植物にたまたま含まれていたというだけです。
恐らく、このような植物成分は、動物に対する毒として存在しているものと考えられます。
動物に有毒な成分を持っている植物は生存や繁栄に有利になるので、このような毒を持った植物の進化は促進されると考えられます。そして、このような植物毒を人間は医療に利用してきました。
大麻は古くから医薬品として人類が使用してきました。その薬効は経験的に見つかったのですが、近代の研究によって、それらの成分が作用する受容体やシグナル伝達系が存在することが明らかになってきたのです。

【内因性カンナビノイド・システムが体の働きを調節している】

大麻由来のカンナビノイドが結合する受容体が存在することは、体内にカンナビノイド受容体に作用する体内成分が存在することを意味しています。カンナビノイド受容体と反応する体内物質を内因性カンナビノイドと言います。
カンナビノイドが結合する受容体としてCB1とCB2の2種類が見つかっています。 1964年にイスラエルのワイズマン研究所の ラファエル・メコーラム(Raphael Mechoulam) 博士らによって、気分高揚や幻覚などの大麻の精神変容作用の原因成分としてΔ9-テトラヒドロカンナビノール(THC)が分離され、1988年にTHCが直接作用する受容体が発見されカンナビノイド受容体タイプ1(CB1)と命名されました。
CB1は中枢神経系のシナプスに存在し、さらに末梢神経系や、筋肉組織や肝臓や脂肪組織など非神経系の組織にも分布しています。
数年後にタイプ2の受容体(CB2)の遺伝子が発見されました。CB2は主に免疫系の細胞に発現しています。
1992年に内因性カンナビノイドのアナンダミド(anandamide)が発見されました。アナンダミドはサンスクリット語の「内なる至福」を意味します。 さらに、2番目の内因性カンナビノイドとして2-アラキドノイルグリセロール(2-arachidonoylglycerol; 2-AG)が発見され、さらにいくつかの内因性アンナビノイドが見つかっています。
内因性のカンナビノイドが同定されると、それらの生合成や分解に関与する酵素や、受容体とリガンドが結合したあとのシグナル伝達経路が解明されました。 つまり、体内には内因性カンナビノイド(アナンダミドや2-アラキドノイルグリセロールなど)と、それらを合成する酵素や分解する酵素、内因性カンナビノイドが結合するカンナビノイド受容体によって内因性カンナビノイド・システムが構成されています。

内因性カンナビノイドのアナンダミドと2-アラキドノイルグリセロールは細胞膜のリン脂質からホスホリパーゼによって生成されるアラキドン酸の代謝産物です。
 内因性カンナビノイドは生理的あるいは病的刺激によってオンデマンド(要求に応じて)に細胞膜のリン脂質を分解して合成・分泌されて、カンナビノイド受容体を刺激して生理作用を示します。
 内因性カンナビノイド・システムは極めて複雑なネットワークやメカニズムで生体機能を制御しています。

【受容体は外部の情報を細胞内に伝える】

受容体(Receptor)は脂質二重層の細胞膜を貫通するように存在し、細胞外の刺激や情報を細胞膜で囲まれた細胞内部に使える役割を担っています。
受容体の細胞外側には、特定のシグナル分子(ホルモンや増殖因子や医薬品など)が結合できる「鍵穴」のような構造が存在し、その鍵穴にシグナル分子が結合すると、それが引き金になって様々な化学反応を細胞内で引き起こす働きを持っています。
この連鎖的な反応を通じて情報が細胞内に伝達され、最終的に特定の機能をもったタンパク質の遺伝子発現を促進したりして、細胞の生理機能の変化を引き起こします。このような一連の経路をシグナル伝達経路と呼びます。

図:細胞は脂質二重層から成る細胞膜によって細胞外と細胞内が分けられている。細胞膜を貫通するように存在する受容体に特有に結合するシグナル分子(リガンド)が結合する(①)と、その受容体は活性化し(②)、連鎖的な化学反応を引き起こす(③)。このようなシグナル伝達によって細胞外の情報が細胞内に伝達され、最終的に特定の機能を持った遺伝子の発現や酵素の活性化などによって、細胞機能に変化が生じる。

【カンナビノイド受容体はGタンパク質共役型受容体】

細胞膜受容体には多くの種類が知られていますが、そのうちもっとも大きなグループを構成しているのがGタンパク質共役型受容体(G protein coupled receptor : 略してGPCR)です。 α-ヘリックスというらせん構造で親油性の部分が、細胞膜(脂質二重層)を内外に行ったり来たりを7回繰り返しているので「7回膜貫通型受容体」という名称で呼ばれることもあります。
GPCRが活性化されると、細胞内のGタンパク質と呼ばれるタンパク質を介してシグナルを細胞内に伝達するために、「Gタンパク質共役型受容体」という名前がつけられています。
Gタンパク質はグアニンヌクレオチド結合タンパク質の略称です。Gタンパク質はα、β、γの3つのサブユニットから構成される複合体(三量体)を形成しています。 Gタンパク質は通常、GDPが結合した状態で存在していますが、この状態のGタンパク質は不活性型であり、作用を現しません。 GPCRにリガンドが結合して活性化されると、GDP(グアノシン二リン酸)が遊離してGTP(グアノシン三リン酸)が結合して活性型となって細胞内のシグナル伝達を引き起こします。
Gタンパク質の活性化は数百種類にも及ぶセカンド・メッセンジャーの産生を制御します。例えば、アデニル酸シクラーゼ(adenylyl cyclase)に作用してATPからセカンド・メッセンジャーのサイクリックAMP(cAMP)への合成を制御します。ホスフォリパーゼC(Phospholipase C)に作用して細胞膜脂質のホスファチジル・イノシトール(phosphatidyl inositol)からセカンド・メッセンジャーとして働くジアシルグリセロールやIP3(インシトール三リン酸)の産生を制御します。 これらの作用は活性化されるGPCRの種類によって活性化される場合と阻害される場合があり、刺激されるGPCRの種類によって多様な作用を示します。(下図)

図:Gタンパク質共役型受容体(G protein coupled receptor : GPCR)は細胞膜を7回貫通する特徴的な構造から7回膜貫通型受容体(seven-transmembrane receptors)とも呼ばれている。細胞膜を貫通する部分をつなぐ細胞外のループ状の部分にシグナル分子が特異的に結合する鍵穴様の領域が存在する。Gタンパク質は細胞膜の細胞内側に存在し、α、β、γの3つのサブユニットから構成される三量体を形成している。αサブユニットはGTP( グアノシン三リン酸)あるいはGDP(グアノシン二リン酸)のどちらかを結合できる。三量体のGタンパク質はGDPが結合した不活性な状態で細胞膜に存在している。GPCRにリガンドが結合するとGPCRの構造が変化して三量体Gタンパク質のαサブユニットのGDPが外れてGTPが結合する。GTPが結合して活性化状態になったGタンパク質αサブユニットは、受容体(GPCR)やβサブユニットやγサブユニットと解離して、酵素やイオンチャネルなどに作用して、その下流のシグナル伝達経路を活性化する。このようなメカニズムでGPCRは光・匂い・味などの外来の刺激や、神経伝達物質・ホルモン・イオンなどの内因性の刺激を感知し、細胞内に伝達する働きを担っている。

GPCRは多くの種類の細胞に分布しており、光・匂い・味などの外来刺激や、神経伝達物質・ホルモン・イオンなどの内因性の刺激を感知して細胞内に伝達する役割を担っています。 例えば、光を感じて視覚に関わるロドプシン、におい物質に作用する嗅覚受容体、さまざまな生理現象を司る神経伝達物質(アドレナリン、ヒスタミン、セロトニンなど)の受容体などは全てGPCRの仲間です。 GPCRは酵母や原虫など単細胞の真核細胞でも外界の情報伝達に重要な働きを担っています。多細胞生物では進化の過程でさらに多くの種類のGPCRを持つようになっています。 人間ではGPCR遺伝子は1000種類以上が見つかっており、個々のGPCRは特定のシグナルに特異的に反応して生理機能を引き起こします。 カンナビノイド受容体もGタンパク質共役型受容体(GPCR)の一種です。

【内因性カンナビノイド・システムの異常が様々な疾患を引き起こしている】

カンナビノイド受容体タイプ1(CB1)は中枢神経系において様々な神経伝達調節を行っており、記憶・認知、運動制御、食欲調節、報酬系の制御、鎮痛など多岐にわたる生理作用を担っています。 しかし、CB1の過剰な活性化は多様な精神作用(気分の高揚や幻覚など)を示すという欠点を持っています。
大麻に含まれるカンナビノイドで最も含量の多いテトラヒドロカンナビノール(THC)はCB1とCB2を活性化し、鎮痛や食欲増進や吐き気を軽減する作用や筋肉けいれんを緩和する作用などがあります。
現在、エイズ患者の食欲不振や体重減少、抗がん剤治療による吐き気や嘔吐に対する治療に合成THCが医薬品として使用されています。しかし、THCを多く摂取すると、不眠やめまいや運動失調や気分の高揚などの副作用が問題になります。
一方、CB2のアゴニスト(受容体に結合して作用を示す作動薬)は、炎症を抑制する抗炎症作用や鎮痛作用があります。 CB1とCB2のアゴニストの混合物である植物カンナビノイドの副作用(有害作用)の多くはCB1のアゴニストによることが明らかになっており、CB1に作用せずCB2に選択的なアゴニストは有用な薬物になることが示唆されています。
CB2の活性化が有効な疾患として、様々な種類の疼痛、がん、神経系の炎症や変性による疾患、免疫異常、咳、炎症性疾患、心血管疾患、肝疾患、腎臓疾患、骨の異常、かゆみ(掻痒)などが報告されています。
選択的CB2受容体アゴニストによる治療効果が期待できる疾患として以下のような多くの疾患が報告されています。(Philos Trans R Soc Lond B Biol Sci. 2012 Dec 5; 367(1607): 3353–3363.の表1より)

手術後疼痛(acute or post-operative pain)、 慢性炎症性疼痛(persistent inflammatory pain)、神経障害性疼痛(neuropathic pain)、 骨転移を含むがん性疼痛(cancer pain including bone cancer pain)、 掻痒症(pruritus)、 パーキンソン病(Parkinson's disease)、 ハンチントン病(Huntington's disease)、 筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis)、 多発性硬化症(multiple sclerosis)、 自己免疫性ぶどう膜炎(autoimmune uveitis)、 エイズ脳炎(HIV-1 brain infection) 、アルコール性神経障害(alcohol-induced neuroinflammation/neurodegeneration)、 不安関連障害(anxiety-related disorders)、 双極障害や人格障害や注意欠陥・多動性障害や物質使用障害における衝動(impulsivity) 、コカイン依存(cocaine dependence)、 外傷性脳障害(traumatic brain injury)、 脳卒中(stroke)、 動脈硬化症(atherosclerosis)、 全身性硬化症(systemic sclerosis)、 炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease)、 アルコール性肝疾患(alcoholic liver disease)などの慢性肝障害(chronic liver diseases)、 糖尿病性腎症(diabetic nephropathy)、 骨粗しょう症(osteoporosis)、 咳(cough)、 がん(乳がん、前立腺がん、皮膚がん、膵臓がん、結腸直腸がん、肝臓がん、転移性骨腫瘍、悪性リンパ腫、白血病、神経膠腫など)

以上のように、CB2アゴニストは多くの疾患に対して治療効果を示す可能性が報告されています。

【香辛料や大麻草に含まれる精油成分βカリオフィレンはCB2の選択的アゴニスト】

テルペン類(テルペノイド)とは
植物体内でメバロン酸経路により生合成され、イソプレン骨格(C5H8)がいくつか結合してできた化合物の総称です。
モノテルペンはイソプレンが2個結合(C10H16)し、セスキテルペンはイソプレンが3個結合し、ジテルペンはイソプレンが4個結合したものです。
炭素が10個で構成しているC10のモノテルペン類と、炭素が15個(C15)で構成されるセスキテルペン類は揮発性が高く、空気中を漂いにおいを作り出しています。 炭素数が20のジテルペン以上になると分子量が大きくなるため揮発しにくくなります。
このような揮発性の高い植物成分を精油と言います。 ベータ・カリオフィレン(β-caryophyllene)は、多くの香辛料や植物性食品の精油に含まれるセスキテルペンです。
炭素数15と水素数24のC15H24で酸素や窒素は含まないセスキテルペン系化合物で、4員環と9員環がトランス縮環したビシクロ[7.2.0]ウンデカン骨格を有する非常に稀な構造を持つ天然物質です。

図:β-カリオフィレンはイソプレン骨格が3個縮合した炭素数15個のセスキテルペンで、香辛料などの精油に多く含まれている。

βカリオフィレンは黒胡椒、オレガノ、バジル、ローズマリー、ライム、シナモン、セロリなどの多くのハーブやスパイスの精油に豊富に含まれています。大麻草にも多く含まれています。アマゾン川流域の民間薬のコパイバ(Copeifera属の樹木から取られる含油樹脂)の主成分もβカリオフィレンです。 日本(厚生労働省)も米国(食品医薬品局)も食品添加物として認可していますので、極めて安全性の高い天然成分です。 βカリオフィレンには抗炎症作用が知られています。その作用機序としてカンナビノイド受容体CB2の選択的アゴニストであることが報告されています。以下のような論文があります。

Beta-caryophyllene is a dietary cannabinoid (ベータ・カリオフィレンは食事由来のカンナビノイドである)Proc Natl Acad Sci U S A. 105(26): 9099–9104. 2008年
【要旨】
大麻草(Cannabis sativa L.)由来の植物性カンナビノイドとアラキドン酸由来の内因性カンナビノイドは、カンナビノイド受容体のタイプ1(CB1)とタイプ2(CB2)の選択性のない天然のリガンド(受容体に結合して活性化する物質)である。
CB1受容体は精神変容作用の発現に関与しているが、CB2受容体の活性化は炎症性疾患や疼痛性疾患、動脈硬化、骨粗しょう症の治療のターゲットとして注目されている。
この論文では、植物由来の精油成分の一つであるベータ・カリオフィレン(β-caryophyllene)がCB2受容体に阻害定数(Ki)が 155 ± 4 nMで選択的に結合し、CB2を活性化する機能的CB2アゴニストになることを報告する。 興味深いことに、ベータ・カリオフィレンは多くのスパイスや植物性食品の精油成分として含まれており、大麻の主要成分でもある。
分子構造の検討からベータ・カオフィリンは、CB2タンパク質の117番目のフェニルアラニン(F117)と258番目のトリプトファン(W258)の芳香環との間でリガンドとパイ・パイ積重ね相互作用(ligand π–π stacking interactions)することが明らかになった。
ヒトの単球を用いた実験で、ベータ・カオフィリンはCB2と結合することによってアデニル酸シクラーゼ(adenylate cyclase)を阻害し、細胞内のカルシウム波伝播(intracellular calcium transients)を引き起こし、マイトジェン活性化キナーゼ(mitogen-activated kinases)のErk1/2とp38を弱く活性化した。
ベータ・カオフィリンは500nMの濃度で、リポ多糖(LPS)で誘導される末梢血単球における炎症性サイトカインの発現亢進を阻害し、LPSによるErk1/2とJNK1/2のリン酸化を抑制した。
さらに、マウスを用いてカラギーナン(carrageenan)で炎症反応を誘導する実験で、体重1kg当たり5mgのベータ・カオフィリンの経口投与は炎症反応を強力に抑制した。しかし、CB2受容体を欠損したマウスではベータ・カオフィリンはカラギーナン誘導性炎症反応を抑制できなかった。
以上の結果は、この天然物質(ベータ・カオフィリン)が、生体内(in vivo)においてCB2受容体に作用してカンナビノイドと類似の作用を示すことを示している。 ベータ・カオフィリンは食品中に含まれるCB2受容体の機能的リガンドであり、大麻草に含まれるカンナビノイドと類似の作用を発揮する。
つまり、この論文は香辛料や大麻草などの精油成分に多く含まれ、食品添加物としても使用されているβ-カリオフィレンはカンナビノイド受容体CB2の選択的なアゴニストであり、精神作用を示すCB1には作用しないので、様々な病気の治療に使用できる可能性を指摘しています。

図:カンナビノイド受容体タイプ2(CB2)はGタンパク質共役型受容体(7回膜貫通型受容体)で、リガンドが結合すると三量体のGタンパク質の活性化を介して、特有のシグナル伝達経路によって抗炎症作用や鎮痛作用や抗がん作用などの作用を示す。黒こしょうなどの香辛料や大麻草の精油に多く含まれるβ-カリオフィレンというセスキテルペンはCB2の選択的アゴニストであることが報告されている。

【β-カリオフィレンは鎮痛作用がある】

βカリオフィレンに抗炎症作用や鎮痛作用があることは以前から報告がありますが、この作用がカンナビノイド受容体タイプ2(CB2)の活性化を介する可能性が報告されています。
以下のような論文があります。

The cannabinoid CB₂ receptor-selective phytocannabinoid beta-caryophyllene exerts analgesic effects in mouse models of inflammatory and neuropathic pain.(カンナビノイド受容体タイプ2に選択的に作用する植物カンナビノイドのβカリオフィレンは炎症性疼痛および神経障害性疼痛のマウスの実験モデルで鎮痛作用を示す) Eur Neuropsychopharmacol. 24(4):608-20. 2014年

【要旨】
多くの植物の精油に含まれるβ-カリオフィレンは、カンナビノイド受容体タイプ2(CB2)の選択的なアゴニストであることが明らかになっている。β-カリオフィレンは香辛料を始めとする多くの食用植物に比較的高濃度で含まれている。
カンナビノイド受容体CB2が炎症性疼痛や神経障害性疼痛の制御に重要な役割を担っていることが多くの研究によって明らかになっている。
本研究では、炎症性疼痛と神経障害性疼痛の動物実験モデルを用いてβ-カリオフィレンの鎮痛作用を検討した。
炎症性疼痛の実験モデルであるホルマリン・テストでは、経口的に投与したβ-カリオフィレンは炎症性疼痛のレベルを軽減した。 神経障害性疼痛の実験モデルでは、β-カリオフィレンを経口投与することによって、熱痛覚過敏(thermal hyperalgesia)と機械的異痛症(mechanical allodynia:通常では痛みを引き起こさない機械的刺激に対して痛みを感じる状態)を緩和し、脊髄組織の炎症を軽減した。
β-カリオフィレンを長期間投与しても、鎮痛効果の耐性は生じなかった。 CB2の合成アゴニスト(JWH-133)の皮下注射よりもβ-カリオフィレンの経口投与の方が鎮痛効果は強かった。
以上の結果から、天然の植物成分であるβ-カリオフィレンが、慢性的な強い疼痛の治療に極めて有効であることが示された。

【CB2受容体のアゴニストは心因性疼痛も軽減する】

疼痛は様々な原因で発生します。  
怪我などで炎症が起こると痛みを起こす物質が発生し、この物質が末梢神経にある「侵害受容器」という部分を刺激することで痛みを感じるます。この炎症性により発生する疼痛は「侵害受容性疼痛」と呼ばれています。  
何らかの原因により神経が障害され、それによって起こる痛みを「神経障害性疼痛」といいます。
帯状疱疹が治った後の痛みや坐骨神経痛や多発性硬化症や脊髄損傷による痛みなどがあります。  
さらに、不安やストレスなど、心理・社会的な要因で起こる痛み(心因性疼痛)もあります。神経障害性疼痛などで慢性的に強い痛みが続くと、不眠や不安や抑うつ状態になり、心因的要因も重なってますます症状が重くなるという悪循環に陥ることもあります。(図)

図:疼痛は様々な原因で生ずる。外傷や火傷や炎症などによって末梢神経の侵害受容体が刺激されて生じる「侵害受容性疼痛」、坐骨神経痛や多発性硬化症や脊髄損傷による痛みや糖尿病神経障害による痛み・しびれなど、神経が圧迫や損傷などによって生じる「神経障害性疼痛」、不安やストレスなど心理・社会的な要因で起こる心因性疼痛に大別される。長引く痛みでは、これら複数の原因が関与していることが多い。

前述のように、動物を使った様々な疼痛モデルで、CB2受容体のアゴニスト(作動薬)は炎症性疼痛や神経障害性疼痛の両方に効果があることが報告されています。
さらに、抗不安作用が抗うつ作用も報告されています。  
不安の程度を評価する動物実験に高架式十字迷路テストやビー玉埋めテストがあります。  
高架式十字迷路テストは、マウスが壁際を好むという性質を利用して、壁の無い道を恐れずに探索するか観察します。不安があると壁のある道ばかり行き来します。壁の無い道に侵入した回数と滞在時間を指標として不安感を評価します。  
ビー玉埋めテストはネズミが飼育ケージに入れた多数のビー玉を床敷きで埋めて隠そうとする行動を観察するテストで、強迫性障害のモデルです。ビー玉に対する不安を反映しています。  
このような複数の実験モデルでCB2の作動薬が抗不安作用を示すことが示されています。  
抑うつに対する評価法として尾懸垂試験は強制水泳テストなどがあります。  
尾懸垂試験は、マウスを逆さ釣りにすると初めは暴れるが、次第にあきらめて無動となりなります。この状態を「絶望状態」と呼び、10分間中の無動であった時間を計測する試験です。
強制水泳テストは、水を張った容器にネズミを入れ呼吸及び浮くために必要な動作以外は動かないでいる無動時間を測定する試験です。  
無動時間を短縮する効果は、絶望状態にさせないことを意味するので、抗うつ作用の指標になります。このような実験モデルでCB2受容体の作動薬(アゴニスト)は抗うつ作用を示すことが報告されています。 つまり、CB2作動薬の鎮痛作用は、神経系への作用や、抗炎症作用や、さらに心理的・精神面での作用などが総合的に合わさっていると言えます。

【βカリオフィレンはシスプラチンの腎障害を軽減する】

CB2アゴニストは抗炎症作用があります。以下のような論文があります。

β-caryophyllene ameliorates cisplatin-induced nephrotoxicity in a cannabinoid 2 receptor-dependent manner(βカリオフィレンはカンナビノイド受容体2に依存する作用機序でシスプラチン誘導性の腎障害を軽減する)Free Radic Biol Med. 52(8): 1325–1333. 2012年

【要旨】
ベータ・カリオフィレン(β-caryophyllene)は、多くの香辛料や植物性食品の精油に含まれる天然のセスキテルペンであり、抗炎症作用が知られている。
最近の研究で、ベータ・カリオフィレンは内因性カンナビノイド・システムのカンナビノイド-2受容体(CB2)の天然のアゴニスト(受容体に結合して作用を示す作動薬)であることが明らかになっている。
CB2は主に免疫細胞に発現し、炎症を抑制する働きを担っている。
本研究においては、マウスに抗がん剤のシスプラチンを投与して発症させた腎臓障害のモデルを用いてベータ・カリオフィレンの効果を検討する目的で行った。
シスプラチンによる腎障害は活性酸素や一酸化窒素ラジカルによる酸化傷害と炎症によって尿細管がダメージを受けて発症する。 形態学的なダメージの程度や、炎症応答(炎症性サイトカインの産生、好中球やマクロファージの浸潤など)の程度の検討から、ベータ・カリオフィレンが用量依存的にシスプラチンによる腎臓障害を軽減することが示された。
活性酸素に一酸化窒素ラジカルによる酸化ストレスの程度や酸化傷害による細胞死のレベルを顕著に軽減した。 このようなシスプラチンによる腎臓障害に対するベータ・カリオフィレンの保護作用はCB2ノックアウト・マウス(CB2遺伝子を欠損させたマウス)では認められなかった。
以上のことから、ベータ・カリオフィレンはカンナビノイド受容体のCB2を介するメカニズムでシスプラチンによる腎臓障害を抑制する効果ががあることが示された。
ベータ・カリオフィレンの人間に対する安全性は極めて高いので、炎症や酸化ストレスによって引き起こされる様々な疾患や病体の治療薬として非常に有望な治療薬となる可能性がある。

培養がん細胞を使った実験でパクリタキセルの抗がん作用を増強する作用、抗がん剤耐性を阻害する作用が報告されています。(J Pharm Pharmacol. 2007 Dec;59(12):1643-7.)

【アマゾンの民間薬コパイバにはβカリオフィレンが多く含まれる】

樹木から得られる樹脂や精油は古くから病気の治療に用いられています。
コパイバ(Copaiba)はアマゾン川流域に広く分布するマメ科の樹木のCopaifera属の木から採取される天然樹液です。コパイバはCopaifera officinalis (コパイババルサムノキ)などのCopeifera属の木に傷をつけて流れ出る樹液を集めます。この樹液はOleoresin(含油樹脂)と呼ばれ、樹木の樹脂(松やにのように、樹木が分泌する不揮発性の固体または半固形体の物質)と精油(揮発性の油)が混じった液体です。
アマゾン川流域ではいまだ伝統的な治療師による薬草を使った民間療法が用いられています。このコパイバはアマゾンの原住民たちが古来より万能薬として外用や内服で利用してきました。現在でも民間薬として利用されています。
コパイバは外傷や火傷、皮膚疾患、様々な炎症性疾患、感染症(気管支炎、梅毒、淋病、リーシュマニア)、消化性潰瘍、がんなど多くの疾患の治療に利用されています。
コパイバは米国食品医薬品局(FDA)が食品添加物としても認可しており、経口摂取して毒性が低い精油です。動物実験での致死量として体重1kg当たり数グラム程度のデータがあるので、成人が1日に体重1kg当たり数10mg程度はほとんど毒性がないと考えられます。
このコパイバ・オイルの主成分はセスキテルペンのβカリオフィレンです。βカリオフィレンが40〜60%程度含まれているようです。
前述のように、β-カリオフィレンにはカンナビノイド受容体CB2を活性化する作用によって抗炎症作用を示すことが明らかになっています。そして、CB2受容体の活性化は多くの病気を治療する効果があります。 コパイバが万能薬として民間療法に使われているのはβ-カリオフィレンを多く含むからだと言えます。

図:アマゾン川流域ではコパイバと呼ばれるCopeifera属の木に傷をつけて流れ出る樹液が、古くから病気の治療に利用されている。この天然の樹液には精油と樹脂が含まれ、精油の主成分はセスキテルペンのβ-カリオフィレンである。β-カリオフィレンはカンナビノイド受容体タイプ2(CB2)の選択的アゴニストであり、抗炎症作用や鎮痛作用や抗がん作用が知られている。安全性の高い天然成分によるCB2受容体を介した抗炎症や鎮痛の治療に利用できる。

【新薬を使わなくても食品成分でも治療は可能】

多くの製薬会社がCB2の選択的アゴニストを医薬品として開発していますが、β-カリオフィレンは天然成分で食品に多く含まれ、特許がとれないので、あまり積極的な研究は行われていないようです。
しかし極めて安価で安全性も高いので、がんやその他の難病の代替医療で試してみる価値はあります。 高価な新薬を使わなくても、食品や薬草などの成分だけでも有効な治療は可能です。ただ、その工夫を誰もしないだけです。βカリオフィレンによるカンナビノイド受容体タイプ2(CB2)活性化作用をもっと利用すべきだと思います。

食品添加物としてのβ-カリオフィレンを30g/6000円で処方しています
疼痛性疾患や炎症性疾患やがん治療では、目的に応じて1日に体重1kg当たり2mg〜20mgを目安にします。進行がんの場合は増量する場合もあります。
ご希望の方はメール(info@f-gtc.or.jp)でお知らせ下さい。